養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中
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第27話 独りぼっちのドラゴンの子ども①
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「大丈夫だ。ドラゴンのブレスは精霊寄りの魔法だから、魔法騎士団が使う魔法とは理が違う。植物は燃やせないのさ。」
「まあ!すごいですね!
自分たちの住処だからでしょうか?」
「──いや?多分違うんじゃないか?
アビスドラゴンは岩山に住んでいるが、ブレスで岩山を破壊するしな。」
岩山を……、ブレスで破壊……。やっぱりドラゴンってすごい生き物なのね……。
「でも、ドラゴンというのは、プライドが高くて人間をあまり好まない生き物なのだと伺いましたが、よく撫でられましたね?」
「時々餌を持って来ていたからかもな。それにあの子は俺の作るクッキーが好きでな。」
「──クッキーを食べるんですか?
ドラゴンが?」
「ドラゴンは雑食だからなんでも食べるぞ?
肉も野菜も、それこそなんでもな。」
「餌をあげたら、私でも仲良くなれるでしょうか?私……、出来ることならば、あの子とお友だちになってみたいです。」
私がレオンハルト様にそう尋ねると、
「あの子の分も持って来ているから、試しに手から直接クッキーをやってみるか?
あの子が食べるかは分からんが。」
確かに、いくらレオンハルト様が近くにいらっしゃるとは言っても、初対面の私の手から食べるとは思えないわね……。
でも、あの子はあんなに可愛らしいし、餌をあげてみたいわ。絵から召喚しなくても懐いてくれたら嬉しいんだけれど……。
絵から召喚しないと、子猫のザジーは私に懐いてはくれなかった。絵から出てくれば懐いてくれても、それ以外だと冷たいというのは、なんだか寂しく思えてしまう。
そう思いながら夢中で絵を描いている間、メルティドラゴンの子どもは少しも身動せずに瞼を閉じていた。だいぶ日が高くなり、そろそろ昼飯にしないか?と、お腹をおさえて眉を下げたレオンハルト様に言われて、かなり時間が経っていたことに気付く。
「ごめんなさい、こんなに時間をかけるつもりじゃなかったので、何も持って来ていないんです。今日はもう帰りましょう。」
「いや、だいじょうぶだ、俺があんたの分も持って来てる。」
「……まさか、それも手作りですか?」
「──そうだが?」
レオンハルト様が当たり前のように言いながら、荷袋からお弁当らしきものを荷袋から取り出している。
……本当にこの方、どうして料理人を志さなかったのかしら……。
レオンハルト様は改めて紅茶をいれると、
「ほら、食べよう。」
紅茶の入った木のマグカップと、木を編み込んだような小さな箱を手渡される。
遠征の際の携帯用食料入れなのだそうだ。
「ありがとうございます。」
私はお礼を言うと、木を編み込んだような小さな箱の蓋を開けた。中にはサンドイッチが入っていて、具はハムとレタスのものと、木苺のジャムのものと、ナッツとチーズとベーコンのものと、卵サンドで、どれもとても美味しかった。こんなにふっくらとしたパンは、ロイエンタール伯爵家でも、食べたことがないかも知れない。
料理が出来るというのはいいわよね。私もメッゲンドルファー子爵家にいた時は、貧乏であまり使用人を雇えなかったから、料理や菓子作りをしても何も言われなかったけど、ロイエンタール伯爵家のお飾りの妻は、自由に厨房に入ることすらままならないから。
自由になれたら最初に料理がしたいわ。
「──メルティドラゴンの子ども、最初に見た時のまま、全然動きませんね。」
「ああ。俺がいるから安心してるんだろう。
俺が来るといつもこうして森から出てきてくれるんだ。かわいい奴さ。」
レオンハルト様は目を細めてメルティドラゴンの子どもを見つめた。
「レオンハルト様がいらっしゃらない時は、どうしているのでしょうか?」
「森の奥の方に行ってしまうな。普段はそこまで奥には行かないんだが……。
たまにかなり奥のほうに餌を探しに行った時は、出てこないこともあるが。」
ニオイが届かないか、のんびりしていそうだから、足が遅くて間に合わないのかしら?
森から出てきたところに気が付かなかったのか、ニオイに気が付いて先にこの場にいたのか。どちらかは分からないけれど、レオンハルト様は相当慕われているみたいね。
「ずっと可愛がってらっしゃるんですね。そういえば、この子の名前はあるんですか?」
「いや、特に決めてはいないが。」
「そうなんですね。」
私ならすぐに名前を考えてしまうところだけれど、男の方は違うのね。ずっとメルティドラゴンの子どもって呼んでいるのかしら。
「別につけてもいいぞ、名前。
呼びたい名前で呼んでくれ。」
レオンハルト様がそう言ってくれる。
「レオンハルト様をさしおいて、そんなこと出来ませんわ。お気持ちだけいただいておきます。ありがとうございます。」
「そうか。まあ、お前さんがそれでいいなら別にいい。こいつは自然界にいるものだからな、俺が飼ってるわけじゃないから、なんとなくそんな気にならなかっただけだ。
──デザートにどうだ?
