養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中
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第56話 商会作成と離婚の準備①
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「──アルベルト、だいじょうぶ?気を付けてね、怪我しないでね?」
「慣れてる。だいじょうぶ。」
強盗に風穴を開けあられてしまった屋根を修理する為、大工さんを紹介して欲しいと工房長にお願いしたところ、慣れているから自分がやるとアルベルトが名乗り出てくれた。
今アルベルトは、屋根の上に登って、強盗に開けられた巨大な穴を修理してくれているところだ。けれどいくら慣れているとは言っても、本職は絵の具職人なのだ。
そもそも危険な仕事に代わりはないし、ましてや本職でもないのにそんな仕事をして本当にだいじょうぶなのかしらと心配になる。
以前も屋根の上に乗って降りられなくなった子猫のザジーを、屋根の上に登って助けたと言っていたし、高いところが得意なのかしら?普段から屋根に登るとも言っていたわ。
けれどアルベルトは私の心配をよそに、手際よく屋根の穴を塞いで、なおかつ屋根を頑丈に補強してくれたのだった。
「終わった。もうだいじょうぶ。前より頑丈になった筈。心配ない。安心して。」
そう言って穏やかに微笑んだ。
「危険な仕事だったのにありがとう。お茶を入れるから飲んでいってちょうだい。」
私は代金はいらないというアルベルトに、少しでもお礼がしたくてそう提案した。
「俺の専用のティーカップで?」
「そうね、この間購入したティーカップを使いましょう。」
アルベルトと日用品の買い出しに行った時に、私はアルベルト専用のティーカップを購入していた。絵のモデルのこともあるし、頻繁に家に来るだろうと思ったのだ。
もちろん工房長とお父さまの分も購入してあるんだけれど、アルベルトは自分専用のティーカップがあることをいたく喜んでいた。
「騎士さまも、あなたの旦那さんも持ってない。俺だけの専用ティーカップ。だよね?」
「……?そうね?」
いったいぜんたい、そんなことの何がそんなに嬉しいのかしら?アルベルトはニコニコしながら、私の淹れたお茶を飲んでいた。
「おいしい。」
「そう、それは良かったわ。久しぶりに淹れたから、ちょっと自信がなかったの。」
「家じゃやらなかったの?」
「実家じゃしていたんだけれど、婚家では一応メイドってものがいたから。うちの実家は貧乏で、なんでも自分でやっていたのよ。」
「これからは、なんでも出来るようになる。ここはあなたの城だから。」
「そうね。これからは誰にも邪魔されずに生活が出来るのよね。料理も久しぶりよ。」
「早く食べてみたいな。」
「絵のモデルをしてくれる時に、休憩時間に振る舞う予定だから、楽しみにしていて。」
「……あの人は、もう食べたから。」
「あの人?」
「あなたの旦那さん。」
「ああ。でもあれは病人食というか、仕方がないじゃない?具合が悪い人を、いくら離婚しようとしているからって、放ってはおけないもの。振る舞ったつもりはないわよ?」
「でも、夜も食べた。」
「ああ……。なんか有耶無耶のうちに、料理させられたわね……。なんで私の手料理なんか、今更食べたがったのかわからないけど。」
「だから、早く食べたい。」
「うん?そうね?」
イザークが私の手料理を食べたことと、早く料理が食べたいことは何が関係するの?
「おかわりはどう?俺も、あなたにお茶を注いでいいかな?」
アルベルトは、相変わらずニコニコしている。やってみたかったのかしら?
「ええ、もちろん構わないけど。」
アルベルトがそう言ってくれたので、私はお茶のお代わりをカップに注いでもらった。
────────────────────
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「慣れてる。だいじょうぶ。」
強盗に風穴を開けあられてしまった屋根を修理する為、大工さんを紹介して欲しいと工房長にお願いしたところ、慣れているから自分がやるとアルベルトが名乗り出てくれた。
今アルベルトは、屋根の上に登って、強盗に開けられた巨大な穴を修理してくれているところだ。けれどいくら慣れているとは言っても、本職は絵の具職人なのだ。
そもそも危険な仕事に代わりはないし、ましてや本職でもないのにそんな仕事をして本当にだいじょうぶなのかしらと心配になる。
以前も屋根の上に乗って降りられなくなった子猫のザジーを、屋根の上に登って助けたと言っていたし、高いところが得意なのかしら?普段から屋根に登るとも言っていたわ。
けれどアルベルトは私の心配をよそに、手際よく屋根の穴を塞いで、なおかつ屋根を頑丈に補強してくれたのだった。
「終わった。もうだいじょうぶ。前より頑丈になった筈。心配ない。安心して。」
そう言って穏やかに微笑んだ。
「危険な仕事だったのにありがとう。お茶を入れるから飲んでいってちょうだい。」
私は代金はいらないというアルベルトに、少しでもお礼がしたくてそう提案した。
「俺の専用のティーカップで?」
「そうね、この間購入したティーカップを使いましょう。」
アルベルトと日用品の買い出しに行った時に、私はアルベルト専用のティーカップを購入していた。絵のモデルのこともあるし、頻繁に家に来るだろうと思ったのだ。
もちろん工房長とお父さまの分も購入してあるんだけれど、アルベルトは自分専用のティーカップがあることをいたく喜んでいた。
「騎士さまも、あなたの旦那さんも持ってない。俺だけの専用ティーカップ。だよね?」
「……?そうね?」
いったいぜんたい、そんなことの何がそんなに嬉しいのかしら?アルベルトはニコニコしながら、私の淹れたお茶を飲んでいた。
「おいしい。」
「そう、それは良かったわ。久しぶりに淹れたから、ちょっと自信がなかったの。」
「家じゃやらなかったの?」
「実家じゃしていたんだけれど、婚家では一応メイドってものがいたから。うちの実家は貧乏で、なんでも自分でやっていたのよ。」
「これからは、なんでも出来るようになる。ここはあなたの城だから。」
「そうね。これからは誰にも邪魔されずに生活が出来るのよね。料理も久しぶりよ。」
「早く食べてみたいな。」
「絵のモデルをしてくれる時に、休憩時間に振る舞う予定だから、楽しみにしていて。」
「……あの人は、もう食べたから。」
「あの人?」
「あなたの旦那さん。」
「ああ。でもあれは病人食というか、仕方がないじゃない?具合が悪い人を、いくら離婚しようとしているからって、放ってはおけないもの。振る舞ったつもりはないわよ?」
「でも、夜も食べた。」
「ああ……。なんか有耶無耶のうちに、料理させられたわね……。なんで私の手料理なんか、今更食べたがったのかわからないけど。」
「だから、早く食べたい。」
「うん?そうね?」
イザークが私の手料理を食べたことと、早く料理が食べたいことは何が関係するの?
「おかわりはどう?俺も、あなたにお茶を注いでいいかな?」
アルベルトは、相変わらずニコニコしている。やってみたかったのかしら?
「ええ、もちろん構わないけど。」
アルベルトがそう言ってくれたので、私はお茶のお代わりをカップに注いでもらった。
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