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第26話 楽しいお茶会
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「あら、でもラーバント令嬢は、わたくしたちとは少し違ってよ?わたくしたちと違って順調そうでいらっしゃるわ。」
「わたくし、美味しいケーキのお店を聞かれましたわ。仲が良くていらっしゃるのね。」
「え?あ、あはははは……。」
この方たちを前に、なんと言って答えるのが正解なのかがわからない。
「でも、できればお友だちになりたいわ。
いかがかしら?ラーバント令嬢。」
高位貴族の誘いなんて、断れる筈もなかった。私は放課後、送ってくださるというアドリアン王子の誘いを断って、イェールランド令嬢たちとデコレーション素材を買いに、王都へと繰り出すことになったのだった。
「わあ……!凄い……!素敵……!」
「本当、とてもきれいね……!」
店に入るなり皆が感嘆の声を漏らす。
アイシングやデコレーション素材ばかりを集めたというお店は、スライスされたアーモンドや、小さなチョコレートなどが量り売りされていて、見ているだけでも楽しかった。
「目移りしてしまいますわね。」
「これを使ってクッキーを作るのが楽しみですわ!どれにいたしましょうかしら。」
「ラーバント令嬢はどれにいたします?」
「そうですね、私は……。」
みな銘々に思い思いの品を購入し、イェールランド令嬢たちの馬車で、スヴェンソン侯爵令嬢の邸宅へと向かったのだった。
「さあ!はじめますわよ!」
スヴェンソン令嬢専用の作業場をお借りして、皆でクッキーを作った。
「そのデコレーション素敵ですわね!」
「本当ですわ、ラーバント令嬢はとてもセンスがおありですのね。」
「そ、そうですか?えへへ……。」
ラッピングは得意なほうだと自分でも思ってはいたけど、実はデコレーションが得意だとは自分でも知らなかった。我ながらとてもかわいくデコレーション出来たと思うの。
「せっかくですし、味見しませんこと?」
「いいですわね、お父さまがくださったお土産の紅茶がありますの。
このままお茶会をいたしましょう!」
というスヴェンソン令嬢の言葉で、焼き立てのクッキーでお茶会をすることになった。
クッキーを作っている時も思ったけど、令嬢たちはみんな年相応というか、可愛らしい方たちばかりだった。
いつもハーネット令嬢に詰め寄っている、おっかないところしか知らなかった私としては、印象がガラッと変わる出来事だった。
「皆さま、婚約者とはどうなさるおつもりですの?このまま婚約されるおつもりですか?
わたくし、実は婚約破棄したいと、かねてより思っているのですわ。」
と、突然そこに、アウグスタント令嬢がぶっこんできて、私は思わず紅茶を吹き出しそうになってむせてしまった。
「まあ……。アウグスタント令嬢もですの?
実はわたくしも……。」
と、イェールランド令嬢までもが、そんなことを言い出した。
「まあ、イェールランド令嬢もですの?」
「ええ。幼き頃よりお慕いしていた方が他国にいらしたのですが、将来の国母に選ばれたからにはと、諦めていたのですが……。」
「それで?それで?」
「長年文通しておりまして、現状をお伝えしましたところ、婚約破棄して自分のところに来れないかとおっしゃってくださって……。」
両手で頬を挟んで、ポッと頬を染めながらそう言うイェールランド令嬢は、女性から見ても大変愛らしかった。
「まあ!素敵!実はわたくしも、幼馴染の従者のことがずっと好きでしたの!
ですが彼は爵位が低くて……。
けれどわたくしの現状を知って、先日駆け落ちしないかと告白してくれたのですわ。」
アインズゴーン令嬢の言葉に次々と、
「まあ!まあ!駆け落ち!
いいじゃありませんの!
わたくしも実は……。」
話を聞けば、全員心に決めた相手がいたものの、貴族令嬢の義務としての結婚があった為、諦めていたのだという。
「……愛することは出来なくても、お互い思いやれたらと思っておりましたけれど、あの有り様でしょう?わたくしがこれ以上心を砕いても、あの方の目は覚めないでしょうし。」
「好きな相手を諦めさせられて、無理やり婚約させられたのにあれでは、本当に腹も立つというものですわよね。自分たちだけが好きな相手と添い遂げようだなんて。」
「何が真実の愛かしらね。わたくしたちからそれを奪っておきながら。──嫉妬?
