勇者の孫は逆チート〜ハズレスキルしか手に入れられない不遇な男の、やがて英雄?になる物語〜

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

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第5話 クールなメイド、サラ②

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 ほんとはコックス防具店でアリシアの防具を注文したら、単独でダンジョンにこもろうと思っていたのだけど、ふと、思ったのだ。

 アリシアの幸運10倍があれば、一緒に狩ることで、かなりいいスキルをドロップしやすくなるんじゃないか?と。

 完全に他力本願だけど、一度試してみる価値はある。
 単独でダンジョンに行くのを取りやめて、今日という日を楽しみにしていたのだ。

 レベルの記載のあるスキルは、自分自身のレベルが10上がるごとに、1レベル上がる仕組みなのだ。

 いいスキルを手に入れる前にどんどんレベルアップしてしまったら、先々そのスキルを育てるのが困難になってくるからね。

 おまけに魔法のスキルがあると、その分知性やMPが上がりやすくなる。
 お祖父様やお祖母様みたくカンスト出来るわけはないんだし、早めにいいスキルを手に入れるにこしたことはないのだ。

 僕は食事を終えて部屋に戻り、外出着に着替え、防具を身に着け、イグナイトスティールを携えて、いざ出発だ!

「──お待たせ!」

「私たちも今来たばかりよ。」

「パーティーで狩りなんて、初めてのことで楽しみです!」

「ええ、私たちもよ。
 今日はよろしくね。」

 中央広場の大木の下に集った、僕と、アリシアと、バイエルン姉妹が挨拶をかわす。

「どこのダンジョンに行くつもりなの?」

「初心者向けと教えて貰ったダンジョンに行く予定です。最下層にはサイクロプスが出るところです。」

「レアなスキルやスクロールを落とす可能性のある魔物がたくさんいるからね。
 アリシアはこの間そこで、幸運10倍のスクロールをドロップしたんだよ。」

「幸運10倍ですって!?」

「レア中のレアじゃないの!」

「……運が良かったんです。」

 アリシアはえへへ、と頭の後ろに手を当ててはにかむ。

「いいスクロールをドロップしたら、たっぷりお小遣いが稼げそうね!」

「私たち、あんまりお小遣いを貰えていないから、ダンジョンで稼ごうと思っていたところなのよ!」

 貴族の令息令嬢とはいえども、自分の自由に使えるお金を与えて貰える子どもは限られている。

 夜会用の礼服だとか、髪飾りだとか、必要なところにはお金をかけてくれるけれど、それ以外にはお金をかけない親も多い。

 爵位はあっても、領地にお金があるかどうかはまた別の話だからだ。
 商工会に所属している、事業を営む男爵の子息のほうがお金を持っている、なんてことも珍しくないのだ。

 ……まあ、それでも、王家をのぞけば、ベルチェノワクロイス王国で、うちに勝る資産を持ってる貴族はいないんだけどさ。

 稼ぎのある下位貴族の令息が、上位貴族の令嬢を妻にする、なんていう政略結婚が、貴族の間ではよくおこなわれている。

 その点で言うと、バイエルン伯爵家は、貧乏という程ではないけれど、お金がありあまっているほうではない。

 そこに来てこの2人の美貌だ。マジェスティアラン学園に入ったら、成金貴族からの婚姻の申込みが殺到するだろうなあ。

 バイエルン伯爵は清貧をよしとする人だから、お金に目がくらんで娘を売り渡すような真似をする人ではないけどさ。

「お金を手に入れたら、私、買い食いというものをしてみたいの!」

「子どもの頃からの憧れだったものね、私も楽しみだわ。」

 エリザベートの言葉に、ゾフィーが手のひらを胸の前で合わせてうなずく。

「わ……私もしてみたいです……。」

「アリシアも?」

「自由になるお金とか、なかったので……。
 うちは貧乏だから……。」

 恥ずかしそうにしながらも、アリシアも楽しみから頬が紅潮している。

「そうね、じゃあ、今日のダンジョン探索を終えたら、みんなで町に買い食いに出ましょうか!」

「楽しみね!頑張りましょうね!」

「はい!」

 エリザベート、ゾフィー、アリシアが盛り上がっている。女子だけの会話って、なんか入りにくいな……。

「マクシミリアンも、もちろん一緒に来るでしょう?」

「ぼ、僕?僕も行っていいの?」

「もちろんよ。」

「当たり前じゃない、パーティーの仲間じゃないの。」

「一緒に行きましょう!マクシミリアン!」

 うわあ……。めちゃくちゃ楽しみだ。
 僕たちは歩きながら、アリシアと出会ったダンジョンへと向かった。

────────────────────
 マクシミリアン・スワロスウェイカー
 15歳
 男
 人間族
 レベル 12
 HP 157
 MP 123
 攻撃力 75
 防御力 61
 俊敏性 54
 知力 84
 称号 
 魔法
 スキル 勃起不可 逆剥けが治る 足元から5ミリ浮く モテる(猫限定) 目薬を外さない 美味しいお茶を淹れる 体臭が消せる 裸に見える 雨予報(15秒前) カツラを見抜ける 塩が見つかる 上手に嘘がつける 快便になる 他人の才能の芽が見える
────────────────────

 まだ冒険を続けますか?
 ▷はい
  いいえ

────────────────────

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