養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中
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第18話 引退した元第一騎士団長①
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だけどなんとかして魔物の絵を描くという選択肢しか、この時の私にはないと思っていたから、私はすぐには納得出来なかった。
「奥様、それでしたら、この村に元騎士団長が住んでいるんですが、彼に相談してみてはいかがですか?怪我で引退して、故郷の村に戻ってはきましたが、腕は確かです。」
「──騎士団長?」
「はい、元王国の第一騎士団長です。怪我で引退して療養されてはいますが、魔物討伐の演習を何度も指揮されている方です。
果たして奥様の言う、魔物の絵を近距離で描くなんてことが現実的であるのか、専門家の話を聞いてみてはいかがでしょうか?
彼が奥様を守りきれると保証するのであれば、僕も何も言いません。」
「それは確かに……そうね……。」
元とはいえ第一騎士団長、怪我で療養中とはいえ、最前線で戦ってらした方だもの。その方の言葉ならそれが真実というものだわ。
「ヨハン、私にその方を紹介してくださらない?会って話が聞いてみたいの。」
「わかりました。家にいると思いますから、これからたずねてみましょう。」
そう言ってヨハンは立ち上がろうとする。
「──仕事はいいの?」
「今日は夕方まで届け物はありませんから、畑に行こうかと思っていた程度です。問題ありませんよ。それより奥様をこのままお帰ししたら、どうしても絵を描きたい気持ちがおさえられずに、騎士団長に話を聞く前に魔物のところに行ってしまいそうですからね。」
ヨハンもなにげに私のことを分かっているわよね。私が顔に出すぎるだけなのかも知れないけれど。たまに会うだけのヨハンですら私を理解しているというのにね……。
私は一瞬イザークのことが頭に浮かんで、それを頭を振って打ち消した。
「……お願いね、ヨハン。必ずやお嬢様を説得して戻って来てちょうだい。」
「──もちろんだよ、任せておいてくれ。」
悲壮な表情のアンに送り出されて、私は決死の覚悟といった様子のヨハンと共に、急遽怪我で引退して療養中という、元王国騎士団第一騎士団長に会いに行くことになったのだった。私はまだ、2人とも大げさね、くらいに思っていたのだけれど、すぐにそれは打ち砕かれることとなった。
元第一騎士団長の家は、私が借りようと思っていた家の、本当にすぐ近くにあった。すぐと言ってもアンの家がそうなように、隣の家までの距離はかなりあるけれど。ひどくオンボロで手入れも何もされていない感じで、掃除すらされていないのでは?と思う程にみすぼらしかった。剣を振るうことしかしてこなかったから、そういうことに気が回らないのかしら?洗濯物すら見当たらない。
今日はとても天気がいいから、このあたりの家は、どこも庭に洗濯物を干している。
かわりに虫干しされていると思わしき、書籍のたぐいや甲冑のようなものが置かれていた。引退してもそこは騎士様ということなのかしら。このぶんだと恐らくは独身なのだろう。ヨハンは生まれ故郷に戻って来たと言っていたけれど、家族はどうしたんだろうか?
それにしても、あの甲冑といい分厚い本といい、かなりお高そうに見えるのだけれど、庭に置いて干しているなんて不用心ね。このあたりは知り合いばかりだから、泥棒なんて入らないのかしら?ヨハンのおかげで村が潤ってるみたいだし、外から泥棒が忍び込まないとも限らないと思うのだけれど。
ヨハンがドアをノックすると、返事はなかった。まさか本や甲冑を虫干ししたまま外出しているのかしら?本当に不用心ね!
すると頭の上から、
「──なんだヨハンか、どうした?今日は別に野菜を頼んだ覚えはなかった筈だがな。」
癖になるようなバリトンボイスが降って来て、私はなんだか急に体が痺れた気がした。
見上げると2階の窓のへりに腰掛けて、靴を履いたままの足をプランと出している、白い開襟シャツに、焦げ茶のテーパードパンツ姿で、茶色い髪に無精髭の、かなり体格のいい男性が、手にしていた読みかけの本をパタンと閉じながらこちらを見下ろしてきた。
とんでもなく足が長く見えるのだけれど、テーパードパンツのおかげかしら?
この方が元第一騎士団長様なのかしら。上から目線のはしで見張っていたから、書籍や甲冑を外に出していても平気だったのね。
「──よっ、と。」
元第一騎士団長様は、窓のへりに読みかけの本を置いて、2階からそのまま地面に着地した。──え?家の鍵は?私は他人事ながらそれを見て焦ってしまった。
それでどうやって家の中に戻るつもりなの?まさかよじ登るつもりなのだろうか。
そんな風に思って元第一騎士団長様を見ていると、彼の瞳が緑色なことに気が付いた。
王族以外で緑色の瞳を持つ人は、この国ではまあまあ珍しい。私をふくめ大抵の人が青い目をしている。髪は基本金髪で、それか茶色。まれにアルベルトのような黒髪と銀髪。
茶色い目の人もたまにいるけれど、緑色の目はそれよりももっと少ない。だから緑色の目をしているというだけで、王族との縁戚関係を想像されたり、それを利用して詐欺を働く人もいるくらいだ。それくらい珍しい。だから王弟の子息であらせられるフェルディナンド様は金髪に緑色の瞳で、私の夫のイザークは、私と同じ金髪に青い目をしている。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
「奥様、それでしたら、この村に元騎士団長が住んでいるんですが、彼に相談してみてはいかがですか?怪我で引退して、故郷の村に戻ってはきましたが、腕は確かです。」
「──騎士団長?」
「はい、元王国の第一騎士団長です。怪我で引退して療養されてはいますが、魔物討伐の演習を何度も指揮されている方です。
果たして奥様の言う、魔物の絵を近距離で描くなんてことが現実的であるのか、専門家の話を聞いてみてはいかがでしょうか?
