養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
文字の大きさ
大中小
73 / 192
第36話 白い商会①
しおりを挟む
「──“白い商会”を使うのです。」
「“白い商会”?なんでしょうか?それは。」
「私も初めて聞く言葉ね。なんなの?」
「既に出来ている商会を、購入するというやり方ですよ。これならすぐです。」
「それは……。」
私はそれを聞いてがっかりした。
「既に出来ている商会ですって?それを買い取るのにいったいいくらかかるというのよ。
商会の在庫、今持っている販売網、それらをすべて含めた財産を買うわけでしょう?」
私の感じたがっかりした気持ちの理由を、アデリナ嬢が代わりに説明してくれる。
「……生きている商会、ならね。」
ヴィリがニコリと微笑んだ。
「どういうことなの?」
アデリナ嬢も興味津々で尋ねている。
「商会というのは、まるで動かしていない商会というのがたくさんあるものなのですよ。
それこそ星の数ほどね。」
「商売をしていない商会ということ?」
「ええ、そういうことです。」
「倒産したってことじゃないの?それなら負債が大量にある筈だわ!それごと買い取ることに代わりはないじゃないの。」
「もちろんそういった場合も往々にしてあります。なので帳簿や財産を事前に調べる必要はありますが、まったく一度も何も動かしていない、負債のない“白い商会”というのも、実はたくさんこの世に存在するのですよ。」
人差し指を立ててヴィリが言う。
「なぜ、わざわざ商会を作ったのに、一度も商売をしていないのですか……?」
私はその理由がわからなかった。
「もちろん様々な場合が存在します。商売を始めようとして、病気になってしまっただとか、穀物なんかを扱っていて、商会を作ったほうが優遇措置があるので作ったものの、結局面倒になって放置してしまっただとか。」
「そんなことがあるの?」
「ええ。色々な理由で、“白い商会”になってしまう商会が存在するのです。」
「知らなかったわ……。」
アデリナ嬢が、“白い商会”の話題に食いついて、ヴィリに様々な質問を投げかける。
「それ以外にも、“白い商会”になる場合は存在するの?そもそも優遇措置って?」
「税金の優遇措置のことですね。個人として税金を収めるよりも、商会として収めるほうが税金が安い場合があるのです。ですが知識がない人たちがすることですから、優遇措置に必要な申請書類が作れずに、結果放置するはめになることが多いのですよ。」
「平民は文字の読めない人も多いというものね。よく知らずに優遇措置のことだけを知って、作ってしまったということかしらね。」
「おそらくは。──それと最も多いのは、もともと“白い商会”として、売り目的で商会を作るという場合ですね。」
「“白い商会”を販売目的で作るですって?フィリーネ嬢のように、“白い商会”を離婚目的で購入する女性がたくさんいるというの?
まさかそんなわけじゃないでしょう?」
「ええ、もちろんです。大半は実績がある商会であると見せる為に、“白い商会”を必要とするのですよ。作った年数は記録されていますから、歴史ある商会に見えますからね。」
「実績が必要な場面があるの?」
「ごくまれな場合でいうなら、政府から補助金が出たことがあったのですが、その際に作られて2年以内の商会は対象外ということがありましたね。その為それ以前に作られた商会が売れたということがありました。」
「新しく商会を作るのではなく、既にあった商会の台帳に、自身の商売の実績を書き記したということね?それまでなかった売上が、突然発生したかのように。」
「まあそういうことですね。
それ以外で“白い商会”を求める人は、──概ね詐欺に使用します。古くからある商会は信用されやすいので。」
「詐欺……ですか……。」
「詐欺師が購入するから、“白い商会”を売り目的で作っておく人たちが存在するということね?作り方がわかれば、あとは作って売れるのを待つだけですものね。」
