養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中
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第58話 離婚専門弁護士の心当たり③
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あら、でもそうね。レオンハルトさまは平民でいらっしゃるけど、なんとなくレオンハルトさまと呼んでしまっているわ。そう呼ばせる雰囲気があるからだけど⋯⋯。
フェルディナンドさまのことは、王弟の令息だけれど、魔塔の賢者というお立場が、学生時代貴族令嬢の間で憧れの存在だったことから、お名前呼びをその時からしていたわ。
だから⋯⋯特に関わりが深いわけじゃないフィッツェンハーゲン侯爵令息のことは、そういう風に呼んでしまっているのよね。
「私のことも、これからはステフとお呼びいただけませんか?」
「あ、愛称呼びはちょっと⋯⋯。」
先日のお茶会でだって、どなたもフィッツェンハーゲン侯爵令息のことを愛称で呼んでいらっしゃる方なんていなかったもの。
恋人でもないし、友人としてもそこまで親しい間柄でもないのに、愛称で呼ぶなんて不自然だわ。周りの注目も集めてしまうし。
「駄目⋯⋯ですか?」
念を押すように、フィッツェンハーゲン侯爵令息が私の目の奥を覗き込んでくる。
「はい、さすがに⋯⋯。それでしたら、シュテファンさまとお呼びしても?」
そのくらいなら、呼んでいる方がいなくもなかったような気もするわ⋯⋯。多分。
貴族女性に人気の高い、フィッツェンハーゲン侯爵令息を、お名前でお呼びするというだけでも、かなり大胆なことをしているような気持ちになるけれど⋯⋯。
それを聞いたフィッツェンハーゲン侯爵令息が、とても嬉しそうに破顔した。
⋯⋯そんなことの、何がそんなに嬉しいのかしら。ただお名前で呼んだだけだわ。
こんな風に、自然と女性を喜ばせるから、この方は女性に人気があるのね。⋯⋯そして勘違いする女性も多数生まれそうだわ。
私だって、自分の既婚者という立場がなければ、名前を呼ぶことを了承しただけで、あんなに嬉しそうな笑顔を見せられたら、勘違いしそうになってくるもの。
⋯⋯もっと若い時だったら、正直あぶなかったわね。本当に罪作りな方だわ、フィッツェンハーゲン侯爵令息という方は。
「ええ、もちろんです。あなたのお名前をお呼びしたいところですが、それはあなたが離婚した後の楽しみにとっておきましょう。」
既婚者の女性の名前を、他の男性が呼んではいけない決まりがあるものね。もちろん離婚してからなら、やぶさかではないけれど。
「わかりました。シュテファンさまから私のことを、名前で呼んでいただけるその日を、楽しみにしておりますわ。」
私はそう言って微笑んだ。
離婚をしたら、私はメッゲンドルファー子爵令嬢に戻るから、男性から名前で呼ばれることにも、なんら問題はないものね。
久しく呼ばれなかった名前を、アデリナ嬢に呼んでいただけた時は、自分自身を取り戻したような気持ちになって嬉しかったもの。
早く私は私を取り戻したい。フィリーネ・メッゲンドルファー子爵令嬢に戻って、堂々と魔法絵師として、そして魔塔の賢者の1人として、生きていきたいわ。
「よろしければこれから、彼女の事務所に一緒に行きましょうか?裁判が入っていなければ、事務所にいる筈ですので。」
「彼女⋯⋯。女性なんですか?」
「ええ、まだまだ女性弁護士は珍しい存在ですが、その中でもかなり優秀なほうの方ですよ。離婚弁護士を主にやられています。それも貴族の離婚弁護を中心にね。」
「そうなんですね、それはとても心強いですわ。ぜひ連れて行っていただけますか?」
「わかりました。ではそろそろここを出ましょうか。彼女のところに案内いたします。」
お会計はフィッツェンハーゲン侯爵令息がもってくださった。私はまだ既婚者の身だ。夫以外の男性から単独で食事などをごちそうになるのは、正直はばかられる身分だ。
だから自分の分は支払うとお伝えしたのだけれど、もうすぐお1人になるのですし、ディナーをご馳走したというわけでもないのですから、と、優雅に微笑まれてしまった。
