上 下
44 / 44

第44話 リクエスト番外編・婚前旅行で温泉デート!?⑦

しおりを挟む
「なかなか楽しいですね!これ!」
 私は乗馬を教えてくれるというアドリアン王太子とともに、近くの森に遠乗りという名の紅葉の鑑賞に来ていた。

 この土地は温泉が沸くこともあって、地熱や気温が温かいので、他の地域よりも紅葉が落ちるのが遅いんだそう。だから今がちょうど見頃で、一面の紅葉がとても美しい。

 遠乗り言っても、私はそもそも馬に乗れないから、アドリアン王太子が手綱を引く馬に私1人だけが乗っている状態だ。

 用意してもらった、アドリアン王太子とおそろいの乗馬服を身に着けている。
 ドレスじゃ馬に乗れないものね。

 おそろいっていうのが、ちょっと恥ずかしかったけど、誰に見られているわけでもないから、そこは気にしないことにした。

 ……とは言っても、私たちの視界に入らないっていうだけで、護衛は付いてきているらしいけどね。見えないものは気にしない。

 王太子妃になる私は、そこに慣れる練習も兼ねているのだと言われたから。
 いずれ見えていても気にしないように、暮らさないといけないのよね。

 馬の動きに合わせて、腰を上げ下げするのが基本の乗り方らしいけど、これ、結構足腰に来るのよね。でも楽しい!

「慣れれば自然にその姿勢が取れるようになる。なかなか筋がいいじゃないか。これなら1人で乗れるようになるのもすぐだろう。」
「そうですか?えへへ。」

 こんなに楽しいのなら、もっと早くに乗馬を習いたかったなあ。馬もかわいくて大人しいし、これなら私でも出来そうかも?

「それでも不安なら、当日手綱を持つ従者を従わせよう。万が一があっても安全だ。」
「そうしてもらえると助かります。
 ……ふう、少し疲れました。」

「それなら休憩にしようか。ちょうど君を連れていきたい場所があるんだ。私が手綱を握るから、このまま馬に乗って行こう。」
「わかりました。」

 アドリアン王太子がヒョイと馬に乗り、私の後ろから馬の手綱を握る。
 これって……結構密着するんですけど!?

 アドリアン王太子の体温を、背中に感じてドキドキする。
「目的地まではすぐそこだ。
 しっかり手綱に捕まっていてくれ。」

 アドリアン王太子が馬の腹を軽く蹴って、馬が早足で駆け出した。凄い凄い!
 風を感じて気持ちいい!早く私もちゃんと乗れるようになりたいな。

「──ここだ。美しいところだろう?」
 アドリアン王太子が連れて来てくれたのは美しい小さな湖だった。近くに花々が咲き乱れる広いスペースもあって、とてもキレイ。

「はい、とってもキレイです!」
「ここに来るなら、ぜひとも君を連れてきたくてね。乗馬の練習もあるし、ちょうどいいと思ったんだ。」

「連れて来てくれてありがとうございます。あっ!魚がはねた!なんか虹色に光ってませんでした?あっ!またはねた!凄いキレイ!
 あれ?色が変わって見えたような……。」

「ほお、タマムシウオが見られるとはな。
 見られたら見せたいとは思っていたが、ずいぶんとついていたようだ。」

「タマムシウオってなんですか?」
「光の加減で色が変わって見える魚なんだ。
 この湖にしか生息しない珍しい魚でね。
 見ると幸運が訪れるとされている。」

「へええ……。ラッキーでしたね!」
「ちなみに男女で見ると意味が違うんだ。」
「どう違うんです?」

「──永遠の愛を手に入れられ、2人は幸せに暮らせる、とされている。だからここは恋人たちのデートスポットなんだ。まさか本当に見られるとは思っていなかったがな。」

「へえ……、そ、そうなんですか……。」
 そんなところに私と来たかっただなんて、嬉しすぎるんですけど!

