20 / 44
第20話 ファースト……キス?
しおりを挟む
「目を閉じちゃ駄目だよ。」
そう言って、ゆっくりと顔を近付けてくるアドリアン王子。
「え?ちょ、触れないって……。」
「黙って。」
近付いてくるアドリアン王子を押し戻そうとした右手を、アドリアン王子が左手でそっと包み込むように掴んでくる。
近付いてくる顔を直視出来ない。
思わず目を閉じてしまう。──ムニッ。
ん?なんか思ってたのと違う?
てっきりキスされるのだとばかり思ったんだけど、アドリアン王子の唇が特別かたいとかじゃなければ、私の唇に触れているのは、アドリアン王子の唇以外の何かだ。
思わず目を開けると、私の唇に右手の人差し指を当てて、人差し指越しにキスしながら、じっと私の目の奥を覗き込んでいるアドリアン王子とバッチリ目があってしまう。
~~!!!~~!?☆!!!!!
こんなの、直接されるより恥ずかしい!
アドリアン王子は私から離れると、
「目を閉じたら駄目だと言ったのに。」
とクスリと笑って、
「これはお仕置きしなくちゃ駄目かな?」
と、私の右手を握っていた左手を引き寄せて、そっと私の手に口づけながら、悩ましく私を流し見てくる。
無理!こんなの無理ぃ!!!
「君……?体が光って……。」
その時だった。私の頭の中に流れ込んでくるたくさんの映像の数々。
これは……、王都?
休日にエミリアとよく行く、カフェの向かいの宝石店に、深夜泥棒が入り、宝石店の従業員に見つかって殺してしまい、宝石店に火を放って逃げた。
こんなの、見たことない。
これってまさか……。
星読みの聖女の力!?
呆然としている私に、
「どうした?」
とたずねてくるアドリアン王子。
「力が……、発動したかも知れません。」
「なにが見えたんだ?」
私はさっき見た映像をアドリアン王子に伝えた。
「わかった。さっそく警備隊に伝えよう。
どうやらうまくいったようだ。」
そう言って1人納得している。
「こっ、この為にあんな恥ずかしいことを?
私にああいうことをしたら、星読みの力が発動するからって……!」
「違うぞ?確かにそれもあるが……。
本当はもっと直接的なことをするように、母上からは言われていたんだが、さっきも言った通り、君を大切にしたかったから、私が我慢をして、折り合いをつけた結果だ。」
「ちょっ……、直接されるより、こっちのほうが、よっぽど恥ずかしいですよ!」
私は左手の拳を握りしめて主張した。
「なら、いつでも直接してもいいということかな?」
「そっ、そういうわけじゃありません!」
「わかっているさ。君が嫌がっているのは、私が嫌なのではなく、こういうことすべてが恥ずかしいからだろう?」
「当たり前ですよ!慣れてないんですから。
アド……、ミュレールさんは、こういうことに慣れてらっしゃるみたいですけど。」
「心得違いだな。私も初めてだよ?」
「絶対嘘ですっ!」
「……本当だ。こういうことをするのも、……人を好きになるのも。」
真剣な眼差しで言われて、思わずドキッとする。
「──そして、この先君以外に、したいとも思わない。」
「し、信じられません。」
信じられないと言うより、信じてしまったら、何か自分が大きく変えられそうで怖い。
「困ったな、どうしたら信じてくれる?」
本当に困った風に、眉を下げて微笑んでくる。なんて言ったらいいのだろう。
膝の上で、アドリアン王子に掴まれていないほうの左手を、ギュッと握りしめて目線をそらす。
「君は私と婚約してくれたけれど、私の本気を信じてくれていないようだ。少しずつ、信じてもらうしかないだろうね。こういうことにも、少しずつ慣れて欲しいしね。」
「な、慣れるって……。」
「何度も触れ合えば、そのうち慣れるよ。
本番までに、少しずつ君を慣らしていくから、そのつもりでいて。」
聖女の力の開放にもつながるしね、と言ってアドリアン王子が微笑む。
いつもの人をくったような笑顔だ。
さっきのでも心臓が潰れそうだったのに、いったいこの先私に何をするつもりなの!?
思わず腰が引けて後ろに下がる。
「おや。これでも君を怖がらせないように、我慢しているつもりなんだから、あんまり怖がらないで欲しいな。
──私だって傷付くんだよ?」
その顔は卑怯だわ!
いつもクールな男の人が、子犬が甘えるみたいな表情をするなんて!
これを見たことがあるのが私だけなんて!
「……怖がってはいません。
ちょっとびっくりしただけです。」
そう言うしかないじゃない。ていうか、頭撫でたい!なんか耳まで見える気がする!
なんかいいように踊らされてる気がする!
ニコニコしているアドリアン王子は、自宅に到着するまで、私の手を握ったまま離さなかったのだった。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援を押していただけたら幸いです。
そう言って、ゆっくりと顔を近付けてくるアドリアン王子。
「え?ちょ、触れないって……。」
「黙って。」
近付いてくるアドリアン王子を押し戻そうとした右手を、アドリアン王子が左手でそっと包み込むように掴んでくる。
近付いてくる顔を直視出来ない。
思わず目を閉じてしまう。──ムニッ。
ん?なんか思ってたのと違う?
