昨日見た夢の話をしようか〜たまに予知夢が見られる令嬢ですけど、私は聖女ではありませんよ?〜

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

文字の大きさ
上 下
23 / 44

第23話 最悪な予知

しおりを挟む
「そうか。わかった。早急に手配しよう。」
「よろしくお願いします。」
 馬車の中で予知夢の内容をアドリアン王子に伝え、対応してもらえることになった。

「それにしても、母上からは、君と出来る限りイチャイチャするように、とのお達しをされていたのだが、特に君と触れ合うことなく予知夢が見られるとはな。」

「たぶん……ですけど、私のドキドキぶりが関係しているのかと。確かにその……、くっつかれると凄くドキドキしますから、強い衝撃ですぐに予知が出来るんだと思います。」

「触れることがなくとも、君をドキドキさせられさえすれば、予知夢という形になって現れるということか。」

「あんまり心臓が持たないので、正直毎回強制的にドキドキさせられるというのもしんどいんですけど、ハーネット令嬢に勝つ為には必要なことですもんね……。」

「なんだ、それだけの為に私がこんなことをしていると、思っているのか?」
「違うんですか?」

「もちろんだ。単純に私が君に触れたい、君に好かれたいから、していることだよ。」
 アドリアン王子がニッコリと微笑む。

「そ、そうですか……。」
 そうはっきりと言われると、さすがに照れるんだけど。

「ところで、私はもう1つ、君に確認したいことがあるんだが。」
「なんでしょうか?」

「先程の話だと、君は私のことでドキドキするとのことだったが……。一緒にいるだけでもドキドキしているのかな?」
 アドリアン王子が流し目で見てくる。

「それ、聞きます?
 でも、そうですね、今は予知夢のことを考えてますし、密室に2人きりなことで、心拍数が上がっているのは確かなので……。」

「そうなのか?
 それならばこうした場合はどうだろう?」
 アドリアン王子が私の手を握る。たくましくて、かたくて、大きくて、長い指の感触。

「ちょっ……。」
 急にされると恥ずかしくて死にそう!
 でも、嫌ではなかった。

「こうして手を繋いでも、君からは何も伝わってこないな。ただ、とても暖かくて柔らかくて、私のほうがドキドキしてくるよ。」

「そ、そうですか、良かったです。」
 アドリアン王子も、私に触れて、ドキドキしてくれているという事実が嬉しい。

「君は私に触れられて、嫌ではないのか?」
 少し心配そうに、眉を下げて、そんな風にたずねてくる。その表情、ずるい。

 アドリアン王子みたいな、完璧かつ日頃は冷静な人に。まるで自分の弱みを見せるみたいな、そんな態度をされたら。ドキドキの割合が、手を握られるどころの騒ぎではない。

「不思議なことに、嫌ではないんですよね。
 もちろんドキドキはしますけど……。
 アドリアン王子が優しい人だっていうことを、知っているからかもしれません。」

「そうか。それなら嬉しいな。」
 アドリアン王子が、まるで思いのたけを伝えようとするかのように、私の手を握る力を強めてきた。恥ずかしくて顔が見れない。

「特に予知は発動しないか?」
「……このくらいだと無理みたいです。
 まだ完全に開花はしてないみたいですね。
 もっと頑張ります……。」

「頑張り過ぎるのは良くないよ?
 このままでも十分私は嬉しいんだし、無理に見なくてもいいじゃないか。」
「でもそれじゃ、負けちゃいます。」

「能力が安定していないことで、無理に見ようとすると発動しないのかも知れないな。
 それなら、こうしてみようか。」

 アドリアン王子は握った手の指を絡める、恋人繋ぎに変えた。アドリアン王子の指が、私の手の甲や指を軽く撫でてくる。これ、なんかちょっと……エッチな気がする!?

「どうかな?」
「特に発動はしないですね……。」
 私は上ずりそうな声を冷静に装う。
「そうなると、これはしても無駄かな?」

「そうですね……。私としてはもうこれ以上のドキドキは必要ないんですが……。」
「そうか?私は君をもっとドキドキさせたいのだが。」

 アドリアン王子がジッと私の目を覗き込んで、ほほ笑みながら見つめてくる。
「そっそんなっ!そんなの無理です……!」
 もうこれ以上は心臓が持たない。

「そうか。残念だが仕方ないな……。」
 なんでそんなに残念そうなの?
「では、君を自宅に送り届けるまで、手を繋いでいてもいいだろうか?」

「うーん……。それなら、まあ……。」
 こうして馬車で2人きりだとドキドキするけど、手を繋ぐだけならなんとか。

「ああ、嬉しいな。このままずっと馬車に閉じ込めておきたいくらいだ。」
「そんな物騒なこと言わないでください。」

「いっその事君を、馬車の中で監禁してしまえたらいいのにな?そうすれば誰にも邪魔されず、ずっと君といられるのに……。」
 アドリアン王子がクスリと微笑んだ。

 その時、目の前がチカチカして、予知が発動する。──な、なによ、これ……。
 それはアドリアン王子が突然私に冷たくなって、ハーネット令嬢の手を取る姿だった。

────────────────────

少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援を押していただけたら幸いです。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

気が付けば悪役令嬢

karon
ファンタジー
交通事故で死んでしまった私、赤ん坊からやり直し、小学校に入学した日に乙女ゲームの悪役令嬢になっていることを自覚する。 あきらかに勘違いのヒロインとヒロインの親友役のモブと二人ヒロインの暴走を抑えようとするが、高校の卒業式の日、とんでもないどんでん返しが。

転生ヒロインは乙女ゲームを始めなかった。

よもぎ
ファンタジー
転生ヒロインがマトモな感性してる世界と、シナリオの強制力がある世界を混ぜたらどうなるの?という疑問への自分なりのアンサーです。転生ヒロインに近い視点でお話が進みます。激しい山場はございません。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

処理中です...