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第8話 聖女判定
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ようやく光が落ち着いて目が見えるようになった頃には、私たちの周囲に、さっきまで判定していたカップルやら祭司さまたちが集まって、興味深げにこちらを見つめている。
「おめでとうございます、若いお2人を、神は祝福しているようです。
こちらをお2人に差し上げましょう。」
アミュレットのようなものを、祭司が私たち2人に差し出してくる。
「こちらを教会でお見せいただければ、いつでも結婚式がおこなえますよ。」
「いい観光土産が出来たじゃないか。
良かったな。これが欲しかったんだろ?」
アドリアン王子が、私とお揃いのアミュレットを私に見せつつそう言ってくる。
私はそれよりもパニックだった。
ア、アドリアン王子と、私が!?
運命の恋人たち!?
思わずドキドキして真っ赤になった。
「そんなに嬉しいのか。私の分もやろうか?
私が持っていても仕方がないからな。」
そう言って、自分の分のアミュレットを私に渡そうとしてくる。
色気もへったくれもない……。
ひょっとしたら、アドリアン王子が私の運命の相手なのかも!?一瞬愚かにもそう思った私の気持ちが虚しく霧散してゆく。
この人に、ほんの少しでもときめいた私が馬鹿だったわ……。アドリアン王子にとって私は、所詮はハーネット令嬢に国を混乱に陥れられるのを防ぐ為の、必要な駒のひとつ。
そこに他意の入り込む隙間など、あろうはずもないのだから。けどだからって、運命の恋人たちがペアで持っているべきものを、相手に押し付けるってどうよ。
ほら、渡した祭司さまも困惑していらっしゃるし、カップルたちも残念なものを見る目で私たちを見ているのがわからないかしら。
せっかく水晶が目の前で光ったのよ!?
このイベントに憧れのあった私は、せっかく運命のカップルが現れたことに興奮し、同時に落胆しているギャラリーに、私もまったく同意見ですと思いながらため息をついた。
そうこうしている間に魔力判定の準備が整って、私とアドリアン王子は聖教会支部の奥へと案内される。一定以上の魔力判定は、聖女の可能性もあるから人前ではしないそう。
聖女は各国に1人しか現れない重要な存在だ。そうとわかれば狙われる可能性だってあるもの。国から正式に公表されるまでは、情報秘匿かつ護衛をするのが当たり前だとか。
私は既に生徒会室でアドリアン王子によって判定を受けている身だから、数値は既にわかりきっているのだけれど、聖教会で判定された数値が正式なものになるとのこと。
聖教会支部が認めなければ、聖女にはなれないんだって。数値を判定するのは所詮魔道具なのに、これも権威主義のひとつかしら。
アドリアン王子が生徒会室で差し出してきた魔道具と、全く同じものを受け取って、先端を握ると、ぐんぐん私の魔力をすってメモリが伸びていく。
その結果を見た祭司さまが、少々お待ち下さいと言って、慌てて祭司長さまを呼びに行った。そして私の数値を見て、なにやらアドリアン王子とゴニョゴニョ話す祭司長。
「正式な通達は後日になりますが、あなたさまをこの国の星読みの聖女さまとして認める旨を王宮にお伝えいたしましょう。
おめでとうございます。」
「はあ……。ありがとうございます。」
わかりきった結果だったので、あまり驚きはしない。というか、今でも実感がわかないと言ったほうが正解かも知れない。
それでも聖女として認められたのだ。
これで私のお婿さんはよりどりみどりよ!
なにせ聖女ともなれば、王太子と結婚するのが通例だったりするくらいだからね。
まあ、本物の聖女なわけはないけれど。
帰りの馬車の中で広角の上がっている私を見て、嬉しそうだな、そんなにお腹が空いたのか、と聞いてくるアドリアン王子。
いや、お腹はたしかにすきましたけども!
来る途中に見かけた食べ物は、必ず食べて帰りたいと思ったけれども!
「違いますよ、これで結婚相手が決まるなと思っただけです。」
「──結婚相手?」
「はい。うちは貧乏なので、持参金を用意できないせいで婚約者がなかなか決まらなかったんですけど、魔力が高いとそれだけで、ある程度の需要があるものなんです。」
「ましてや聖女ともなると、ということか。
そう言えば代々の聖女は王家と婚姻を結んできたが、お前はそれを狙っているのか?」
アドリアン王子が首を傾げる。
「とんでもない!それにトリスタン王太子殿下には、アイシラ・イェールランド公爵令嬢が既にいらっしゃるではありませんか。」
私はブンブンと両手を振って否定する。
「ハーネット令嬢じゃあるまいし、それを押しのけてまでなんて考えませんし、そもそも将来の国母なんて向いてませんし。」
いやもう、王妃教育とか無理よりの無理!
