養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中
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第41話 こんなものいらない②
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「はっ。この家を出てどうすると言うんだ。メッゲンドルファー子爵家ではお前1人養うことも難しいだろう。次は後妻を探している年寄に嫁がされるのがいいところだろう。」
「私、魔法絵師として魔塔に認められたの。
あなたにも実家にも、頼らなくても生きていかれるのよ。残念でしょうけれど。」
「馬鹿馬鹿しい。お前の絵ごときで──」
「私の魔法絵は、特別なんですって。」
「なんだと?」
「魔法絵師のスキル持ちと、同じ効果を持つ魔法絵を、描くことが出来るのよ。」
「魔法絵師のスキルと同じ効果……?
まさか、召喚絵を描けるというのか?
お前ごときが?馬鹿も休み休み言え。」
「信じようが信じまいがご勝手にどうぞ。
私はこの家を出ていかせてもらうわ。
私にとって何より大切な、魔石の粉末入りの絵の具を売って、代わりに宝石ですって?
私にとって絵は何より大切なものなのよ。
それがわからない人とは暮らせません。」
「待て、離婚なぞ認めん。」
「あとは離婚協議場で会いましょう。さようなら、イザーク。短い結婚生活だったわね。
明日の朝出て行かせてもらうわ。」
私はそう言うと、イザークの執務室を出て自室に戻り、カバンに荷物を詰めて、ベッドに横になった。この家に私の持ち物なんてたかが知れているから、荷造りはすぐ済んだ。
すると突然、ドンドン!とドアを叩く音。
何事かと思ってドアを開けると、怒り狂った表情のイザークが、扉の前に立っていて、私は一瞬ヒュッと息を飲んだ。
「何をしている。早く出ていけ。」
「は?」
「この家の人間ではなくなるのだろう。
ならこの部屋に泊めることは出来ない。」
「ちょっと──」
「ああ、ちょうどいい、荷造りも済ませてあるじゃないか。早く出ていくんだ。」
イザークは私の荷物を持って、反対側の手で私の手首を掴んで、引きずるようにどんどんと歩いて行ってしまう。私は今パジャマ姿だ。この格好のまま出ていけと言うの!?
「ちょっとイザーク、今から馬車を探せというの?しかもこんな格好で?」
「出て行くと言ったのは君だ。当主の言うことに逆らう人間にはしつけが必要だ。」
しつけ。しつけ。しつけ。ロイエンタール伯爵家では、当主に逆らう人間にはしつけが必要。あなたの中ではこれもしつけなのね。
「パジャマ姿で外に放り出されている女性を見て、通りすがりの人や、話を聞いた他の貴族たちがどう思うかしらね!?
所詮それがロイエンタール伯爵家の恥だとわからないのね、あなたには。」
私は精一杯の抵抗で、普段着に着替える時間を稼ごうとした。いくらなんでも上着も羽織っていないパジャマ姿で、馬車を捕まえる女性なんて、噂になるに決まっているもの。
「……。いいだろう。着替えてくるがいい。
だが5分しか待たない。」
「あなたは貴族女性の服が、1人じゃ着られるものじゃないことも知らないのね。」
私はアンがいなくなってから、1人で着られる服ばかりを着ていたから、もちろん1人で着られる服もあるけれど、それは自室で着る用のもので、当然外出着じゃない。
「……メイドを叩き起こそう。だが、我が家が買い与えたものを持っていくのは許さない。君が実家から持ってきた服を着るんだ。」
「当然そのつもりよ。」
明日の朝着ていく用に、実家から持って来た服をクローゼットにかけてあったのだ。
私は自室に戻ると、メイドが来るのを待って、服を着替えるのを手伝って貰った。
脱ぐことを考えると、コルセットをしめずに着る服でも、背中で結ばれた紐をほどくのが大変なのだ。今日は服を着たまま寝て、明日の朝アンに手伝ってもらう他ないわね。
私は外泊なんて滅多にしない。ましてやイザークに旅行に連れて行ってもらったこともない。町に何があるのかも知らない。こんな時間に泊めてくれる宿屋を私は知らない。
行くあてがあるとすればアンの住む村だけだ。絵の具工房の工房長から借りる予定だった家のガゼボなら、村から見えないからひと目につかないし、屋根があるから万が一雨が降っても、少しはさけられるでしょうしね。
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「私、魔法絵師として魔塔に認められたの。
あなたにも実家にも、頼らなくても生きていかれるのよ。残念でしょうけれど。」
「馬鹿馬鹿しい。お前の絵ごときで──」
「私の魔法絵は、特別なんですって。」
「なんだと?」
「魔法絵師のスキル持ちと、同じ効果を持つ魔法絵を、描くことが出来るのよ。」
「魔法絵師のスキルと同じ効果……?
まさか、召喚絵を描けるというのか?
お前ごときが?馬鹿も休み休み言え。」
「信じようが信じまいがご勝手にどうぞ。
私はこの家を出ていかせてもらうわ。
私にとって何より大切な、魔石の粉末入りの絵の具を売って、代わりに宝石ですって?
私にとって絵は何より大切なものなのよ。
それがわからない人とは暮らせません。」
「待て、離婚なぞ認めん。」
「あとは離婚協議場で会いましょう。さようなら、イザーク。短い結婚生活だったわね。
明日の朝出て行かせてもらうわ。」
私はそう言うと、イザークの執務室を出て自室に戻り、カバンに荷物を詰めて、ベッドに横になった。この家に私の持ち物なんてたかが知れているから、荷造りはすぐ済んだ。
すると突然、ドンドン!とドアを叩く音。
何事かと思ってドアを開けると、怒り狂った表情のイザークが、扉の前に立っていて、私は一瞬ヒュッと息を飲んだ。
「何をしている。早く出ていけ。」
「は?」
「この家の人間ではなくなるのだろう。
ならこの部屋に泊めることは出来ない。」
「ちょっと──」
「ああ、ちょうどいい、荷造りも済ませてあるじゃないか。早く出ていくんだ。」
イザークは私の荷物を持って、反対側の手で私の手首を掴んで、引きずるようにどんどんと歩いて行ってしまう。私は今パジャマ姿だ。この格好のまま出ていけと言うの!?
「ちょっとイザーク、今から馬車を探せというの?しかもこんな格好で?」
「出て行くと言ったのは君だ。当主の言うことに逆らう人間にはしつけが必要だ。」
しつけ。しつけ。しつけ。ロイエンタール伯爵家では、当主に逆らう人間にはしつけが必要。あなたの中ではこれもしつけなのね。
「パジャマ姿で外に放り出されている女性を見て、通りすがりの人や、話を聞いた他の貴族たちがどう思うかしらね!?
所詮それがロイエンタール伯爵家の恥だとわからないのね、あなたには。」
私は精一杯の抵抗で、普段着に着替える時間を稼ごうとした。いくらなんでも上着も羽織っていないパジャマ姿で、馬車を捕まえる女性なんて、噂になるに決まっているもの。
「……。いいだろう。着替えてくるがいい。
だが5分しか待たない。」
「あなたは貴族女性の服が、1人じゃ着られるものじゃないことも知らないのね。」
私はアンがいなくなってから、1人で着られる服ばかりを着ていたから、もちろん1人で着られる服もあるけれど、それは自室で着る用のもので、当然外出着じゃない。
「……メイドを叩き起こそう。だが、我が家が買い与えたものを持っていくのは許さない。君が実家から持ってきた服を着るんだ。」
「当然そのつもりよ。」
明日の朝着ていく用に、実家から持って来た服をクローゼットにかけてあったのだ。
私は自室に戻ると、メイドが来るのを待って、服を着替えるのを手伝って貰った。
脱ぐことを考えると、コルセットをしめずに着る服でも、背中で結ばれた紐をほどくのが大変なのだ。今日は服を着たまま寝て、明日の朝アンに手伝ってもらう他ないわね。
私は外泊なんて滅多にしない。ましてやイザークに旅行に連れて行ってもらったこともない。町に何があるのかも知らない。こんな時間に泊めてくれる宿屋を私は知らない。
行くあてがあるとすればアンの住む村だけだ。絵の具工房の工房長から借りる予定だった家のガゼボなら、村から見えないからひと目につかないし、屋根があるから万が一雨が降っても、少しはさけられるでしょうしね。
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