勇者の孫は逆チート〜ハズレスキルしか手に入れられない不遇な男の、やがて英雄?になる物語〜

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

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第2話 イグナイトスティールの必殺技③

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「……あーもー、じれってえなあ。」
 そう言うと、イグナイトスティールは、僕の体を突然操り出した。

「ちょ、ちょっと……!!」

 ──鉤爪と食らいつく顎ジャバウォック(アギト)
 イグナイトスティールが、勝手に必殺技を繰り出してくる。

 放たれた斬撃が氷属性のドラゴンのような姿へと変貌し、一気に残るゴブリン7体と、スライム12をほふってしまった。

「なんで倒しちゃうんだよー!!」

「だからこんなとこ早く抜けようっつってるだろ。」

 文句を言う僕に悪びれもせず、イグナイトスティールが答える。それと同時に神の福音の音がした。

 レベルが4になりました。
 HPが3上がりました。
 MPが3上がりました。
 攻撃力が1上がりました。
 防御力が2上がりました。
 俊敏性が2上がりました。
 知力が3上がりました。
 スキル、〈モテる(猫限定)〉を習得しました。

 レベルが5になりました。
 HPが4上がりました。
 MPが5上がりました。
 攻撃力が2上がりました。
 防御力が1上がりました。
 俊敏性が3上がりました。
 知力が2上がりました。
 スキル、〈目薬を外さない〉を習得しました。

 レベルが6になりました。
 HPが3上がりました。
 MPが5上がりました。
 攻撃力が3上がりました。
 防御力が2上がりました。
 俊敏性が1上がりました。
 知力が3上がりました。
 スキル、〈美味しいお茶を淹れる〉を習得しました。

 レベルが7になりました。
 HPが3上がりました。
 MPが3上がりました。
 攻撃力が3上がりました。
 防御力が2上がりました。
 俊敏性が1上がりました。
 知力が2上がりました。
 スキル、〈体臭が消せる〉を習得しました。

「……今日はもう帰ろう。
 さすがに疲れたや。」

「マジかよ、せっかく倒したってのに。」

「お前が倒しちゃうからだろ……。」

 レベルアップの恩恵で体力は全回復してるのだけれど、この数のゴブリンとスライムを同時に相手にするのは肝が冷えた。

 あと、やはりまるで使えないスキルを手に入れたことに、心が疲弊した。
 家に帰って、いますぐゆっくり癒やされたかった。

 僕は誕生日の贈り物で祖父母から貰った、容量無限大のマジックバッグにドロップ品を詰め込みながら、はー、とため息をついた。

 ゴブリンやスライムからも、弱い武器や、スキル定着スクロールなどがドロップする筈なのだけど、今日の戦果はさっき倒したスライムと合わせても、すべて素材ばかりで、唯一ゴブリンのこん棒が1つ落ちていたのみだった。

 今日のステータス合計は、結果こうなった。
 ────────────────────
 マクシミリアン・スワロスウェイカー
 15歳
 男
 人間族
 レベル 7
 HP 138
 MP 104
 攻撃力 65
 防御力 56
 俊敏性 44
 知力 74
 称号 
 魔法
 スキル 勃起不可 逆剥けが治る 足元から5ミリ浮く モテる(猫限定) 目薬を外さない 美味しいお茶を淹れる 体臭が消せる ────────────────────

 ──僕は猫が好きだ。大好きだ。
 なのに僕の為に飼い始めた猫である、ペットのスワロフスキーは、僕にまったくといっていい程懐かないのである。

 僕は〈モテる(猫限定)〉を使ってみた。
 普段そっけない我が家の愛猫、スワロフスキーが、僕にスリスリと体をすりよせ、甘えるように、にゃあ~んと鳴いて、ウルウルしたお目々で見つめてくるではないか。

 こんなことはスワロフスキーを飼い始めて初めての出来事だ。日頃は母と祖母の膝の上にしか乗らないというのに、僕の膝の上に無理やり乗ろうとしてくる。

 あああああ!!フカフカの体毛があぁ!
 柔らかな肉球が僕の手に触れるうぅ!!
 可ン愛ィイイイィ!!!

 愛おしさがあふれて止まらない。
 思わず僕の目もウルウルしてくる。
 猫ってなんでこんなに可愛いの?

 地上の生き物全部の中で一番可愛くね?
 人間はすべからく全部、猫の下僕でいいと思う。──ってか、既に僕は生まれた時から猫の下僕だと思う。

「──こんなスキル、使えない!
 僕は、僕は認めないからなあ!!」

 僕はスワロフスキーの腹に顔を埋めて、猫吸いを思う存分堪能しながら叫んだ。

 「──スキル、存分に堪能してんじゃねーか……。」

 イグナイトスティールの呆れたような声が聞こえた気がしたけれど、僕はモフモフに夢中で、まったく耳に入っていなかった。

 まだ冒険を続けますか?
 ▷はい
  いいえ

────────────────────

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