馬蹄のマークの下げられた辻馬車を捕まえて、フィッツェンハーゲン侯爵令息が心当たりがあるという、貴族を中心とした離婚専門弁護士の事務所へと向かうことになった。
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フェルディナンドさまのことは、王弟の令息だけれど、魔塔の賢者というお立場が、学生時代貴族令嬢の間で憧れの存在だったことから、お名前呼びをその時からしていたわ。
だから⋯⋯特に関わりが深いわけじゃないフィッツェンハーゲン侯爵令息のことは、そういう風に呼んでしまっているのよね。
「私のことも、これからはステフとお呼びいただけませんか?」
「あ、愛称呼びはちょっと⋯⋯。」
先日のお茶会でだって、どなたもフィッツェンハーゲン侯爵令息のことを愛称で呼んでいらっしゃる方なんていなかったもの。
恋人でもないし、友人としてもそこまで親しい間柄でもないのに、愛称で呼ぶなんて不自然だわ。周りの注目も集めてしまうし。
「駄目⋯⋯ですか?」
念を押すように、フィッツェンハーゲン侯爵令息が私の目の奥を覗き込んでくる。
「はい、さすがに⋯⋯。それでしたら、シュテファンさまとお呼びしても?」
そのくらいなら、呼んでいる方がいなくもなかったような気もするわ⋯⋯。多分。
貴族女性に人気の高い、フィッツェンハーゲン侯爵令息を、お名前でお呼びするというだけでも、かなり大胆なことをしているような気持ちになるけれど⋯⋯。
それを聞いたフィッツェンハーゲン侯爵令息が、とても嬉しそうに破顔した。
⋯⋯そんなことの、何がそんなに嬉しいのかしら。ただお名前で呼んだだけだわ。
こんな風に、自然と女性を喜ばせるから、この方は女性に人気があるのね。⋯⋯そして勘違いする女性も多数生まれそうだわ。
私だって、自分の既婚者という立場がなければ、名前を呼ぶことを了承しただけで、あんなに嬉しそうな笑顔を見せられたら、勘違いしそうになってくるもの。
⋯⋯もっと若い時だったら、正直あぶなかったわね。本当に罪作りな方だわ、フィッツェンハーゲン侯爵令息という方は。
「ええ、もちろんです。あなたのお名前をお呼びしたいところですが、それはあなたが離婚した後の楽しみにとっておきましょう。」
既婚者の女性の名前を、他の男性が呼んではいけない決まりがあるものね。もちろん離婚してからなら、やぶさかではないけれど。
「わかりました。シュテファンさまから私のことを、名前で呼んでいただけるその日を、楽しみにしておりますわ。」
私はそう言って微笑んだ。
離婚をしたら、私はメッゲンドルファー子爵令嬢に戻るから、男性から名前で呼ばれることにも、なんら問題はないものね。
久しく呼ばれなかった名前を、アデリナ嬢に呼んでいただけた時は、自分自身を取り戻したような気持ちになって嬉しかったもの。
早く私は私を取り戻したい。フィリーネ・メッゲンドルファー子爵令嬢に戻って、堂々と魔法絵師として、そして魔塔の賢者の1人として、生きていきたいわ。
「よろしければこれから、彼女の事務所に一緒に行きましょうか?裁判が入っていなければ、事務所にいる筈ですので。」
「彼女⋯⋯。女性なんですか?」
「ええ、まだまだ女性弁護士は珍しい存在ですが、その中でもかなり優秀なほうの方ですよ。離婚弁護士を主にやられています。それも貴族の離婚弁護を中心にね。」
「そうなんですね、それはとても心強いですわ。ぜひ連れて行っていただけますか?」
「わかりました。ではそろそろここを出ましょうか。彼女のところに案内いたします。」
お会計はフィッツェンハーゲン侯爵令息がもってくださった。私はまだ既婚者の身だ。夫以外の男性から単独で食事などをごちそうになるのは、正直はばかられる身分だ。
だから自分の分は支払うとお伝えしたのだけれど、もうすぐお1人になるのですし、ディナーをご馳走したというわけでもないのですから、と、優雅に微笑まれてしまった。
馬蹄のマークの下げられた辻馬車を捕まえて、フィッツェンハーゲン侯爵令息が心当たりがあるという、貴族を中心とした離婚専門弁護士の事務所へと向かうことになった。
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