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第23話 最悪な予知
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「そうか。わかった。早急に手配しよう。」
「よろしくお願いします。」
馬車の中で予知夢の内容をアドリアン王子に伝え、対応してもらえることになった。
「それにしても、母上からは、君と出来る限りイチャイチャするように、とのお達しをされていたのだが、特に君と触れ合うことなく予知夢が見られるとはな。」
「たぶん……ですけど、私のドキドキぶりが関係しているのかと。確かにその……、くっつかれると凄くドキドキしますから、強い衝撃ですぐに予知が出来るんだと思います。」
「触れることがなくとも、君をドキドキさせられさえすれば、予知夢という形になって現れるということか。」
「あんまり心臓が持たないので、正直毎回強制的にドキドキさせられるというのもしんどいんですけど、ハーネット令嬢に勝つ為には必要なことですもんね……。」
「なんだ、それだけの為に私がこんなことをしていると、思っているのか?」
「違うんですか?」
「もちろんだ。単純に私が君に触れたい、君に好かれたいから、していることだよ。」
アドリアン王子がニッコリと微笑む。
「そ、そうですか……。」
そうはっきりと言われると、さすがに照れるんだけど。
「ところで、私はもう1つ、君に確認したいことがあるんだが。」
「なんでしょうか?」
「先程の話だと、君は私のことでドキドキするとのことだったが……。一緒にいるだけでもドキドキしているのかな?」
アドリアン王子が流し目で見てくる。
「それ、聞きます?
でも、そうですね、今は予知夢のことを考えてますし、密室に2人きりなことで、心拍数が上がっているのは確かなので……。」
「そうなのか?
それならばこうした場合はどうだろう?」
アドリアン王子が私の手を握る。たくましくて、かたくて、大きくて、長い指の感触。
「ちょっ……。」
急にされると恥ずかしくて死にそう!
でも、嫌ではなかった。
「こうして手を繋いでも、君からは何も伝わってこないな。ただ、とても暖かくて柔らかくて、私のほうがドキドキしてくるよ。」
「そ、そうですか、良かったです。」
アドリアン王子も、私に触れて、ドキドキしてくれているという事実が嬉しい。
「君は私に触れられて、嫌ではないのか?」
少し心配そうに、眉を下げて、そんな風にたずねてくる。その表情、ずるい。
アドリアン王子みたいな、完璧かつ日頃は冷静な人に。まるで自分の弱みを見せるみたいな、そんな態度をされたら。ドキドキの割合が、手を握られるどころの騒ぎではない。
「不思議なことに、嫌ではないんですよね。
もちろんドキドキはしますけど……。
アドリアン王子が優しい人だっていうことを、知っているからかもしれません。」
「そうか。それなら嬉しいな。」
アドリアン王子が、まるで思いのたけを伝えようとするかのように、私の手を握る力を強めてきた。恥ずかしくて顔が見れない。
「特に予知は発動しないか?」
「……このくらいだと無理みたいです。
まだ完全に開花はしてないみたいですね。
もっと頑張ります……。」
「頑張り過ぎるのは良くないよ?
このままでも十分私は嬉しいんだし、無理に見なくてもいいじゃないか。」
「でもそれじゃ、負けちゃいます。」
「能力が安定していないことで、無理に見ようとすると発動しないのかも知れないな。
それなら、こうしてみようか。」
アドリアン王子は握った手の指を絡める、恋人繋ぎに変えた。アドリアン王子の指が、私の手の甲や指を軽く撫でてくる。これ、なんかちょっと……エッチな気がする!?
「どうかな?」
「特に発動はしないですね……。」
私は上ずりそうな声を冷静に装う。
「そうなると、これはしても無駄かな?」
「そうですね……。私としてはもうこれ以上のドキドキは必要ないんですが……。」
「そうか?私は君をもっとドキドキさせたいのだが。」
アドリアン王子がジッと私の目を覗き込んで、ほほ笑みながら見つめてくる。
「そっそんなっ!そんなの無理です……!」
もうこれ以上は心臓が持たない。
「そうか。残念だが仕方ないな……。」
なんでそんなに残念そうなの?
