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第18話 イチャイチャしてくる王子さま
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王妃さまは私を見つめて微笑んだ。
「あなたは真剣に、アドリアンの気持ちに向き合おうとしてくれている。1人の人間として。──よくわからない?いいじゃない。あの子と真剣に恋愛をしてちょうだい。」
「王妃さま……。」
「これからあなたがすべきことは、星読みの聖女として能力を開花させることよ。」
「能力を開花させる?」
「あなたが星読みの聖女であることは間違いないの。今はまだ力が眠っているだけ。
能力が開花すれば、ゲームの記憶しかないハーネット令嬢にはたちうち出来ないわ。」
「どうすればいいんですか?」
「──アドリアンとイチャイチャなさい。」
「い、イチャイチャ!?」
「星読みの聖女の能力開花の条件は攻略対象者との接触よ。トキメキイベントをこなしていく過程で能力が開花していくの。アドリアンだって同じシリーズの攻略対象者だもの。
イチャイチャしていればそれが能力の開花につながるわ。アドリアンには私から話しておくから。せいぜいイチャつきなさいな。」
王妃さまがニッコリと微笑んでくる。
「イチャイチャって、その……どの程度のでしょうか?」
「話すかどうかは、アドリアンに任せるわ。
わかってしまったらときめかないことだってあるでしょうし。だいじょうぶよ。攻略対象者に相応しく育ててあるから。きっとあなたをときめかせてくれる筈よ。」
母親かつ、この国の王妃さま直々に、息子と堂々とイチャイチャしなさいという、トンデモ司令を受け取った私は、ただただ困惑したのだった。
翌週、私とアドリアン王子の婚約と、私が星読みの聖女であることが発表された。
長年待たれていた聖女の登場に、国中がわいたらしい。
ハーネット令嬢の父親はまだ捕まっていないから、トリスタン王太子が廃嫡されるということはなく、普通に婚約者のいない王子と聖女が婚約したというだけの状態だ。
「──さっそく言ってきたよ。」
「え?誰がですか?」
「ハーネット令嬢だよ。自分も星読みの力があるとね。母上の言ったとおりだ。」
私とアドリアン王子は、エミリアに生暖かい目で見られながら送り出されて、裏庭でランチを食べている。
「はい、あーん。」
「じ、自分で食べられますから!
それに学校!ここ学校ですから!」
サンドイッチを差し出してくるアドリアン王子に、私は真っ赤になりながらその手を押し戻そうとした。
「本来であれば、人前で、それも王族がイチャつくなんてありえないことだけれど、これは両親の許可を得てやっていることだからねえ。私は堂々と楽しませてもらうよ。」
アドリアン王子って、こういう人だったの!?常にクールで冷静な生徒会長と評判だったのに、この変貌ぶりはどうしたことか。
アドリアン王子は、私の夢はまだ前世の記憶を夢に見ているだけで、本当の能力は開花していないのだということを、王妃さまから聞かされているらしい。
それを開花させる手伝いは自分にしか出来ないと言われて、張り切ってしまっているみたい。どうやって君をその気にさせようか考えていたからちょうどいいね、とのこと。
私もまだすんなりと納得しきれていない前世の話を、アドリアン王子がこうもすんなり信用しているのは、王妃さまから前世の話を散々聞かされていたからだそう。
それは国王さまも同じで、ニェールヤンドの穀倉地帯に国軍がすぐに到着出来たのも、ソドルフィ辺境伯からの救援要請以前に、王妃さまがそれを言い当てていたからだった。
私、ハーネット令嬢、そして王妃さまは、全員同じ予言が出来ることになる。
だけど私が星読みの聖女として認められたのは、他ならぬ王妃さまによるものたった。
いずれアデル・ラーバントという少女が現れて、星読みの聖女としての能力を発揮するということを、国王さまだけは、事前に王妃さまから聞いていたのだという。
本来なら、現在マイルス公国に留学中の、アドリアン王子の弟君と結ばれれば、生まれ育ったステファモ王国に戻って、ステファモ王国の聖女になる筈だったのだとのこと。
マイルス公国の公子と結ばれれば、当然マイルス公国で暮らすことになるから、その場合マイルス公国は前例のない、聖女が2人いる状態になって、さらなる発展をするとか。
アドリアン王子が私を連れて来たのは、王妃さまにも予想外だったけれど、ステファモ王国側では、もともと私を受け入れる準備が出来ていたということね。
通常通りハーネット令嬢がハッピーエンドを迎えていれば、星姫2の世界では王妃さまが初代ヒロインとして、ゲスト出演してヒロインの結婚を祝うのだとか。