「なんだ、そっちが良かったのか。
それは残念だな。」
「そっち?」
アドリアン王子は小首を傾げてイタズラっぽく微笑むと、
「私も王子なんだが?」
あと私に婚約者はいない。と言った。
────────────────────
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「おめでとうございます、若いお2人を、神は祝福しているようです。
こちらをお2人に差し上げましょう。」
アミュレットのようなものを、祭司が私たち2人に差し出してくる。
「こちらを教会でお見せいただければ、いつでも結婚式がおこなえますよ。」
「いい観光土産が出来たじゃないか。
良かったな。これが欲しかったんだろ?」
アドリアン王子が、私とお揃いのアミュレットを私に見せつつそう言ってくる。
私はそれよりもパニックだった。
ア、アドリアン王子と、私が!?
運命の恋人たち!?
思わずドキドキして真っ赤になった。
「そんなに嬉しいのか。私の分もやろうか?
私が持っていても仕方がないからな。」
そう言って、自分の分のアミュレットを私に渡そうとしてくる。
色気もへったくれもない……。
ひょっとしたら、アドリアン王子が私の運命の相手なのかも!?一瞬愚かにもそう思った私の気持ちが虚しく霧散してゆく。
この人に、ほんの少しでもときめいた私が馬鹿だったわ……。アドリアン王子にとって私は、所詮はハーネット令嬢に国を混乱に陥れられるのを防ぐ為の、必要な駒のひとつ。
そこに他意の入り込む隙間など、あろうはずもないのだから。けどだからって、運命の恋人たちがペアで持っているべきものを、相手に押し付けるってどうよ。
ほら、渡した祭司さまも困惑していらっしゃるし、カップルたちも残念なものを見る目で私たちを見ているのがわからないかしら。
せっかく水晶が目の前で光ったのよ!?
このイベントに憧れのあった私は、せっかく運命のカップルが現れたことに興奮し、同時に落胆しているギャラリーに、私もまったく同意見ですと思いながらため息をついた。
そうこうしている間に魔力判定の準備が整って、私とアドリアン王子は聖教会支部の奥へと案内される。一定以上の魔力判定は、聖女の可能性もあるから人前ではしないそう。
聖女は各国に1人しか現れない重要な存在だ。そうとわかれば狙われる可能性だってあるもの。国から正式に公表されるまでは、情報秘匿かつ護衛をするのが当たり前だとか。
私は既に生徒会室でアドリアン王子によって判定を受けている身だから、数値は既にわかりきっているのだけれど、聖教会で判定された数値が正式なものになるとのこと。
聖教会支部が認めなければ、聖女にはなれないんだって。数値を判定するのは所詮魔道具なのに、これも権威主義のひとつかしら。
アドリアン王子が生徒会室で差し出してきた魔道具と、全く同じものを受け取って、先端を握ると、ぐんぐん私の魔力をすってメモリが伸びていく。
その結果を見た祭司さまが、少々お待ち下さいと言って、慌てて祭司長さまを呼びに行った。そして私の数値を見て、なにやらアドリアン王子とゴニョゴニョ話す祭司長。
「正式な通達は後日になりますが、あなたさまをこの国の星読みの聖女さまとして認める旨を王宮にお伝えいたしましょう。
おめでとうございます。」
「はあ……。ありがとうございます。」
わかりきった結果だったので、あまり驚きはしない。というか、今でも実感がわかないと言ったほうが正解かも知れない。
それでも聖女として認められたのだ。
これで私のお婿さんはよりどりみどりよ!
なにせ聖女ともなれば、王太子と結婚するのが通例だったりするくらいだからね。
まあ、本物の聖女なわけはないけれど。
帰りの馬車の中で広角の上がっている私を見て、嬉しそうだな、そんなにお腹が空いたのか、と聞いてくるアドリアン王子。
いや、お腹はたしかにすきましたけども!
来る途中に見かけた食べ物は、必ず食べて帰りたいと思ったけれども!
「違いますよ、これで結婚相手が決まるなと思っただけです。」
「──結婚相手?」
「はい。うちは貧乏なので、持参金を用意できないせいで婚約者がなかなか決まらなかったんですけど、魔力が高いとそれだけで、ある程度の需要があるものなんです。」
「ましてや聖女ともなると、ということか。
そう言えば代々の聖女は王家と婚姻を結んできたが、お前はそれを狙っているのか?」
アドリアン王子が首を傾げる。
「とんでもない!それにトリスタン王太子殿下には、アイシラ・イェールランド公爵令嬢が既にいらっしゃるではありませんか。」
私はブンブンと両手を振って否定する。
「ハーネット令嬢じゃあるまいし、それを押しのけてまでなんて考えませんし、そもそも将来の国母なんて向いてませんし。」
いやもう、王妃教育とか無理よりの無理!
「なんだ、そっちが良かったのか。
それは残念だな。」
「そっち?」
アドリアン王子は小首を傾げてイタズラっぽく微笑むと、
「私も王子なんだが?」
あと私に婚約者はいない。と言った。
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