養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
文字の大きさ
大中小
177 / 192
第67話 工房長一家との再会④
しおりを挟む
夕食の席では、私の料理の感想を口々に言ってくれたり、みんなの最近の暮らしぶりを聞いたりして楽しい時間を過ごした。
食事を済ませて食後のお茶を飲んでいる時に、ふと思い出したことを質問してみた。
「そういえば、ここの村の方々は、1度に集まる機会などはないのでしょうか?」
「祭りの時くらいだな……。それがどうかしたかね?」
工房長がフォークとナイフを手にしたまま、きょとんと首をかしげる。
「私、まだこの村にいらっしゃる全員にご挨拶が出来ていないので……。どこかでお目にかかれる機会があればなと思いまして。」
「ああ、そういえばそうだったね。確かレオンハルトさんに村を案内してもらっただけだったか。ふむ……。」
工房長が顎をさすりながら思案する。
「はい、そうですね。皆さん農作業に忙しそうで、お声がけするのも憚られて……。ですが新しくこの村に住むことになったのに、いつまでもご挨拶しないのもおかしいですし。」
「……まあ、小さな村だからね、全員が顔見知りではある。少しでも早く挨拶したほうがいいだろうな。あなたの存在は気になっているだろうが、皆自分から声をかけてこないだろう?あれは紹介されるのを待ってるんだ。」
工房長が人差し指を立てながら説明する。
「そうなのですか?」
「滅多にあることじゃないが、この村に移り住んでくる人間がいることもある。そんな時は村長から紹介されることになっている。」
アルベルトのお父さまがそう言った。
「では、まずはその村長さんにご挨拶をしたほうがよろしいですね。村長さんは、どちらにお住まいでしょうか?」
「それが最近屋根から落ちて大怪我をして以来、体調を崩していてね……。滅多に村に顔を出さない。だからあなたのことは報告していたが、あなたを紹介する役目を果たすことが出来ないでいたんだよ。」
眉を下げながら工房長がため息をついた。
「屋根から……!?それは大変でしたね。治りが悪いということでしょうか?」
「医者の見立てじゃ、内臓を損傷した可能性があるらしい。それは薬では治らないと。」
アルベルトのお父さまが目線を落とした。
「そんな……。」
「回復魔法使いか、聖魔法使いに頼むことが出来れば治るそうなんだが、それにはとてもお金がかかるんだ。ヨハンのおかげでだいぶ楽になってきてはいるが、それでもこんな小さな村だ。そこまでのお金は誰にもない。」
工房長はそう言って頭を振った。
「──魔法で治るんですか?」
「ああ。それか、おそらくエクストラポーションがあれば治るそうだよ。だがどちらにしてもかなりのお金がかかる。村長を治すのは難しいだろう……。」
そう言って工房長も目線を落とす。
「……それ、私にどうにか出来るかも知れません。どうか1度私に任せていただけませんか?村長のお体が治れば、村の方たちに私を紹介してくださるでしょうし。」
「紹介するというだけであれば、村長の代理をたててもらって、頼むことも出来るが?」
アルベルトのお父さまがそう提案する。
「いえ、私でお役に立てそうなことなんですもの。せっかくなら、村長の怪我を直して、その上で村長から紹介いただきたいです。」
「ふむ……。」
「明日、図書館に行ってまいります。大変申し訳ないのですが、明日のお約束はなかったことにさせていただけませんでしょうか?」
「──図書館?なぜ、図書館に?」
工房長が首をかしげる。
「図書館には、数多くの魔法を集めた書籍があります。そこで回復魔法か、聖魔法の魔法陣を調べて来ようと思います。」
「……だが、調べただけでは、どうにもならないんじゃないのかね?魔法は素養がなければ使えないと聞く。それともあなたは、回復魔法か聖魔法の使い手なのかね?」
少し詰問するように、アルベルトのお父さまが私に質問をしてくる。
────────────────────
X(旧Twitter)始めてみました。
よろしければアカウントフォローお願いします。
@YinYang2145675
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。
食事を済ませて食後のお茶を飲んでいる時に、ふと思い出したことを質問してみた。
「そういえば、ここの村の方々は、1度に集まる機会などはないのでしょうか?」
「祭りの時くらいだな……。それがどうかしたかね?」
工房長がフォークとナイフを手にしたまま、きょとんと首をかしげる。
「私、まだこの村にいらっしゃる全員にご挨拶が出来ていないので……。どこかでお目にかかれる機会があればなと思いまして。」
「ああ、そういえばそうだったね。確かレオンハルトさんに村を案内してもらっただけだったか。ふむ……。」
工房長が顎をさすりながら思案する。
「はい、そうですね。皆さん農作業に忙しそうで、お声がけするのも憚られて……。ですが新しくこの村に住むことになったのに、いつまでもご挨拶しないのもおかしいですし。」
「……まあ、小さな村だからね、全員が顔見知りではある。少しでも早く挨拶したほうがいいだろうな。あなたの存在は気になっているだろうが、皆自分から声をかけてこないだろう?あれは紹介されるのを待ってるんだ。」
工房長が人差し指を立てながら説明する。