「では、君を自宅に送り届けるまで、手を繋いでいてもいいだろうか?」
「うーん……。それなら、まあ……。」
こうして馬車で2人きりだとドキドキするけど、手を繋ぐだけならなんとか。
「ああ、嬉しいな。このままずっと馬車に閉じ込めておきたいくらいだ。」
「そんな物騒なこと言わないでください。」
「いっその事君を、馬車の中で監禁してしまえたらいいのにな?そうすれば誰にも邪魔されず、ずっと君といられるのに……。」
アドリアン王子がクスリと微笑んだ。
その時、目の前がチカチカして、予知が発動する。──な、なによ、これ……。
それはアドリアン王子が突然私に冷たくなって、ハーネット令嬢の手を取る姿だった。
────────────────────
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「よろしくお願いします。」
馬車の中で予知夢の内容をアドリアン王子に伝え、対応してもらえることになった。
「それにしても、母上からは、君と出来る限りイチャイチャするように、とのお達しをされていたのだが、特に君と触れ合うことなく予知夢が見られるとはな。」
「たぶん……ですけど、私のドキドキぶりが関係しているのかと。確かにその……、くっつかれると凄くドキドキしますから、強い衝撃ですぐに予知が出来るんだと思います。」
「触れることがなくとも、君をドキドキさせられさえすれば、予知夢という形になって現れるということか。」
「あんまり心臓が持たないので、正直毎回強制的にドキドキさせられるというのもしんどいんですけど、ハーネット令嬢に勝つ為には必要なことですもんね……。」
「なんだ、それだけの為に私がこんなことをしていると、思っているのか?」
「違うんですか?」
「もちろんだ。単純に私が君に触れたい、君に好かれたいから、していることだよ。」
アドリアン王子がニッコリと微笑む。
「そ、そうですか……。」
そうはっきりと言われると、さすがに照れるんだけど。
「ところで、私はもう1つ、君に確認したいことがあるんだが。」
「なんでしょうか?」
「先程の話だと、君は私のことでドキドキするとのことだったが……。一緒にいるだけでもドキドキしているのかな?」
アドリアン王子が流し目で見てくる。
「それ、聞きます?
でも、そうですね、今は予知夢のことを考えてますし、密室に2人きりなことで、心拍数が上がっているのは確かなので……。」
「そうなのか?
それならばこうした場合はどうだろう?」
アドリアン王子が私の手を握る。たくましくて、かたくて、大きくて、長い指の感触。
「ちょっ……。」
急にされると恥ずかしくて死にそう!
でも、嫌ではなかった。
「こうして手を繋いでも、君からは何も伝わってこないな。ただ、とても暖かくて柔らかくて、私のほうがドキドキしてくるよ。」
「そ、そうですか、良かったです。」
アドリアン王子も、私に触れて、ドキドキしてくれているという事実が嬉しい。
「君は私に触れられて、嫌ではないのか?」
少し心配そうに、眉を下げて、そんな風にたずねてくる。その表情、ずるい。
アドリアン王子みたいな、完璧かつ日頃は冷静な人に。まるで自分の弱みを見せるみたいな、そんな態度をされたら。ドキドキの割合が、手を握られるどころの騒ぎではない。
「不思議なことに、嫌ではないんですよね。
もちろんドキドキはしますけど……。
アドリアン王子が優しい人だっていうことを、知っているからかもしれません。」
「そうか。それなら嬉しいな。」
アドリアン王子が、まるで思いのたけを伝えようとするかのように、私の手を握る力を強めてきた。恥ずかしくて顔が見れない。
「特に予知は発動しないか?」
「……このくらいだと無理みたいです。
まだ完全に開花はしてないみたいですね。
もっと頑張ります……。」
「頑張り過ぎるのは良くないよ?
このままでも十分私は嬉しいんだし、無理に見なくてもいいじゃないか。」
「でもそれじゃ、負けちゃいます。」
「能力が安定していないことで、無理に見ようとすると発動しないのかも知れないな。
それなら、こうしてみようか。」
アドリアン王子は握った手の指を絡める、恋人繋ぎに変えた。アドリアン王子の指が、私の手の甲や指を軽く撫でてくる。これ、なんかちょっと……エッチな気がする!?
「どうかな?」
「特に発動はしないですね……。」
私は上ずりそうな声を冷静に装う。
「そうなると、これはしても無駄かな?」
「そうですね……。私としてはもうこれ以上のドキドキは必要ないんですが……。」
「そうか?私は君をもっとドキドキさせたいのだが。」
アドリアン王子がジッと私の目を覗き込んで、ほほ笑みながら見つめてくる。
「そっそんなっ!そんなの無理です……!」
もうこれ以上は心臓が持たない。
「そうか。残念だが仕方ないな……。」
なんでそんなに残念そうなの?
「では、君を自宅に送り届けるまで、手を繋いでいてもいいだろうか?」
「うーん……。それなら、まあ……。」
こうして馬車で2人きりだとドキドキするけど、手を繋ぐだけならなんとか。
「ああ、嬉しいな。このままずっと馬車に閉じ込めておきたいくらいだ。」
「そんな物騒なこと言わないでください。」
「いっその事君を、馬車の中で監禁してしまえたらいいのにな?そうすれば誰にも邪魔されず、ずっと君といられるのに……。」
アドリアン王子がクスリと微笑んだ。
その時、目の前がチカチカして、予知が発動する。──な、なによ、これ……。
それはアドリアン王子が突然私に冷たくなって、ハーネット令嬢の手を取る姿だった。
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