そして星姫3の世界──つまり私が、アドリアン王子の弟君と結ばれた場合、ハーネット令嬢と姉妹のように仲良くなるとか。……あの子と仲良くとか、想像も出来ないわね。
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「あなたは真剣に、アドリアンの気持ちに向き合おうとしてくれている。1人の人間として。──よくわからない?いいじゃない。あの子と真剣に恋愛をしてちょうだい。」
「王妃さま……。」
「これからあなたがすべきことは、星読みの聖女として能力を開花させることよ。」
「能力を開花させる?」
「あなたが星読みの聖女であることは間違いないの。今はまだ力が眠っているだけ。
能力が開花すれば、ゲームの記憶しかないハーネット令嬢にはたちうち出来ないわ。」
「どうすればいいんですか?」
「──アドリアンとイチャイチャなさい。」
「い、イチャイチャ!?」
「星読みの聖女の能力開花の条件は攻略対象者との接触よ。トキメキイベントをこなしていく過程で能力が開花していくの。アドリアンだって同じシリーズの攻略対象者だもの。
イチャイチャしていればそれが能力の開花につながるわ。アドリアンには私から話しておくから。せいぜいイチャつきなさいな。」
王妃さまがニッコリと微笑んでくる。
「イチャイチャって、その……どの程度のでしょうか?」
「話すかどうかは、アドリアンに任せるわ。
わかってしまったらときめかないことだってあるでしょうし。だいじょうぶよ。攻略対象者に相応しく育ててあるから。きっとあなたをときめかせてくれる筈よ。」
母親かつ、この国の王妃さま直々に、息子と堂々とイチャイチャしなさいという、トンデモ司令を受け取った私は、ただただ困惑したのだった。
翌週、私とアドリアン王子の婚約と、私が星読みの聖女であることが発表された。
長年待たれていた聖女の登場に、国中がわいたらしい。
ハーネット令嬢の父親はまだ捕まっていないから、トリスタン王太子が廃嫡されるということはなく、普通に婚約者のいない王子と聖女が婚約したというだけの状態だ。
「──さっそく言ってきたよ。」
「え?誰がですか?」
「ハーネット令嬢だよ。自分も星読みの力があるとね。母上の言ったとおりだ。」
私とアドリアン王子は、エミリアに生暖かい目で見られながら送り出されて、裏庭でランチを食べている。
「はい、あーん。」
「じ、自分で食べられますから!
それに学校!ここ学校ですから!」
サンドイッチを差し出してくるアドリアン王子に、私は真っ赤になりながらその手を押し戻そうとした。
「本来であれば、人前で、それも王族がイチャつくなんてありえないことだけれど、これは両親の許可を得てやっていることだからねえ。私は堂々と楽しませてもらうよ。」
アドリアン王子って、こういう人だったの!?常にクールで冷静な生徒会長と評判だったのに、この変貌ぶりはどうしたことか。
アドリアン王子は、私の夢はまだ前世の記憶を夢に見ているだけで、本当の能力は開花していないのだということを、王妃さまから聞かされているらしい。
それを開花させる手伝いは自分にしか出来ないと言われて、張り切ってしまっているみたい。どうやって君をその気にさせようか考えていたからちょうどいいね、とのこと。
私もまだすんなりと納得しきれていない前世の話を、アドリアン王子がこうもすんなり信用しているのは、王妃さまから前世の話を散々聞かされていたからだそう。
それは国王さまも同じで、ニェールヤンドの穀倉地帯に国軍がすぐに到着出来たのも、ソドルフィ辺境伯からの救援要請以前に、王妃さまがそれを言い当てていたからだった。
私、ハーネット令嬢、そして王妃さまは、全員同じ予言が出来ることになる。
だけど私が星読みの聖女として認められたのは、他ならぬ王妃さまによるものたった。
いずれアデル・ラーバントという少女が現れて、星読みの聖女としての能力を発揮するということを、国王さまだけは、事前に王妃さまから聞いていたのだという。
本来なら、現在マイルス公国に留学中の、アドリアン王子の弟君と結ばれれば、生まれ育ったステファモ王国に戻って、ステファモ王国の聖女になる筈だったのだとのこと。
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通常通りハーネット令嬢がハッピーエンドを迎えていれば、星姫2の世界では王妃さまが初代ヒロインとして、ゲスト出演してヒロインの結婚を祝うのだとか。
そして星姫3の世界──つまり私が、アドリアン王子の弟君と結ばれた場合、ハーネット令嬢と姉妹のように仲良くなるとか。……あの子と仲良くとか、想像も出来ないわね。
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