冗談じゃありませんわ。
呆れているだけですのよ。」
「わたくし、卒業を前に、駆け落ちの準備をいたしますわ。あの者たちに一泡吹かせてやれないのが残念ですけれど、これ以上関わりたくありませんもの。」
なんとまあ。
「ラーバント令嬢は、幸せになって下さいましね?あの者にこれ以上好き勝手させるわけには参りませんもの。国が傾きますわ。」
ギュッと手を握られて、懇願される。
「そうだわ、アデル嬢と呼ばせていただいてもよろしくて?わたくしのことも名前で呼んでいただきたいわ。」
「わたくしもぜひ。」
「わたくしも。」
「こ、こちらこそ、仲良くしてください!」
恋バナとクッキー作りですっかり仲良くなった私たちは、明日もまたクッキーを作りましょうと盛り上がったのだった。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援を押していただけたら幸いです。
「わたくし、美味しいケーキのお店を聞かれましたわ。仲が良くていらっしゃるのね。」
「え?あ、あはははは……。」
この方たちを前に、なんと言って答えるのが正解なのかがわからない。
「でも、できればお友だちになりたいわ。
いかがかしら?ラーバント令嬢。」
高位貴族の誘いなんて、断れる筈もなかった。私は放課後、送ってくださるというアドリアン王子の誘いを断って、イェールランド令嬢たちとデコレーション素材を買いに、王都へと繰り出すことになったのだった。
「わあ……!凄い……!素敵……!」
「本当、とてもきれいね……!」
店に入るなり皆が感嘆の声を漏らす。
アイシングやデコレーション素材ばかりを集めたというお店は、スライスされたアーモンドや、小さなチョコレートなどが量り売りされていて、見ているだけでも楽しかった。
「目移りしてしまいますわね。」
「これを使ってクッキーを作るのが楽しみですわ!どれにいたしましょうかしら。」
「ラーバント令嬢はどれにいたします?」
「そうですね、私は……。」
みな銘々に思い思いの品を購入し、イェールランド令嬢たちの馬車で、スヴェンソン侯爵令嬢の邸宅へと向かったのだった。
「さあ!はじめますわよ!」
スヴェンソン令嬢専用の作業場をお借りして、皆でクッキーを作った。
「そのデコレーション素敵ですわね!」
「本当ですわ、ラーバント令嬢はとてもセンスがおありですのね。」
「そ、そうですか?えへへ……。」
ラッピングは得意なほうだと自分でも思ってはいたけど、実はデコレーションが得意だとは自分でも知らなかった。我ながらとてもかわいくデコレーション出来たと思うの。
「せっかくですし、味見しませんこと?」
「いいですわね、お父さまがくださったお土産の紅茶がありますの。
このままお茶会をいたしましょう!」
というスヴェンソン令嬢の言葉で、焼き立てのクッキーでお茶会をすることになった。
クッキーを作っている時も思ったけど、令嬢たちはみんな年相応というか、可愛らしい方たちばかりだった。
いつもハーネット令嬢に詰め寄っている、おっかないところしか知らなかった私としては、印象がガラッと変わる出来事だった。
「皆さま、婚約者とはどうなさるおつもりですの?このまま婚約されるおつもりですか?
わたくし、実は婚約破棄したいと、かねてより思っているのですわ。」
と、突然そこに、アウグスタント令嬢がぶっこんできて、私は思わず紅茶を吹き出しそうになってむせてしまった。
「まあ……。アウグスタント令嬢もですの?
実はわたくしも……。」
と、イェールランド令嬢までもが、そんなことを言い出した。
「まあ、イェールランド令嬢もですの?」
「ええ。幼き頃よりお慕いしていた方が他国にいらしたのですが、将来の国母に選ばれたからにはと、諦めていたのですが……。」
「それで?それで?」
「長年文通しておりまして、現状をお伝えしましたところ、婚約破棄して自分のところに来れないかとおっしゃってくださって……。」
両手で頬を挟んで、ポッと頬を染めながらそう言うイェールランド令嬢は、女性から見ても大変愛らしかった。
「まあ!素敵!実はわたくしも、幼馴染の従者のことがずっと好きでしたの!
ですが彼は爵位が低くて……。
けれどわたくしの現状を知って、先日駆け落ちしないかと告白してくれたのですわ。」
アインズゴーン令嬢の言葉に次々と、
「まあ!まあ!駆け落ち!
いいじゃありませんの!
わたくしも実は……。」
話を聞けば、全員心に決めた相手がいたものの、貴族令嬢の義務としての結婚があった為、諦めていたのだという。
「……愛することは出来なくても、お互い思いやれたらと思っておりましたけれど、あの有り様でしょう?わたくしがこれ以上心を砕いても、あの方の目は覚めないでしょうし。」
「好きな相手を諦めさせられて、無理やり婚約させられたのにあれでは、本当に腹も立つというものですわよね。自分たちだけが好きな相手と添い遂げようだなんて。」
「何が真実の愛かしらね。わたくしたちからそれを奪っておきながら。──嫉妬?
冗談じゃありませんわ。
呆れているだけですのよ。」
「わたくし、卒業を前に、駆け落ちの準備をいたしますわ。あの者たちに一泡吹かせてやれないのが残念ですけれど、これ以上関わりたくありませんもの。」
なんとまあ。
「ラーバント令嬢は、幸せになって下さいましね?あの者にこれ以上好き勝手させるわけには参りませんもの。国が傾きますわ。」
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「そうだわ、アデル嬢と呼ばせていただいてもよろしくて?わたくしのことも名前で呼んでいただきたいわ。」
「わたくしもぜひ。」
「わたくしも。」
「こ、こちらこそ、仲良くしてください!」
恋バナとクッキー作りですっかり仲良くなった私たちは、明日もまたクッキーを作りましょうと盛り上がったのだった。
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