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第11話 え?断ってもいいの?
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「──やあ、来たね。ラーバント令嬢。」
「はい……。不本意ですが……。」
「アドリアン殿下に失礼だぞ!殿下は王子で私は侯爵令息だという認識がないのか?」
ニコニコと目を細めているアドリアン王子とは対象的に、肩を落としてハーッとため息をつく私。それを咎めるようにランベール侯爵令息が、キッと睨みつけてくる。
「学園内は対等な筈ですよね?権力を振りかざすのはやめて下さい。無礼なのはそちらのほうだわ。先日のお話は私のほうに確かに非がありましたから、謝罪も致しますけど。」
いくら対等とは言っても、王太子が廃嫡されるなんて話は、さすがに誰が聞いているかわからないところですべき話ではなかった。
だけど今のランベール侯爵令息の態度は、それをもってしても、あまりに自身とアドリアン王子の地位を主張し過ぎている。
ハーネット令嬢に傾倒し過ぎているから、私のことが気に入らないんだろうけど。
このままいくとご自分の立場もあやういって、自覚がないのかしらね?
私、理不尽に圧かけてくる人って嫌いよ。
下位貴族として、よく理不尽な目に合わされる立場の人間としては。
このままだと、ハーネット令嬢と一緒に断罪、廃嫡ルートまっしぐらなのだけれど。
助ける方法がわかっても、助けないわよ?
と思いながら睨み返す。
「そうだな、ルイ、今のは君が失礼だった。
ラーバント令嬢に謝罪するべきだ。」
「……失礼を申し上げました。
お詫びいたします。」
「謹んでお詫びを受けさせていただきます。
ランベール侯爵令息。」
貴族の間では相手がお詫びを拒否したら、非礼のあったほうが問題となる。
だからこの場合、私が受けなくてもいいんだけどね。アドリアン王子がお詫びをうながしたということは、言外にアドリアン王子が手打ちにせよと言ったということと同義だ。
同時にこの件で何かあったら、アドリアン王子が間に入ってくれるということでもあるから、今後しつこく絡まれなくもなるので、ここはお詫びを受け取るのが吉なのだ。
「それで、結論から言おう。
……ホップホッパーの襲撃は、あった。」
「本当ですか!?」
「ああ。事前にソドルフィ辺境伯に打診をおこない、騎士団を動かして貰っていたことから、被害は最小限に食い止められた。
君には礼を言うよ。」
「辺境伯より国軍に援軍依頼が入り、早々に国軍が到着したことで撃退したそうです。」
良かった。国の1/3をしめる穀倉地帯がやられたら、少なくとも今年いっぱいは、気軽にパンが食べれなくなっちゃうものね。
「もちろん君の話だけで、ソドルフィ辺境伯に騎士団を動かしてもらったわけではない。
ヨシク山の山頂の雪が、今の時期に溶けない時、ホップホッパーの襲撃が何度か発生したという記録を見つけたんだ。」
「ヨシク山の雪が……。海側からの風が冷たいと溶けないと聞いたことがあります。
つまり、海を挟んだガバムール王国の気温がいちじるしく低い、ということですね?」
「そのとおりだ。ガバムール王国の気温が下がったことで収穫期がずれ、繁殖期のホップホッパーは、ガバムール王国でじゅうぶんな食料を得ることが出来ず、我が国に海をこえて渡ってきていたということのようだ。」
アドリアン王子が手を上げて、ランベール侯爵令息が私に手紙を手渡してくる。
国王のものと思わしき、封蝋の押された正式な王家の手紙だ。
「国王陛下──父上に、ラーバント令嬢が聖女である旨を報告させていただいた。」
「聖女!?私やっぱり、聖女ってことになっちゃったんですか!?」
「不本意ながらな。」
「さっきの私の言葉を真似するように、ランベール侯爵令息がため息をついた。
「それはラーバント子爵に渡して欲しい。」
「お父さまに?」
「ああ。国王陛下より、ラーバント令嬢と私の結婚を打診する、正式な手紙だよ。」
「け、け、け……。」
「既にことは動き出している。兄上はまるでハーネット令嬢の傀儡だ。私は王族として、聖女さまを妻に迎える義務がある。」
「でも、でもでも、アドリアン王子は、私のことが別に好きじゃありませんよね!?
うちは自由恋愛を認めてもらってる家ですから、私、そんな結婚嫌です!」
と言ってしまってからハッとする。
王族の結婚の申込みは絶対だ。それを貴族の側から断ることなんて出来ない。
ましてやうちのような子爵家ごときでは。
だけどアドリアン王子は、特に気にするようすもなく、なにごとか思案しだした。
「ふむ。聖女さまは不可侵領域だ。王族と対等以上の存在であるとされている。」
え?そ、そうなの?
