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第9話 こんなプロポーズ認めない
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「は?」
「ふむ。それもいいな。」
「すみません、ちょっと何言ってるのかわかりません。」
「ニェールヤンドの穀倉地帯が襲われたら、君の予言が本当であると信用される。
正直聖教会の認定だけでは弱いが、それがあれば君は正式に聖女と認められるんだ。」
「それとなんの関係が?」
「君の夢がすべて現実になるのだとして、ハーネット令嬢の目的は、私と結婚することなのだったな?」
「そうですね。彼女の目的は、殿下を手に入れること。そして、すべてのお目当ての男性を、結果として全員手に入れること、だと思います。夢の結果をかんがみるかぎり。」
「なら、彼女が現時点で1番嫌がることは何だと思う?」
「それは……。アドリアン王子と結婚出来ないということですよね?」
「そうだな。現時点で私に婚約者はいないから、その点では障害はないと言えば言える。
だが私に婚約者がいたとしたらどうだ?」
「ハーネット令嬢がどうこう以前に、アドリアン王子とは結婚できなくなりますね。」
「そうだろうな。」
「でも、それをおっしゃるのなら、トリスタン王太子にはそもそも婚約者がいらっしゃるので、ハーネット令嬢にしてみればあまり関係がないことなのでは?」
「そうかも知れない。
所詮は公爵令嬢と言っても臣下の娘だ。
王族側が拒絶の意向を示せば嫁ぐことは叶わないし、その逆もまたしかりだ。」
「……?」
アドリアン王子は何をおっしゃりたいのだろうか?さっぱり意図が読めないわ。
「──だが、それが神託の聖女であればどうだ?王族は神の意向に従わなくてはならない為、個人の感情が入り込む余地はない。王族であろうとも、神の意志には背けない。」
アドリアン王子が私を見てニヤリと笑う。
「聖女は王族に嫁ぐもの。王族は何よりも優先して聖女を后にしなくてはならぬもの。
これが最善であるとは思わないか?」
「???」
「わからないか?君と私が婚約してしまえばよいと言うことだ。聖女と婚約してしまえば誰であれ、覆すことは不可能だ。」
「は!?はあ!?」
「君の夢の予言通りであれば、兄上はいずれ王太子の座を追われるのだろう?」
「このままであればその筈ですね。」
「君はニェールヤンドの件で正式に聖女として認められる。その時に私が聖女を妻とし国を継ぐ。その程度の醜聞など、聖女を妻としたことですぐに払拭出来ることだろう。」
「じょ、冗談ですよね……?」
「私が冗談を言うタイプに見えるか?」
アドリアン王子がニッコリと微笑む。
「……。見えないです……。」
「君と私の結婚は、神に定められた運命だ。
先ほどの教会でも、そのようにしるしが表れただろう。そのことも父上に伝えさせていただく予定だ。」
「まさか、私の夢の話を、本気にされていらしゃるんですか!?」
「そうですよ、殿下!ありえません!
たかが女生徒の夢で結婚などと!」
さっきまで空気だった、ランベール侯爵令息が、さすがに間に割って入ってくる。
お願い!もっと言って!
「週明けには結果が出るだろう。君はその結果を楽しみに待つがいい。我が国の国母となれるのだ、ご両親もさぞ喜ぶだろう。」
その時になったら、正式に国より通達が行く、それまで内密にするように、とアドリアン王子が話す声が、頭の上を素通りする。
国から婚約を打診された場合、貴族に断る権利はない。アドリアン王子がひと言私が欲しいと言えば、私の意思などないも等しい。
私は頭の中が真っ白になっていた。
アドリアン王子は帰り道の道中、約束通り聖教会支部の近くの町に立ち寄ってくれた。
アドリアン王子の意向で、ランベール侯爵令息を馬車に残して2人っきりでだ。
アドリアン王子と一緒にお芝居を見て、屋台で買ったものを食べつつ大道芸を見て。
最初は緊張したけれど、あまりの楽しさにいつの間にか緊張もほどけて。
アドリアン王子が、ただの同級生のように振る舞ってくれたことも大きかったと思う。
クラスメートの男子生徒と、たまたま2人で遊びに来たみたいな、そんな感じ。
買い物のお金はすべてアドリアン王子が支払ってくれた。はしゃぐ私を見て、なにが面白いのかわからないけど、アドリアン王子は終始顔を背けてこらえるように笑っていた。
あっという間に時間が過ぎていって、私はアドリアン王子に言われたことを、帰る頃にはすっかり忘れていたのだった。
アドリアン王子に送って貰って自宅に帰ると、お茶をして行くようお願いするお母さまにお詫びを告げて、アドリアン王子は帰って行った。服を着替えてベッドに倒れ込む。
「あー!楽しかった!焼きリンゴ、美味しかったなあ……。また食べたい……。
お芝居も面白かった……。」
私は楽しかった町の様子を思い出してうつらうつらしていた。今日はなんでか凄く疲れた気がする。歩き回ったからかなあ……。
お父さまたちと夕食をいただいて、メイドに手伝って貰ってお風呂に入る。
お風呂でもまたうつらうつらしてしまう。
今日はほんとに忙しかったよね。アドリアン王子と聖教会支部に行って。私が聖女と判定されて。近くの町に遊びに行って。それからアドリアン王子にプロポーズをされて。
……。プロポーズ!?
そうだ、私、アドリアン王子から、結婚を申し込まれたんだった!!
王太子でなくなるトリスタン王子の代わりに、王太子になるアドリアン王子と、聖女として結婚しろって……。プロポーズだけど、あんなのプロポーズじゃない!
全然ロマンチックじゃないじゃない!
私のことを好きでもなんでもない王子と結婚なんて、断固お断りよ!
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援を押していただけたら幸いです。
「ふむ。それもいいな。」
「すみません、ちょっと何言ってるのかわかりません。」
「ニェールヤンドの穀倉地帯が襲われたら、君の予言が本当であると信用される。
正直聖教会の認定だけでは弱いが、それがあれば君は正式に聖女と認められるんだ。」
「それとなんの関係が?」
「君の夢がすべて現実になるのだとして、ハーネット令嬢の目的は、私と結婚することなのだったな?」
「そうですね。彼女の目的は、殿下を手に入れること。そして、すべてのお目当ての男性を、結果として全員手に入れること、だと思います。夢の結果をかんがみるかぎり。」
「なら、彼女が現時点で1番嫌がることは何だと思う?」
「それは……。アドリアン王子と結婚出来ないということですよね?」
「そうだな。現時点で私に婚約者はいないから、その点では障害はないと言えば言える。
だが私に婚約者がいたとしたらどうだ?」
「ハーネット令嬢がどうこう以前に、アドリアン王子とは結婚できなくなりますね。」
「そうだろうな。」
「でも、それをおっしゃるのなら、トリスタン王太子にはそもそも婚約者がいらっしゃるので、ハーネット令嬢にしてみればあまり関係がないことなのでは?」
「そうかも知れない。
所詮は公爵令嬢と言っても臣下の娘だ。
王族側が拒絶の意向を示せば嫁ぐことは叶わないし、その逆もまたしかりだ。」
「……?」
アドリアン王子は何をおっしゃりたいのだろうか?さっぱり意図が読めないわ。
「──だが、それが神託の聖女であればどうだ?王族は神の意向に従わなくてはならない為、個人の感情が入り込む余地はない。王族であろうとも、神の意志には背けない。」
アドリアン王子が私を見てニヤリと笑う。
「聖女は王族に嫁ぐもの。王族は何よりも優先して聖女を后にしなくてはならぬもの。
これが最善であるとは思わないか?」
「???」
「わからないか?君と私が婚約してしまえばよいと言うことだ。聖女と婚約してしまえば誰であれ、覆すことは不可能だ。」
「は!?はあ!?」
「君の夢の予言通りであれば、兄上はいずれ王太子の座を追われるのだろう?」
「このままであればその筈ですね。」
「君はニェールヤンドの件で正式に聖女として認められる。その時に私が聖女を妻とし国を継ぐ。その程度の醜聞など、聖女を妻としたことですぐに払拭出来ることだろう。」
「じょ、冗談ですよね……?」
「私が冗談を言うタイプに見えるか?」
アドリアン王子がニッコリと微笑む。
「……。見えないです……。」
「君と私の結婚は、神に定められた運命だ。
先ほどの教会でも、そのようにしるしが表れただろう。そのことも父上に伝えさせていただく予定だ。」
「まさか、私の夢の話を、本気にされていらしゃるんですか!?」
「そうですよ、殿下!ありえません!
たかが女生徒の夢で結婚などと!」
さっきまで空気だった、ランベール侯爵令息が、さすがに間に割って入ってくる。
お願い!もっと言って!
「週明けには結果が出るだろう。君はその結果を楽しみに待つがいい。我が国の国母となれるのだ、ご両親もさぞ喜ぶだろう。」
その時になったら、正式に国より通達が行く、それまで内密にするように、とアドリアン王子が話す声が、頭の上を素通りする。
国から婚約を打診された場合、貴族に断る権利はない。アドリアン王子がひと言私が欲しいと言えば、私の意思などないも等しい。
私は頭の中が真っ白になっていた。
アドリアン王子は帰り道の道中、約束通り聖教会支部の近くの町に立ち寄ってくれた。
アドリアン王子の意向で、ランベール侯爵令息を馬車に残して2人っきりでだ。
アドリアン王子と一緒にお芝居を見て、屋台で買ったものを食べつつ大道芸を見て。
最初は緊張したけれど、あまりの楽しさにいつの間にか緊張もほどけて。
アドリアン王子が、ただの同級生のように振る舞ってくれたことも大きかったと思う。
クラスメートの男子生徒と、たまたま2人で遊びに来たみたいな、そんな感じ。
買い物のお金はすべてアドリアン王子が支払ってくれた。はしゃぐ私を見て、なにが面白いのかわからないけど、アドリアン王子は終始顔を背けてこらえるように笑っていた。
あっという間に時間が過ぎていって、私はアドリアン王子に言われたことを、帰る頃にはすっかり忘れていたのだった。
アドリアン王子に送って貰って自宅に帰ると、お茶をして行くようお願いするお母さまにお詫びを告げて、アドリアン王子は帰って行った。服を着替えてベッドに倒れ込む。
「あー!楽しかった!焼きリンゴ、美味しかったなあ……。また食べたい……。
お芝居も面白かった……。」
私は楽しかった町の様子を思い出してうつらうつらしていた。今日はなんでか凄く疲れた気がする。歩き回ったからかなあ……。
お父さまたちと夕食をいただいて、メイドに手伝って貰ってお風呂に入る。
お風呂でもまたうつらうつらしてしまう。
今日はほんとに忙しかったよね。アドリアン王子と聖教会支部に行って。私が聖女と判定されて。近くの町に遊びに行って。それからアドリアン王子にプロポーズをされて。
……。プロポーズ!?
そうだ、私、アドリアン王子から、結婚を申し込まれたんだった!!
王太子でなくなるトリスタン王子の代わりに、王太子になるアドリアン王子と、聖女として結婚しろって……。プロポーズだけど、あんなのプロポーズじゃない!
全然ロマンチックじゃないじゃない!
私のことを好きでもなんでもない王子と結婚なんて、断固お断りよ!
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