彼が奥様を守りきれると保証するのであれば、僕も何も言いません。」
「それは確かに……そうね……。」
元とはいえ第一騎士団長、怪我で療養中とはいえ、最前線で戦ってらした方だもの。その方の言葉ならそれが真実というものだわ。
「ヨハン、私にその方を紹介してくださらない?会って話が聞いてみたいの。」
「わかりました。家にいると思いますから、これからたずねてみましょう。」
そう言ってヨハンは立ち上がろうとする。
「──仕事はいいの?」
「今日は夕方まで届け物はありませんから、畑に行こうかと思っていた程度です。問題ありませんよ。それより奥様をこのままお帰ししたら、どうしても絵を描きたい気持ちがおさえられずに、騎士団長に話を聞く前に魔物のところに行ってしまいそうですからね。」
ヨハンもなにげに私のことを分かっているわよね。私が顔に出すぎるだけなのかも知れないけれど。たまに会うだけのヨハンですら私を理解しているというのにね……。
私は一瞬イザークのことが頭に浮かんで、それを頭を振って打ち消した。
「……お願いね、ヨハン。必ずやお嬢様を説得して戻って来てちょうだい。」
「──もちろんだよ、任せておいてくれ。」
悲壮な表情のアンに送り出されて、私は決死の覚悟といった様子のヨハンと共に、急遽怪我で引退して療養中という、元王国騎士団第一騎士団長に会いに行くことになったのだった。私はまだ、2人とも大げさね、くらいに思っていたのだけれど、すぐにそれは打ち砕かれることとなった。
元第一騎士団長の家は、私が借りようと思っていた家の、本当にすぐ近くにあった。すぐと言ってもアンの家がそうなように、隣の家までの距離はかなりあるけれど。ひどくオンボロで手入れも何もされていない感じで、掃除すらされていないのでは?と思う程にみすぼらしかった。剣を振るうことしかしてこなかったから、そういうことに気が回らないのかしら?洗濯物すら見当たらない。
今日はとても天気がいいから、このあたりの家は、どこも庭に洗濯物を干している。
かわりに虫干しされていると思わしき、書籍のたぐいや甲冑のようなものが置かれていた。引退してもそこは騎士様ということなのかしら。このぶんだと恐らくは独身なのだろう。ヨハンは生まれ故郷に戻って来たと言っていたけれど、家族はどうしたんだろうか?
それにしても、あの甲冑といい分厚い本といい、かなりお高そうに見えるのだけれど、庭に置いて干しているなんて不用心ね。このあたりは知り合いばかりだから、泥棒なんて入らないのかしら?ヨハンのおかげで村が潤ってるみたいだし、外から泥棒が忍び込まないとも限らないと思うのだけれど。
ヨハンがドアをノックすると、返事はなかった。まさか本や甲冑を虫干ししたまま外出しているのかしら?本当に不用心ね!
すると頭の上から、
「──なんだヨハンか、どうした?今日は別に野菜を頼んだ覚えはなかった筈だがな。」
癖になるようなバリトンボイスが降って来て、私はなんだか急に体が痺れた気がした。
見上げると2階の窓のへりに腰掛けて、靴を履いたままの足をプランと出している、白い開襟シャツに、焦げ茶のテーパードパンツ姿で、茶色い髪に無精髭の、かなり体格のいい男性が、手にしていた読みかけの本をパタンと閉じながらこちらを見下ろしてきた。
とんでもなく足が長く見えるのだけれど、テーパードパンツのおかげかしら?
この方が元第一騎士団長様なのかしら。上から目線のはしで見張っていたから、書籍や甲冑を外に出していても平気だったのね。
「──よっ、と。」
元第一騎士団長様は、窓のへりに読みかけの本を置いて、2階からそのまま地面に着地した。──え?家の鍵は?私は他人事ながらそれを見て焦ってしまった。
それでどうやって家の中に戻るつもりなの?まさかよじ登るつもりなのだろうか。
そんな風に思って元第一騎士団長様を見ていると、彼の瞳が緑色なことに気が付いた。
王族以外で緑色の瞳を持つ人は、この国ではまあまあ珍しい。私をふくめ大抵の人が青い目をしている。髪は基本金髪で、それか茶色。まれにアルベルトのような黒髪と銀髪。
茶色い目の人もたまにいるけれど、緑色の目はそれよりももっと少ない。だから緑色の目をしているというだけで、王族との縁戚関係を想像されたり、それを利用して詐欺を働く人もいるくらいだ。それくらい珍しい。だから王弟の子息であらせられるフェルディナンド様は金髪に緑色の瞳で、私の夫のイザークは、私と同じ金髪に青い目をしている。
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