「タマムシウオを見られた恋人たちは、ここで永遠の愛を誓うことになっているんだ。
 誓ってくれるだろう?アデル。」

 アドリアン王太子が、私に手を差し出してじっと私を見つめてくる。
「え……。」

「私、アドリアン・ミュレールは、アデル・ラーバントに永遠の愛を誓います。」
 真剣な眼差しのアドリアン王太子に、私もおずおずとその手を取った。

「私、アデル・ラーバントは、アドリアン・ミュレールに永遠の愛を誓います。」
 まるで結婚式の予行演習みたい。タマムシウオたちが奇跡のように何匹もはねる。

 アドリアン王太子の顔が近付いてきて、私たちは祝福するように跳ねて虹を作るタマムシウオたちに囲まれて、口づけを交わした。

 私を大切にしてくれるこの人を、私もずっと大切にしたい。ゲームの推しキャラとしてじゃなく、目の前にいる彼が大切なんだ。

「今日ですよね、盗賊が来るのって。」
「ああ、それならもう捕まったと聞いたよ。
 昨日の時点で下見に来ていたらしく、そいつの後をつけて一網打尽だったそうだ。」

「良かった!予知が役に立ちましたね!」
「ああ、これからも安定して予知出来るように、頑張ってイチャつかないとね。」
 アドリアン王太子がニッコリする。

「う……、あんまり1度にたくさんはしないでくださいね?信用してますけど。」
 無理させないつもりでいてくれているのは、昨日の夜の会話でわかっているしね。

「それなんだけどね。君の卒業を待たずに結婚してはどうかと思っているんだよね。結婚してしまえば、もっと色々出来るだろう?」
「へ?い、いろいろって……!?」
 
「そうなったら、もう手加減しないよ。
 覚悟しておいてね?」
 そう言って、アドリアン王太子は、甘く目を細めて微笑んだのだった。

────────────────────

特に具体的に見てみたいシチュエーションなどのリクエストがなければ、これにて完結です。
またリクエストいただきましたら再開するかも知れません。
その時はまたお目通しよろしくお願いいたします。


少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(7件)

りおんちゃん

面白かったです!一気読みしちゃいました!
3作の乙女ゲームが混合するって凄い偶然(≧ω≦。)プププ
また、楽しいお話待ってます!
頑張ってください\( ᐛ )/

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
2024.08.23 陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中

感想ありがとうございます。

1のヒロインは時間軸こそ違えど、ヒロインが実際には3人いるわけですからね笑
異世界転生する人が多いから()そういうケースもあるんじゃないかと思いました。

こちらのサイトでリクエストをいただいたので、番外編を本日よりアップし始めました。
もし、こういったエピソードが読んでみたい、などありましたら、リクエストいただければ幸いです(*^^*)

解除
祐
2024.08.20

モブ貴族「なぁ知ってるか?王妃様がテンセイシャ?とかこの世界はゲーム?って作り話の世界とか世迷い言を言ってるらしい」

ってならないのが不思議な感想

お茶会だからカトラリーメイドとか聴こえてる筈なのにwww

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
2024.08.20 陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中

感想ありがとうございます。

本編でもちらりと触れていますが、国王と息子たちにしか話していないんですね。
従者には基本知られていません。

王族の話に聞き耳を立ててはいけないことになっているので、基本距離を空けた位置に立っています。
手を上げたり、ベルを鳴らすと近寄ってくる感じですね。
お茶会は主人公と王妃さまだけがテーブルにいる感じです。

解除
海月お嬢様
2024.08.19 海月お嬢様

おぉー
良かった!!
楽しく読ませていただきました(*´꒳`*)
番外編とか。。。
もっといゃこらしてるの見たいー( ͡° ͜ʖ ͡°)

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
2024.08.20 陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中

感想ありがとうございます。

特に考えていないのですが、どういうシチュエーションや展開をご希望でしょうか?

解除

あなたにおすすめの小説

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

裏切られたあなたにもう二度と恋はしない

たろ
恋愛
優しい王子様。あなたに恋をした。 あなたに相応しくあろうと努力をした。 あなたの婚約者に選ばれてわたしは幸せでした。 なのにあなたは美しい聖女様に恋をした。 そして聖女様はわたしを嵌めた。 わたしは地下牢に入れられて殿下の命令で騎士達に犯されて死んでしまう。 大好きだったお父様にも見捨てられ、愛する殿下にも嫌われ酷い仕打ちを受けて身と心もボロボロになり死んでいった。 その時の記憶を忘れてわたしは生まれ変わった。 知らずにわたしはまた王子様に恋をする。

傷物扱いされていても私はあなたと結婚したい

しゃーりん
恋愛
アニオン王国の公爵令嬢ユラは一年間だけ隣国キャロル王国に留学に来ていた。 ある日、呼び出された部屋で待っていると体調がおかしくなる。 飲み物に媚薬が入っていた。 たまたま入ってきた人に助けてもらうが…ユラが傷物だと学園に張り紙がされた。 助けてくれた人は婚約者がいる人だった。 しかし、ユラを傷物と笑う婚約者に失望し婚約を解消した。 傷物扱いされるユラと彼女が気になっていたアレンのお話です。

【完結】記憶を失くした旦那さま

山葵
恋愛
副騎士団長として働く旦那さまが部下を庇い頭を打ってしまう。 目が覚めた時には、私との結婚生活も全て忘れていた。 彼は愛しているのはリターナだと言った。 そんな時、離縁したリターナさんが戻って来たと知らせが来る…。

俺が乳首痴漢におとされるまで

ねこみ
BL
※この作品は痴漢行為を推奨するためのものではありません。痴漢は立派な犯罪です。こういった行為をすればすぐバレますし捕まります。以上を注意して読みたいかただけお願いします。 <あらすじ> 通勤電車時間に何度もしつこく乳首を責められ、どんどん快感の波へと飲まれていくサラリーマンの物語。 完結にしていますが、痴漢の正体や主人公との関係などここでは記載していません。なのでその部分は中途半端なまま終わります。今の所続編を考えていないので完結にしています。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

まさか、こんな事になるとは思ってもいなかった

あとさん♪
恋愛
 学園の卒業記念パーティでその断罪は行われた。  王孫殿下自ら婚約者を断罪し、婚約者である公爵令嬢は地下牢へ移されて——  だがその断罪は国王陛下にとって寝耳に水の出来事だった。彼は怒り、孫である王孫を改めて断罪する。関係者を集めた中で。  誰もが思った。『まさか、こんな事になるなんて』と。  この事件をきっかけに歴史は動いた。  無血革命が起こり、国名が変わった。  平和な時代になり、ひとりの女性が70年前の真実に近づく。 ※R15は保険。 ※設定はゆるんゆるん。 ※異世界のなんちゃってだとお心にお留め置き下さいませm(_ _)m ※本編はオマケ込みで全24話 ※番外編『フォーサイス公爵の走馬灯』(全5話) ※『ジョン、という人』(全1話) ※『乙女ゲーム“この恋をアナタと”の真実』(全2話) ※↑蛇足回2021,6,23加筆修正 ※外伝『真か偽か』(全1話) ※小説家になろうにも投稿しております。

ヤリチン無口な親友がとにかくすごい

A奈
BL
 【無口ノンケ×わんこ系ゲイ】  ゲイである翔太は、生まれてこの方彼氏のいない寂しさをディルドで紛らわしていたが、遂にそれも限界がきた。  どうしても生身の男とセックスしたい──そんな思いでゲイ専用のデリヘルで働き始めることになったが、最初の客はまさかのノンケの親友で…… ※R18手慣らし短編です。エロはぬるい上に短いです。 ※デリヘルについては詳しくないので設定緩めです。 ※受けが関西弁ですが、作者は関東出身なので間違いがあれば教えて頂けると助かります。 ⭐︎2023/10/10 番外編追加しました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。