「そうなのですか?」
「滅多にあることじゃないが、この村に移り住んでくる人間がいることもある。そんな時は村長から紹介されることになっている。」
アルベルトのお父さまがそう言った。
「では、まずはその村長さんにご挨拶をしたほうがよろしいですね。村長さんは、どちらにお住まいでしょうか?」
「それが最近屋根から落ちて大怪我をして以来、体調を崩していてね……。滅多に村に顔を出さない。だからあなたのことは報告していたが、あなたを紹介する役目を果たすことが出来ないでいたんだよ。」
眉を下げながら工房長がため息をついた。
「屋根から……!?それは大変でしたね。治りが悪いということでしょうか?」
「医者の見立てじゃ、内臓を損傷した可能性があるらしい。それは薬では治らないと。」
アルベルトのお父さまが目線を落とした。
「そんな……。」
「回復魔法使いか、聖魔法使いに頼むことが出来れば治るそうなんだが、それにはとてもお金がかかるんだ。ヨハンのおかげでだいぶ楽になってきてはいるが、それでもこんな小さな村だ。そこまでのお金は誰にもない。」
工房長はそう言って頭を振った。
「──魔法で治るんですか?」
「ああ。それか、おそらくエクストラポーションがあれば治るそうだよ。だがどちらにしてもかなりのお金がかかる。村長を治すのは難しいだろう……。」
そう言って工房長も目線を落とす。
「……それ、私にどうにか出来るかも知れません。どうか1度私に任せていただけませんか?村長のお体が治れば、村の方たちに私を紹介してくださるでしょうし。」
「紹介するというだけであれば、村長の代理をたててもらって、頼むことも出来るが?」
アルベルトのお父さまがそう提案する。
「いえ、私でお役に立てそうなことなんですもの。せっかくなら、村長の怪我を直して、その上で村長から紹介いただきたいです。」
「ふむ……。」
「明日、図書館に行ってまいります。大変申し訳ないのですが、明日のお約束はなかったことにさせていただけませんでしょうか?」
「──図書館?なぜ、図書館に?」
工房長が首をかしげる。
「図書館には、数多くの魔法を集めた書籍があります。そこで回復魔法か、聖魔法の魔法陣を調べて来ようと思います。」
「……だが、調べただけでは、どうにもならないんじゃないのかね?魔法は素養がなければ使えないと聞く。それともあなたは、回復魔法か聖魔法の使い手なのかね?」
少し詰問するように、アルベルトのお父さまが私に質問をしてくる。
────────────────────
X(旧Twitter)始めてみました。
よろしければアカウントフォローお願いします。
@YinYang2145675
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。
74
あなたにおすすめの小説
【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
「婚約破棄された聖女ですが、実は最強の『呪い解き』能力者でした〜追放された先で王太子が土下座してきました〜
鷹 綾
恋愛
公爵令嬢アリシア・ルナミアは、幼い頃から「癒しの聖女」として育てられ、オルティア王国の王太子ヴァレンティンの婚約者でした。
しかし、王太子は平民出身の才女フィオナを「真の聖女」と勘違いし、アリシアを「偽りの聖女」「無能」と罵倒して公衆の面前で婚約破棄。
王命により、彼女は辺境の荒廃したルミナス領へ追放されてしまいます。
絶望の淵で、アリシアは静かに真実を思い出す。
彼女の本当の能力は「呪い解き」——呪いを吸い取り、無効化する最強の力だったのです。
誰も信じてくれなかったその力を、追放された土地で発揮し始めます。
荒廃した領地を次々と浄化し、領民から「本物の聖女」として慕われるようになるアリシア。
一方、王都ではフィオナの「癒し」が効かず、魔物被害が急増。
王太子ヴァレンティンは、ついに自分の誤りを悟り、土下座して助けを求めにやってきます。
しかし、アリシアは冷たく拒否。
「私はもう、あなたの聖女ではありません」
そんな中、隣国レイヴン帝国の冷徹皇太子シルヴァン・レイヴンが現れ、幼馴染としてアリシアを激しく溺愛。
「俺がお前を守る。永遠に離さない」
勘違い王子の土下座、偽聖女の末路、国民の暴動……
追放された聖女が逆転し、究極の溺愛を得る、痛快スカッと恋愛ファンタジー!
年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアーティアは、継母に冷酷無慈悲と噂されるフレイグ・メーカム辺境伯の元に嫁ぐように言い渡された。
継母は、アーティアが苦しい生活を送ると思い、そんな辺境伯の元に嫁がせることに決めたようだ。
しかし、そんな彼女の意図とは裏腹にアーティアは楽しい毎日を送っていた。辺境伯のフレイグは、噂のような人物ではなかったのである。
彼は、多少無口で不愛想な所はあるが優しい人物だった。そんな彼とアーティアは不思議と気が合い、やがてお互いに惹かれるようになっていく。
2022/03/04 改題しました。(旧題:不器用な辺境伯の不器用な愛し方 ~継母の嫌がらせで冷酷無慈悲な辺境伯の元に嫁がされましたが、溺愛されています~)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる