昨日見た夢の話をしようか〜たまに予知夢が見られる令嬢ですけど、私は聖女ではありませんよ?〜

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

文字の大きさ
上 下
9 / 44

第9話 こんなプロポーズ認めない

しおりを挟む
「は?」
「ふむ。それもいいな。」
「すみません、ちょっと何言ってるのかわかりません。」

「ニェールヤンドの穀倉地帯が襲われたら、君の予言が本当であると信用される。
 正直聖教会の認定だけでは弱いが、それがあれば君は正式に聖女と認められるんだ。」

「それとなんの関係が?」
「君の夢がすべて現実になるのだとして、ハーネット令嬢の目的は、私と結婚することなのだったな?」

「そうですね。彼女の目的は、殿下を手に入れること。そして、すべてのお目当ての男性を、結果として全員手に入れること、だと思います。夢の結果をかんがみるかぎり。」

「なら、彼女が現時点で1番嫌がることは何だと思う?」
「それは……。アドリアン王子と結婚出来ないということですよね?」

「そうだな。現時点で私に婚約者はいないから、その点では障害はないと言えば言える。
 だが私に婚約者がいたとしたらどうだ?」

「ハーネット令嬢がどうこう以前に、アドリアン王子とは結婚できなくなりますね。」
「そうだろうな。」

「でも、それをおっしゃるのなら、トリスタン王太子にはそもそも婚約者がいらっしゃるので、ハーネット令嬢にしてみればあまり関係がないことなのでは?」

「そうかも知れない。
 所詮は公爵令嬢と言っても臣下の娘だ。
 王族側が拒絶の意向を示せば嫁ぐことは叶わないし、その逆もまたしかりだ。」

「……?」
 アドリアン王子は何をおっしゃりたいのだろうか?さっぱり意図が読めないわ。

「──だが、それが神託の聖女であればどうだ?王族は神の意向に従わなくてはならない為、個人の感情が入り込む余地はない。王族であろうとも、神の意志には背けない。」

 アドリアン王子が私を見てニヤリと笑う。
「聖女は王族に嫁ぐもの。王族は何よりも優先して聖女を后にしなくてはならぬもの。
 これが最善であるとは思わないか?」

「???」
「わからないか?君と私が婚約してしまえばよいと言うことだ。聖女と婚約してしまえば誰であれ、覆すことは不可能だ。」

「は!?はあ!?」
「君の夢の予言通りであれば、兄上はいずれ王太子の座を追われるのだろう?」
「このままであればその筈ですね。」

「君はニェールヤンドの件で正式に聖女として認められる。その時に私が聖女を妻とし国を継ぐ。その程度の醜聞など、聖女を妻としたことですぐに払拭出来ることだろう。」

「じょ、冗談ですよね……?」
「私が冗談を言うタイプに見えるか?」
 アドリアン王子がニッコリと微笑む。
「……。見えないです……。」
 
「君と私の結婚は、神に定められた運命だ。
 先ほどの教会でも、そのようにしるしが表れただろう。そのことも父上に伝えさせていただく予定だ。」

「まさか、私の夢の話を、本気にされていらしゃるんですか!?」
「そうですよ、殿下!ありえません!
 たかが女生徒の夢で結婚などと!」

 さっきまで空気だった、ランベール侯爵令息が、さすがに間に割って入ってくる。
 お願い!もっと言って!

「週明けには結果が出るだろう。君はその結果を楽しみに待つがいい。我が国の国母となれるのだ、ご両親もさぞ喜ぶだろう。」

 その時になったら、正式に国より通達が行く、それまで内密にするように、とアドリアン王子が話す声が、頭の上を素通りする。

 国から婚約を打診された場合、貴族に断る権利はない。アドリアン王子がひと言私が欲しいと言えば、私の意思などないも等しい。
 私は頭の中が真っ白になっていた。

 アドリアン王子は帰り道の道中、約束通り聖教会支部の近くの町に立ち寄ってくれた。
 アドリアン王子の意向で、ランベール侯爵令息を馬車に残して2人っきりでだ。

 アドリアン王子と一緒にお芝居を見て、屋台で買ったものを食べつつ大道芸を見て。
 最初は緊張したけれど、あまりの楽しさにいつの間にか緊張もほどけて。

 アドリアン王子が、ただの同級生のように振る舞ってくれたことも大きかったと思う。
 クラスメートの男子生徒と、たまたま2人で遊びに来たみたいな、そんな感じ。

 買い物のお金はすべてアドリアン王子が支払ってくれた。はしゃぐ私を見て、なにが面白いのかわからないけど、アドリアン王子は終始顔を背けてこらえるように笑っていた。

 あっという間に時間が過ぎていって、私はアドリアン王子に言われたことを、帰る頃にはすっかり忘れていたのだった。

 アドリアン王子に送って貰って自宅に帰ると、お茶をして行くようお願いするお母さまにお詫びを告げて、アドリアン王子は帰って行った。服を着替えてベッドに倒れ込む。

「あー!楽しかった!焼きリンゴ、美味しかったなあ……。また食べたい……。
 お芝居も面白かった……。」

 私は楽しかった町の様子を思い出してうつらうつらしていた。今日はなんでか凄く疲れた気がする。歩き回ったからかなあ……。

 お父さまたちと夕食をいただいて、メイドに手伝って貰ってお風呂に入る。
 お風呂でもまたうつらうつらしてしまう。

 今日はほんとに忙しかったよね。アドリアン王子と聖教会支部に行って。私が聖女と判定されて。近くの町に遊びに行って。それからアドリアン王子にプロポーズをされて。 

 ……。プロポーズ!?
 そうだ、私、アドリアン王子から、結婚を申し込まれたんだった!!

 王太子でなくなるトリスタン王子の代わりに、王太子になるアドリアン王子と、聖女として結婚しろって……。プロポーズだけど、あんなのプロポーズじゃない!

 全然ロマンチックじゃないじゃない!
 私のことを好きでもなんでもない王子と結婚なんて、断固お断りよ!

────────────────────

少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援を押していただけたら幸いです。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

気が付けば悪役令嬢

karon
ファンタジー
交通事故で死んでしまった私、赤ん坊からやり直し、小学校に入学した日に乙女ゲームの悪役令嬢になっていることを自覚する。 あきらかに勘違いのヒロインとヒロインの親友役のモブと二人ヒロインの暴走を抑えようとするが、高校の卒業式の日、とんでもないどんでん返しが。

転生ヒロインは乙女ゲームを始めなかった。

よもぎ
ファンタジー
転生ヒロインがマトモな感性してる世界と、シナリオの強制力がある世界を混ぜたらどうなるの?という疑問への自分なりのアンサーです。転生ヒロインに近い視点でお話が進みます。激しい山場はございません。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

処理中です...