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第66話 護衛代金の精算と、再度の依頼②

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「私が……レオンハルトさまの家に?」
「そうすれば、お嬢ちゃんは帰りたくもないロイエンタール伯爵家にいなくても済む。四六時中護衛も出来る。一石二鳥だろ?」

「さすがにそれは……。昼間も守っていただいて、寝ている時まで、レオンハルトさまお1人に護衛させるわけには参りませんわ。休む暇がないじゃないですか。」
「まあ、それは確かにな。」

 だから2択しかなかったのだ。魔塔は許可証のない人間は誰も入ってこられない。ロイエンタール伯爵家には私設騎士団があって、夜間も警備の人間がいる。

 それを誰か1人で済ませられるのなら、私だってお金を払って人を雇って済ませるだろう。それがレオンハルトさまである必要がないもの。でも人間は眠るものだ。

 例え仮眠をとるにしたって、四六時中緊張した状態でいなくちゃならないんじゃ、少しも休まらない。一晩とかならそれでもいいかも知れないけれど、ひと月は現実的じゃないわ。そんなお願いは誰にも出来ない。

 それに魔法の使用権利料で、ある程度まとまったお金は入ったけれど、見知らぬ相手がどこまで忠誠を誓ってくれるかがわからないから。結局は魔塔か、ロイエンタール伯爵家が1番安全なのだ。

 レオンハルトさまにお願いするのは、あくまでも村の中に住んでいる人だから、一緒にいるところを少しくらい見られても、護衛しているとは思われないで済むからだもの。

「わかった。この村に来るまでは、ロイエンタール伯爵家で護衛してもらえる、だからこの村の中だけの守りを、俺に頼みたいということだな。いいだろう。引き受けよう。」
「本当ですか!?ありがとうございます。」

 レオンハルトさまに引き受けていただけなかったら、最悪ロイエンタール伯爵家の従者を偽装させて、この村に仮住まいさせるとかしなくちゃいけないかと思っていたから、本当にありがたいわ。

「襲われるとして、敵が何人くるかわからんが、魔物相手よりは知れている。護衛の代金は以前のものから危険手当を抜いた金額で構わんよ。」

「……それでよろしいのですか?それだとあまりお金が発生しませんが……。」
「仕事にかこつけて、お嬢ちゃんと毎日一緒にいられるってこったろう?俺としちゃ金を払いたいくらいの気持ちなんだがね。」

「ご、御冗談を……。」
「おや、そう思うかい?俺はわりかし本気なんだがな。本気になってもいいかって聞いたのに、本気にしてなかったってことかな?」

「そ、それは……。」
 正直、フェルディナンドさまとのことがあったから、妙に気まずい気持ちになるわ。別に忘れていたわけではないけれど……。

 私とレオンハルトさまとでは、本気の種類が違うと言われたことを思い出す。レオンハルトさまの本気を本気で受け止めていなかったと言われれば、恐らくそうだと今は思う。

「……そんなに困った顔をするなよ。いじめたくなってくるだろ。」
 とレオンハルトさまがニヤリとする。

 これも本気なのか。それともレオンハルトさまの本気をまともに受け止められていなかった子どもな私をからかっているのか。……それとも本当にそういう性癖の方なのか。それがよくわからないのがレオンハルトさまという方よね、と私は思う。

 困って何も言えなくなっている私に、
「とりあえず、護衛の件は了承した。お嬢ちゃんがこの村にいる間、安全に過ごせるように、俺がしっかりと守ってやるよ。」

 と言って下さったので安心した。
「だが誰もいない時ならいざ知らず、絵を描く為に工房長一家が来る際に、俺はどこで過ごしていたらいいんだ?家の中で隠れてじっと待ってるってのも、おかしな話だろう?」

「そうですね……。目の前で護衛をしていただくとなると、工房長ご一家にも、事情を話さなくてはならなくなりますし、そうすると絵を描く仕事自体、遠慮されてしまうんじゃないかと思うんですよね……。」

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