さっきのとは違うクッキーだ。」
と言って、レオンハルト様がクッキーの入った新しい小袋を取り出した瞬間だった。
────────────────────
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「まあ!すごいですね!
自分たちの住処だからでしょうか?」
「──いや?多分違うんじゃないか?
アビスドラゴンは岩山に住んでいるが、ブレスで岩山を破壊するしな。」
岩山を……、ブレスで破壊……。やっぱりドラゴンってすごい生き物なのね……。
「でも、ドラゴンというのは、プライドが高くて人間をあまり好まない生き物なのだと伺いましたが、よく撫でられましたね?」
「時々餌を持って来ていたからかもな。それにあの子は俺の作るクッキーが好きでな。」
「──クッキーを食べるんですか?
ドラゴンが?」
「ドラゴンは雑食だからなんでも食べるぞ?
肉も野菜も、それこそなんでもな。」
「餌をあげたら、私でも仲良くなれるでしょうか?私……、出来ることならば、あの子とお友だちになってみたいです。」
私がレオンハルト様にそう尋ねると、
「あの子の分も持って来ているから、試しに手から直接クッキーをやってみるか?
あの子が食べるかは分からんが。」
確かに、いくらレオンハルト様が近くにいらっしゃるとは言っても、初対面の私の手から食べるとは思えないわね……。
でも、あの子はあんなに可愛らしいし、餌をあげてみたいわ。絵から召喚しなくても懐いてくれたら嬉しいんだけれど……。
絵から召喚しないと、子猫のザジーは私に懐いてはくれなかった。絵から出てくれば懐いてくれても、それ以外だと冷たいというのは、なんだか寂しく思えてしまう。
そう思いながら夢中で絵を描いている間、メルティドラゴンの子どもは少しも身動せずに瞼を閉じていた。だいぶ日が高くなり、そろそろ昼飯にしないか?と、お腹をおさえて眉を下げたレオンハルト様に言われて、かなり時間が経っていたことに気付く。
「ごめんなさい、こんなに時間をかけるつもりじゃなかったので、何も持って来ていないんです。今日はもう帰りましょう。」
「いや、だいじょうぶだ、俺があんたの分も持って来てる。」
「……まさか、それも手作りですか?」
「──そうだが?」
レオンハルト様が当たり前のように言いながら、荷袋からお弁当らしきものを荷袋から取り出している。
……本当にこの方、どうして料理人を志さなかったのかしら……。
レオンハルト様は改めて紅茶をいれると、
「ほら、食べよう。」
紅茶の入った木のマグカップと、木を編み込んだような小さな箱を手渡される。
遠征の際の携帯用食料入れなのだそうだ。
「ありがとうございます。」
私はお礼を言うと、木を編み込んだような小さな箱の蓋を開けた。中にはサンドイッチが入っていて、具はハムとレタスのものと、木苺のジャムのものと、ナッツとチーズとベーコンのものと、卵サンドで、どれもとても美味しかった。こんなにふっくらとしたパンは、ロイエンタール伯爵家でも、食べたことがないかも知れない。
料理が出来るというのはいいわよね。私もメッゲンドルファー子爵家にいた時は、貧乏であまり使用人を雇えなかったから、料理や菓子作りをしても何も言われなかったけど、ロイエンタール伯爵家のお飾りの妻は、自由に厨房に入ることすらままならないから。
自由になれたら最初に料理がしたいわ。
「──メルティドラゴンの子ども、最初に見た時のまま、全然動きませんね。」
「ああ。俺がいるから安心してるんだろう。
俺が来るといつもこうして森から出てきてくれるんだ。かわいい奴さ。」
レオンハルト様は目を細めてメルティドラゴンの子どもを見つめた。
「レオンハルト様がいらっしゃらない時は、どうしているのでしょうか?」
「森の奥の方に行ってしまうな。普段はそこまで奥には行かないんだが……。
たまにかなり奥のほうに餌を探しに行った時は、出てこないこともあるが。」
ニオイが届かないか、のんびりしていそうだから、足が遅くて間に合わないのかしら?
森から出てきたところに気が付かなかったのか、ニオイに気が付いて先にこの場にいたのか。どちらかは分からないけれど、レオンハルト様は相当慕われているみたいね。
「ずっと可愛がってらっしゃるんですね。そういえば、この子の名前はあるんですか?」
「いや、特に決めてはいないが。」
「そうなんですね。」
私ならすぐに名前を考えてしまうところだけれど、男の方は違うのね。ずっとメルティドラゴンの子どもって呼んでいるのかしら。
「別につけてもいいぞ、名前。
呼びたい名前で呼んでくれ。」
レオンハルト様がそう言ってくれる。
「レオンハルト様をさしおいて、そんなこと出来ませんわ。お気持ちだけいただいておきます。ありがとうございます。」
「そうか。まあ、お前さんがそれでいいなら別にいい。こいつは自然界にいるものだからな、俺が飼ってるわけじゃないから、なんとなくそんな気にならなかっただけだ。
──デザートにどうだ?
さっきのとは違うクッキーだ。」
と言って、レオンハルト様がクッキーの入った新しい小袋を取り出した瞬間だった。
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