勇者の孫は逆チート〜ハズレスキルしか手に入れられない不遇な男の、やがて英雄?になる物語〜

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

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第6話 全属性の勇者候補①

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「……結構じめじめしてるのね。」

 ダンジョンの入り口の洞窟に入った瞬間、エリザベートが眉をひそめる。
 まあ、気持ちのいい空気とは言えないね。

「ここはしばらくすると、門番のガーゴイルが現れるから、洞窟を抜ける瞬間は気をつけてね。」

「わかったわ。」

「必ず一発は当ててね、そうすれば、経験値を吸えるから。」

 僕はエリザベートに言った。
 エリザベートもゾフィーも狩りは初めてで、まだレベル1だと言われたからだ。

 本人がレベル1かつ、魔法スキルがレベル1だと、スライムですら一発で倒せない。
 単独では薬をがぶ飲みしないと、魔法使いは狩りにならないのだ。

 レベルが上がればHPもMPも全回復するのだけど。最初の頃のレベル上げが、魔法使いは辛いのだ。
 だから必ずパーティーを組む。

「ええ、ありがとう。」

 洞窟を抜け、地面がなだらかになったところで、壁の燭台が、ぼっ、ぼっ、と音を立てて、順番に火がついていく。

 そして火がすべてともった瞬間、天井近くの壁にとまっていた、石の魔物たちが一斉に動き出した。

「──風の刃ウインドカッター!!
 ──炎の礫ファイアーボール!!」

 エリザベートが両手からそれぞれ魔法をはなつ。同時はかっこいいなあ!
 さすが複数属性持ちなだけのことはある。

 だけどやっぱりまだ火力がたりなくて、ガーゴイルを一撃で倒すには至らなかった。

「──聖なる斬撃ホーリーブレイク!!」

 ゾフィーも攻撃をしかけるが、やはり一撃で倒すには至らなかった。

「──混ざり合う破壊者ミックスデストロイヤー!!」

 エリザベートとゾフィーが攻撃した魔物を、アリシアが一撃で一度にほふる。

「ア、アリシア、あなた、その力って……。
 ──まさか、剣技に複数の魔法を乗せているの?」

 ゾフィーが驚いた眼差しでアリシアを見つめている。

「えっと、そうですね。
 いくつかの魔法を、剣の攻撃時に加える攻撃方法です。」

「ち、ちなみに、アリシアの〈天恵〉で与えられたスキルを聞いてもいいかしら?」

「ええと……。〈火魔法レベル1〉、〈水魔法レベル1〉、〈風魔法レベル1〉、〈雷魔法レベル1〉、〈土魔法レベル1〉、〈聖魔法レベル1〉、〈闇魔法レベル1〉、〈剣聖〉でした。
 そこに幸運10倍が加わりました。」

「「「全属性!?」」」

 思わず俺たちの声が揃う。

「まるで建国の英雄騎士の再来だわ……。
 ──勇者よ、そのスキル。」

「マジェスティアラン学園に入ったら、目をつけられる危険があるわね……。」

 まったくだな。
 きっと貴族たちからの、嫉妬や、やっかみの対象になること間違いない。

 僕はまだ公爵家ということと、お祖父様の存在があるから、それでも絡んでくる人間はいるだろうけど、もしそんなスキルがあったとしても、アリシアほどじゃあないと思う。

 本来なら、僕に付いて生まれてくることを望まれていたスキルたちだ。
 僕についていたとしても、そこまでおかしいとは思われないけど、アリシアはただの平民だからな。

 それに最初から複数の魔法を1つの攻撃で使うなんてこと、出来るもんじゃないのだ。
 これも剣聖のスキルのおかげなんだろうけど、ほんとにチートだなあ。

「そ、そうなんですか?」

 目をつけられる、という言葉に恐れをなすアリシア。

「大丈夫よ、心配しなくても、私たちがそばについているから。」

「一緒のクラスになれるよう、学園にお願いしてみない?
 心配だわ、アリシアとクラスが離れるの。
 別のクラスじゃ、ずっとついてるなんて無理だもの。」

「そうね。
 頼んでみる価値はありそうね……。」

 ゾフィーとエリザベートが、2人きりで何やらヒソヒソと話し合っている。

「あ!スクロール、ドロップしましたよ!
 みんなで拾いましょう!」

 アリシアがすべてのガーゴイルを一撃で倒したので、足元にたくさんのスクロールが散らばっていた。

「そうね!買い食いの予算がこれで変わるもの、全部拾わなくちゃね!」

 僕たちは手分けしてスクロールを拾った。
 ガーゴイルの落とすものだから期待してなかったんだけど、1つだけ濃い赤のスクロールを発見した。

「これは高く売れそうね!」

「みんなで山分けしましょうね!」

 僕はスキル定着確定の、濃い紫のスクロールが欲しいです……。

 ガーゴイルの守っていた扉をあけて奥に入る。痺れ粘液を出すタイプのスライムたちが、ピョンピョンとはねていた。

「ここは僕にやらせてくれない?
 さっき一撃も当てられなかったしさ。」

「ええ、構わないわよ。」

「ありがとう!
 ──速回転斬りワールフラッシュ!!」

 飛んでくる痺れスライムたちを一網打尽にする。ボトボトとアイテムをドロップし、その中に謎の液体も3つあった。

「こ、これ、僕が貰ってもいいかな……?
 謎の液体なんだけど……。」

「別に構わないわよ?
 そんなのまともに売れないし。」

「ありがとう!
 僕は無限に入るマジックバッグを持っているから、ドロップ品はいったん、僕がまとめてあずかろうか?」

「そんなの持ってるの?
 じゃあお願いしようかしら。」

「うん、誕生日に貰ったんだ。」

「いいわね!私も欲しいな。」

 みんなが自分のバッグにしまっていたスクロールや、スライムが落としたアイテムを拾って渡してくれる。僕はそれをマジックバッグの中にしまった。

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