なら、私は自分から結婚したくありませんと言えば、断ることも出来るということ?
────────────────────
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「はい……。不本意ですが……。」
「アドリアン殿下に失礼だぞ!殿下は王子で私は侯爵令息だという認識がないのか?」
ニコニコと目を細めているアドリアン王子とは対象的に、肩を落としてハーッとため息をつく私。それを咎めるようにランベール侯爵令息が、キッと睨みつけてくる。
「学園内は対等な筈ですよね?権力を振りかざすのはやめて下さい。無礼なのはそちらのほうだわ。先日のお話は私のほうに確かに非がありましたから、謝罪も致しますけど。」
いくら対等とは言っても、王太子が廃嫡されるなんて話は、さすがに誰が聞いているかわからないところですべき話ではなかった。
だけど今のランベール侯爵令息の態度は、それをもってしても、あまりに自身とアドリアン王子の地位を主張し過ぎている。
ハーネット令嬢に傾倒し過ぎているから、私のことが気に入らないんだろうけど。
このままいくとご自分の立場もあやういって、自覚がないのかしらね?
私、理不尽に圧かけてくる人って嫌いよ。
下位貴族として、よく理不尽な目に合わされる立場の人間としては。
このままだと、ハーネット令嬢と一緒に断罪、廃嫡ルートまっしぐらなのだけれど。
助ける方法がわかっても、助けないわよ?
と思いながら睨み返す。
「そうだな、ルイ、今のは君が失礼だった。
ラーバント令嬢に謝罪するべきだ。」
「……失礼を申し上げました。
お詫びいたします。」
「謹んでお詫びを受けさせていただきます。
ランベール侯爵令息。」
貴族の間では相手がお詫びを拒否したら、非礼のあったほうが問題となる。
だからこの場合、私が受けなくてもいいんだけどね。アドリアン王子がお詫びをうながしたということは、言外にアドリアン王子が手打ちにせよと言ったということと同義だ。
同時にこの件で何かあったら、アドリアン王子が間に入ってくれるということでもあるから、今後しつこく絡まれなくもなるので、ここはお詫びを受け取るのが吉なのだ。
「それで、結論から言おう。
……ホップホッパーの襲撃は、あった。」
「本当ですか!?」
「ああ。事前にソドルフィ辺境伯に打診をおこない、騎士団を動かして貰っていたことから、被害は最小限に食い止められた。
君には礼を言うよ。」
「辺境伯より国軍に援軍依頼が入り、早々に国軍が到着したことで撃退したそうです。」
良かった。国の1/3をしめる穀倉地帯がやられたら、少なくとも今年いっぱいは、気軽にパンが食べれなくなっちゃうものね。
「もちろん君の話だけで、ソドルフィ辺境伯に騎士団を動かしてもらったわけではない。
ヨシク山の山頂の雪が、今の時期に溶けない時、ホップホッパーの襲撃が何度か発生したという記録を見つけたんだ。」
「ヨシク山の雪が……。海側からの風が冷たいと溶けないと聞いたことがあります。
つまり、海を挟んだガバムール王国の気温がいちじるしく低い、ということですね?」
「そのとおりだ。ガバムール王国の気温が下がったことで収穫期がずれ、繁殖期のホップホッパーは、ガバムール王国でじゅうぶんな食料を得ることが出来ず、我が国に海をこえて渡ってきていたということのようだ。」
アドリアン王子が手を上げて、ランベール侯爵令息が私に手紙を手渡してくる。
国王のものと思わしき、封蝋の押された正式な王家の手紙だ。
「国王陛下──父上に、ラーバント令嬢が聖女である旨を報告させていただいた。」
「聖女!?私やっぱり、聖女ってことになっちゃったんですか!?」
「不本意ながらな。」
「さっきの私の言葉を真似するように、ランベール侯爵令息がため息をついた。
「それはラーバント子爵に渡して欲しい。」
「お父さまに?」
「ああ。国王陛下より、ラーバント令嬢と私の結婚を打診する、正式な手紙だよ。」
「け、け、け……。」
「既にことは動き出している。兄上はまるでハーネット令嬢の傀儡だ。私は王族として、聖女さまを妻に迎える義務がある。」
「でも、でもでも、アドリアン王子は、私のことが別に好きじゃありませんよね!?
うちは自由恋愛を認めてもらってる家ですから、私、そんな結婚嫌です!」
と言ってしまってからハッとする。
王族の結婚の申込みは絶対だ。それを貴族の側から断ることなんて出来ない。
ましてやうちのような子爵家ごときでは。
だけどアドリアン王子は、特に気にするようすもなく、なにごとか思案しだした。
「ふむ。聖女さまは不可侵領域だ。王族と対等以上の存在であるとされている。」
え?そ、そうなの?
なら、私は自分から結婚したくありませんと言えば、断ることも出来るということ?
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