「ええ。ただ、商会は15年経過してもなんの動きもなかった場合は、国がその存在を抹消させます。ですので、それまでに売り抜く必要がありますけどね。」
「……つまり、信用としては14年目が最も価値があるけれど、翌年になると存在そのものがなくなるから、買い叩ける可能性がある年数でもある、ということね?」
「そういうことです。さすが王立学園を首席で卒業されたというアデリナ嬢ですね。
すぐに“白い商会”の仕組みや弱点を飲み込んでしまわれた。」
丁々発止のようなヴィリとアデリナ嬢のやり取りに、私はただただ呆然として、成り行きを見守ることしか出来なかった。
「ですから僕ら商人は、大きな取引の際は、過去3年間の台帳と、税務申告履歴を見せてもらったりしますね。税務申告履歴は国が発行するので、ごまかしようがないので。」
「税金を国に多めに払ってしまったら、わからないんじゃない?あくまでも自己申告でしょう?実際に商売していなくても、それは可能だと思うけれど。」
「もちろん可能ですが、大きく税金を納めている商会の名が、商人の間で広まっていないわけがありませんからね。地域が違えばいざ知らず。他の領主の地域出身だと言うのであれば、そこに人をやって調べるまでです。」
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
「“白い商会”?なんでしょうか?それは。」
「私も初めて聞く言葉ね。なんなの?」
「既に出来ている商会を、購入するというやり方ですよ。これならすぐです。」
「それは……。」
私はそれを聞いてがっかりした。
「既に出来ている商会ですって?それを買い取るのにいったいいくらかかるというのよ。
商会の在庫、今持っている販売網、それらをすべて含めた財産を買うわけでしょう?」
私の感じたがっかりした気持ちの理由を、アデリナ嬢が代わりに説明してくれる。
「……生きている商会、ならね。」
ヴィリがニコリと微笑んだ。
「どういうことなの?」
アデリナ嬢も興味津々で尋ねている。
「商会というのは、まるで動かしていない商会というのがたくさんあるものなのですよ。
それこそ星の数ほどね。」
「商売をしていない商会ということ?」
「ええ、そういうことです。」
「倒産したってことじゃないの?それなら負債が大量にある筈だわ!それごと買い取ることに代わりはないじゃないの。」
「もちろんそういった場合も往々にしてあります。なので帳簿や財産を事前に調べる必要はありますが、まったく一度も何も動かしていない、負債のない“白い商会”というのも、実はたくさんこの世に存在するのですよ。」
人差し指を立ててヴィリが言う。
「なぜ、わざわざ商会を作ったのに、一度も商売をしていないのですか……?」
私はその理由がわからなかった。
「もちろん様々な場合が存在します。商売を始めようとして、病気になってしまっただとか、穀物なんかを扱っていて、商会を作ったほうが優遇措置があるので作ったものの、結局面倒になって放置してしまっただとか。」
「そんなことがあるの?」
「ええ。色々な理由で、“白い商会”になってしまう商会が存在するのです。」
「知らなかったわ……。」
アデリナ嬢が、“白い商会”の話題に食いついて、ヴィリに様々な質問を投げかける。
「それ以外にも、“白い商会”になる場合は存在するの?そもそも優遇措置って?」
「税金の優遇措置のことですね。個人として税金を収めるよりも、商会として収めるほうが税金が安い場合があるのです。ですが知識がない人たちがすることですから、優遇措置に必要な申請書類が作れずに、結果放置するはめになることが多いのですよ。」
「平民は文字の読めない人も多いというものね。よく知らずに優遇措置のことだけを知って、作ってしまったということかしらね。」
「おそらくは。──それと最も多いのは、もともと“白い商会”として、売り目的で商会を作るという場合ですね。」
「“白い商会”を販売目的で作るですって?フィリーネ嬢のように、“白い商会”を離婚目的で購入する女性がたくさんいるというの?