てっきりキスされるのだとばかり思ったんだけど、アドリアン王子の唇が特別かたいとかじゃなければ、私の唇に触れているのは、アドリアン王子の唇以外の何かだ。
思わず目を開けると、私の唇に右手の人差し指を当てて、人差し指越しにキスしながら、じっと私の目の奥を覗き込んでいるアドリアン王子とバッチリ目があってしまう。
~~!!!~~!?☆!!!!!
こんなの、直接されるより恥ずかしい!
アドリアン王子は私から離れると、
「目を閉じたら駄目だと言ったのに。」
とクスリと笑って、
「これはお仕置きしなくちゃ駄目かな?」
と、私の右手を握っていた左手を引き寄せて、そっと私の手に口づけながら、悩ましく私を流し見てくる。
無理!こんなの無理ぃ!!!
「君……?体が光って……。」
その時だった。私の頭の中に流れ込んでくるたくさんの映像の数々。
これは……、王都?
休日にエミリアとよく行く、カフェの向かいの宝石店に、深夜泥棒が入り、宝石店の従業員に見つかって殺してしまい、宝石店に火を放って逃げた。
こんなの、見たことない。
これってまさか……。
星読みの聖女の力!?
呆然としている私に、
「どうした?」
とたずねてくるアドリアン王子。
「力が……、発動したかも知れません。」
「なにが見えたんだ?」
私はさっき見た映像をアドリアン王子に伝えた。
「わかった。さっそく警備隊に伝えよう。
どうやらうまくいったようだ。」
そう言って1人納得している。
「こっ、この為にあんな恥ずかしいことを?
私にああいうことをしたら、星読みの力が発動するからって……!」
「違うぞ?確かにそれもあるが……。
本当はもっと直接的なことをするように、母上からは言われていたんだが、さっきも言った通り、君を大切にしたかったから、私が我慢をして、折り合いをつけた結果だ。」
「ちょっ……、直接されるより、こっちのほうが、よっぽど恥ずかしいですよ!」
私は左手の拳を握りしめて主張した。
「なら、いつでも直接してもいいということかな?」
「そっ、そういうわけじゃありません!」
「わかっているさ。君が嫌がっているのは、私が嫌なのではなく、こういうことすべてが恥ずかしいからだろう?」
「当たり前ですよ!慣れてないんですから。
アド……、ミュレールさんは、こういうことに慣れてらっしゃるみたいですけど。」
「心得違いだな。私も初めてだよ?」
「絶対嘘ですっ!」
「……本当だ。こういうことをするのも、……人を好きになるのも。」
真剣な眼差しで言われて、思わずドキッとする。
「──そして、この先君以外に、したいとも思わない。」
「し、信じられません。」
信じられないと言うより、信じてしまったら、何か自分が大きく変えられそうで怖い。
「困ったな、どうしたら信じてくれる?」
本当に困った風に、眉を下げて微笑んでくる。なんて言ったらいいのだろう。
膝の上で、アドリアン王子に掴まれていないほうの左手を、ギュッと握りしめて目線をそらす。
「君は私と婚約してくれたけれど、私の本気を信じてくれていないようだ。少しずつ、信じてもらうしかないだろうね。こういうことにも、少しずつ慣れて欲しいしね。」
「な、慣れるって……。」
「何度も触れ合えば、そのうち慣れるよ。
本番までに、少しずつ君を慣らしていくから、そのつもりでいて。」
聖女の力の開放にもつながるしね、と言ってアドリアン王子が微笑む。
いつもの人をくったような笑顔だ。
さっきのでも心臓が潰れそうだったのに、いったいこの先私に何をするつもりなの!?
思わず腰が引けて後ろに下がる。
「おや。これでも君を怖がらせないように、我慢しているつもりなんだから、あんまり怖がらないで欲しいな。
──私だって傷付くんだよ?」
その顔は卑怯だわ!
いつもクールな男の人が、子犬が甘えるみたいな表情をするなんて!
これを見たことがあるのが私だけなんて!
「……怖がってはいません。
ちょっとびっくりしただけです。」
そう言うしかないじゃない。ていうか、頭撫でたい!なんか耳まで見える気がする!
なんかいいように踊らされてる気がする!
ニコニコしているアドリアン王子は、自宅に到着するまで、私の手を握ったまま離さなかったのだった。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援を押していただけたら幸いです。
460
お気に入りに追加
739
あなたにおすすめの小説
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。
だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。
それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。
王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!?
けれど、そこには……。
※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
私の婚約者は6人目の攻略対象者でした
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
王立学園の入学式。主人公のクラウディアは婚約者と共に講堂に向かっていた。
すると「きゃあ!」と、私達の行く手を阻むように、髪色がピンクの女生徒が転けた。『バターン』って効果音が聞こえてきそうな見事な転け方で。
そういえば前世、異世界を舞台にした物語のヒロインはピンク色が定番だった。
確か…入学式の日に学園で迷って攻略対象者に助けられたり、攻略対象者とぶつかって転けてしまったところを手を貸してもらったり…っていうのが定番の出会いイベントよね。
って……えっ!? ここってもしかして乙女ゲームの世界なの!?
ヒロイン登場に驚きつつも、婚約者と共に無意識に攻略対象者のフラグを折っていたクラウディア。
そんなクラウディアが幸せになる話。
※本編完結済※番外編更新中
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる