養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中
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第56話 商会作成と離婚の準備③
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「私、そんな軽い女じゃありません。離婚するからって、すぐに他の男性に靡くような、そんな女だと思わないで欲しいわ。」
私ばっかりがドキドキするなんて悔しい!そんな気持ちで言った言葉は、きっと可愛げのないものだったろうと思う。けれどアルベルトは、なぜか嬉しそうに微笑んだのだ。
その笑顔を見てしまうともうダメだった。私はまた悔しく思いつつも、アルベルトにも急速に惹かれつつある自分を自覚したのだった。レオンハルトさまといい、アルベルトといい、私、一体どうしちゃったんだろうか。
私は椅子に座らされたまま、洗い物は結局アルベルトがすべてやってくれた。ヴィリと約束していたから、アルベルトとはそこで別れて私は町へ向かう馬車に乗った。
お昼前の時間になり、私はヴィリのところへ商会を作る為にやって来た。ヴィリは笑顔で手を振りながら出迎えてくれた。
ヴィリの用意してくれた馬車で、まずは銀行用の印章と、商会用の印章を掘ってくれるという工房に向かうこととなった。
「商会を作るには、まずは2つの印章と、なんの仕事をする商会か、代表者は誰か、なんかを書いた書面が必要になるんだ。書き方は僕が教えるから、安心してね。」
「なにから何までごめんなさい。でも、とても助かるわ。ヴィリだって絵の仕事があるでしょう?こんなにたくさん私の為に時間を作ってもらって、申し訳ないわ。」
「気にしないでよ。僕はね、君に頼りになる男性だと思われたいんだから。僕が君にとって役に立つ人間だと、頼りになる人間だと思わせられるのは、絵と商会のことだけだからね。僕はむしろ張り切っているんだ。」
そんな風に言ってくれた。
「じゅうぶん頼りにしているし、頼りになる男性だと思っているわよ?」
「もしそうなら嬉しいな。」
ヴィリは本当に嬉しそうに微笑んだ。
「印章が出来るには時間がかかるから、出来るまでの間にどこかで食事にしようか。」
「ええ、いいわよ。ちょうどお昼にいい時間だしね。そろそろお腹がすいてきたわ。」
時間を潰すのにももってこいね。
「印章を作る作業というのは、本当はもっと時間のかかるものなんだけどね。君が急いでいると言うし、付き合いの長い工房だったから、お願いして当日仕上げにしてもらったんだ。午後には受け取れると思うよ。」
「本当!?そんなことを頼んでくれたの?ええ、私とっても急いでいたの。ヴィリ、あなたったら本当に頼りになる男性だわ!」
私は驚いてそう声を上げた。
ヴィリは照れたように頭を搔いて微笑んでいた。工房に到着すると、印章のデザインを相談された。私は持参したデザインを工房の人に手渡した。
剣の周囲を百合の花が囲んでいるデザインだ。これが今の私の気持ち。私の中には一本の折れない剣があって、だけど殺伐とした気持ちじゃなく、明るい未来も描いている。
それを百合の花で現したのだ。いいデザインだね、とヴィリも言ってくれた。印章の作成を任せて、私たちはヴィリのおすすめだというお店でランチをすることにした。
異国の料理を出すというそのお店は、とても美味しくて大満足だった。
「素敵なお店をご存知なんですね。とても美味しかったですわ。また来てみたいです。」
「あなたを連れてくるならここだと思いました。気に入っていただけて良かったです。」
食後の紅茶を飲みながらそう告げる私に、ヴィリは嬉しそうに微笑む。
お茶を飲みながらしばらく話をして、工房に印章を取りに向かった。印章はイメージ通りの仕上がりだった。デザインが同じで、四角い印章と、丸い印章が2つ出来ていた。
どちらを銀行用にしても構わないとのことだったけれど、通常は丸いほうを銀行用にすることが多いと言われた。丸い印章は大小2つあって、小さい方は小切手用らしい。
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私ばっかりがドキドキするなんて悔しい!そんな気持ちで言った言葉は、きっと可愛げのないものだったろうと思う。けれどアルベルトは、なぜか嬉しそうに微笑んだのだ。
その笑顔を見てしまうともうダメだった。私はまた悔しく思いつつも、アルベルトにも急速に惹かれつつある自分を自覚したのだった。レオンハルトさまといい、アルベルトといい、私、一体どうしちゃったんだろうか。
私は椅子に座らされたまま、洗い物は結局アルベルトがすべてやってくれた。ヴィリと約束していたから、アルベルトとはそこで別れて私は町へ向かう馬車に乗った。
お昼前の時間になり、私はヴィリのところへ商会を作る為にやって来た。ヴィリは笑顔で手を振りながら出迎えてくれた。
ヴィリの用意してくれた馬車で、まずは銀行用の印章と、商会用の印章を掘ってくれるという工房に向かうこととなった。
「商会を作るには、まずは2つの印章と、なんの仕事をする商会か、代表者は誰か、なんかを書いた書面が必要になるんだ。書き方は僕が教えるから、安心してね。」
「なにから何までごめんなさい。でも、とても助かるわ。ヴィリだって絵の仕事があるでしょう?こんなにたくさん私の為に時間を作ってもらって、申し訳ないわ。」
「気にしないでよ。僕はね、君に頼りになる男性だと思われたいんだから。僕が君にとって役に立つ人間だと、頼りになる人間だと思わせられるのは、絵と商会のことだけだからね。僕はむしろ張り切っているんだ。」
そんな風に言ってくれた。
「じゅうぶん頼りにしているし、頼りになる男性だと思っているわよ?」
「もしそうなら嬉しいな。」
ヴィリは本当に嬉しそうに微笑んだ。
「印章が出来るには時間がかかるから、出来るまでの間にどこかで食事にしようか。」
「ええ、いいわよ。ちょうどお昼にいい時間だしね。そろそろお腹がすいてきたわ。」
時間を潰すのにももってこいね。
「印章を作る作業というのは、本当はもっと時間のかかるものなんだけどね。君が急いでいると言うし、付き合いの長い工房だったから、お願いして当日仕上げにしてもらったんだ。午後には受け取れると思うよ。」
「本当!?そんなことを頼んでくれたの?ええ、私とっても急いでいたの。ヴィリ、あなたったら本当に頼りになる男性だわ!」
私は驚いてそう声を上げた。
ヴィリは照れたように頭を搔いて微笑んでいた。工房に到着すると、印章のデザインを相談された。私は持参したデザインを工房の人に手渡した。
剣の周囲を百合の花が囲んでいるデザインだ。これが今の私の気持ち。私の中には一本の折れない剣があって、だけど殺伐とした気持ちじゃなく、明るい未来も描いている。
それを百合の花で現したのだ。いいデザインだね、とヴィリも言ってくれた。印章の作成を任せて、私たちはヴィリのおすすめだというお店でランチをすることにした。
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「素敵なお店をご存知なんですね。とても美味しかったですわ。また来てみたいです。」
「あなたを連れてくるならここだと思いました。気に入っていただけて良かったです。」
食後の紅茶を飲みながらそう告げる私に、ヴィリは嬉しそうに微笑む。
お茶を飲みながらしばらく話をして、工房に印章を取りに向かった。印章はイメージ通りの仕上がりだった。デザインが同じで、四角い印章と、丸い印章が2つ出来ていた。
どちらを銀行用にしても構わないとのことだったけれど、通常は丸いほうを銀行用にすることが多いと言われた。丸い印章は大小2つあって、小さい方は小切手用らしい。
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