まさかそんなわけじゃないでしょう?」
「ええ、もちろんです。大半は実績がある商会であると見せる為に、“白い商会”を必要とするのですよ。作った年数は記録されていますから、歴史ある商会に見えますからね。」
「実績が必要な場面があるの?」
「ごくまれな場合でいうなら、政府から補助金が出たことがあったのですが、その際に作られて2年以内の商会は対象外ということがありましたね。その為それ以前に作られた商会が売れたということがありました。」
「新しく商会を作るのではなく、既にあった商会の台帳に、自身の商売の実績を書き記したということね?それまでなかった売上が、突然発生したかのように。」
「まあそういうことですね。
それ以外で“白い商会”を求める人は、──概ね詐欺に使用します。古くからある商会は信用されやすいので。」
「詐欺……ですか……。」
「詐欺師が購入するから、“白い商会”を売り目的で作っておく人たちが存在するということね?作り方がわかれば、あとは作って売れるのを待つだけですものね。」
「ええ。ただ、商会は15年経過してもなんの動きもなかった場合は、国がその存在を抹消させます。ですので、それまでに売り抜く必要がありますけどね。」
「……つまり、信用としては14年目が最も価値があるけれど、翌年になると存在そのものがなくなるから、買い叩ける可能性がある年数でもある、ということね?」
「そういうことです。さすが王立学園を首席で卒業されたというアデリナ嬢ですね。
すぐに“白い商会”の仕組みや弱点を飲み込んでしまわれた。」
丁々発止のようなヴィリとアデリナ嬢のやり取りに、私はただただ呆然として、成り行きを見守ることしか出来なかった。
「ですから僕ら商人は、大きな取引の際は、過去3年間の台帳と、税務申告履歴を見せてもらったりしますね。税務申告履歴は国が発行するので、ごまかしようがないので。」
「税金を国に多めに払ってしまったら、わからないんじゃない?あくまでも自己申告でしょう?実際に商売していなくても、それは可能だと思うけれど。」
「もちろん可能ですが、大きく税金を納めている商会の名が、商人の間で広まっていないわけがありませんからね。地域が違えばいざ知らず。他の領主の地域出身だと言うのであれば、そこに人をやって調べるまでです。」
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
381
あなたにおすすめの小説
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──
年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
「婚約破棄された聖女ですが、実は最強の『呪い解き』能力者でした〜追放された先で王太子が土下座してきました〜
鷹 綾
恋愛
公爵令嬢アリシア・ルナミアは、幼い頃から「癒しの聖女」として育てられ、オルティア王国の王太子ヴァレンティンの婚約者でした。
しかし、王太子は平民出身の才女フィオナを「真の聖女」と勘違いし、アリシアを「偽りの聖女」「無能」と罵倒して公衆の面前で婚約破棄。
王命により、彼女は辺境の荒廃したルミナス領へ追放されてしまいます。
絶望の淵で、アリシアは静かに真実を思い出す。
彼女の本当の能力は「呪い解き」——呪いを吸い取り、無効化する最強の力だったのです。
誰も信じてくれなかったその力を、追放された土地で発揮し始めます。
荒廃した領地を次々と浄化し、領民から「本物の聖女」として慕われるようになるアリシア。
一方、王都ではフィオナの「癒し」が効かず、魔物被害が急増。
王太子ヴァレンティンは、ついに自分の誤りを悟り、土下座して助けを求めにやってきます。
しかし、アリシアは冷たく拒否。
「私はもう、あなたの聖女ではありません」
そんな中、隣国レイヴン帝国の冷徹皇太子シルヴァン・レイヴンが現れ、幼馴染としてアリシアを激しく溺愛。
「俺がお前を守る。永遠に離さない」
勘違い王子の土下座、偽聖女の末路、国民の暴動……
追放された聖女が逆転し、究極の溺愛を得る、痛快スカッと恋愛ファンタジー!
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアーティアは、継母に冷酷無慈悲と噂されるフレイグ・メーカム辺境伯の元に嫁ぐように言い渡された。
継母は、アーティアが苦しい生活を送ると思い、そんな辺境伯の元に嫁がせることに決めたようだ。
しかし、そんな彼女の意図とは裏腹にアーティアは楽しい毎日を送っていた。辺境伯のフレイグは、噂のような人物ではなかったのである。
彼は、多少無口で不愛想な所はあるが優しい人物だった。そんな彼とアーティアは不思議と気が合い、やがてお互いに惹かれるようになっていく。
2022/03/04 改題しました。(旧題:不器用な辺境伯の不器用な愛し方 ~継母の嫌がらせで冷酷無慈悲な辺境伯の元に嫁がされましたが、溺愛されています~)
【改稿版】夫が男色になってしまったので、愛人を探しに行ったら溺愛が待っていました
妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
外観は赤髪で派手で美人なアーシュレイ。
同世代の女の子とはうまく接しられず、幼馴染のディートハルトとばかり遊んでいた。
おかげで男をたぶらかす悪女と言われてきた。しかし中身はただの魔道具オタク。
幼なじみの二人は親が決めた政略結婚。義両親からの圧力もあり、妊活をすることに。
しかしいざ夜に挑めばあの手この手で拒否する夫。そして『もう、女性を愛することは出来ない!』とベットの上で謝られる。
実家の援助をしてもらってる手前、離婚をこちらから申し込めないアーシュレイ。夫も誰かとは結婚してなきゃいけないなら、君がいいと訳の分からないことを言う。
それなら、愛人探しをすることに。そして、出会いの場の夜会にも何故か、毎回追いかけてきてつきまとってくる。いったいどういうつもりですか!?そして、男性のライバル出現!? やっぱり男色になっちゃたの!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる