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第123話 コボルトの店の椅子とテーブル②

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 俺は馬車に乗って城下町へと向かった。
 クリーニング工房長のメッペンさんたちとも、そこで待ち合わせの予定なのだ。メッペンさんたちとの待ち合わせまではまだ時間があるので、先にコボルトの店の建築状況を確認がてら、大工さんたちに差し入れをする。
 普段は人を雇ってお願いをしているが、俺が行く時は直接持っていくことにしている。

 事前にミーティアで、俺が行くことを、差し入れをお願いしている店にも報告済みだ。
 ──かなり形が出来てきたな。
 もともと吹き抜けの、背の高い建物だったのを、改装ついでに3階建てに変えて貰ってある。1階がコボルトの伝統を売る店で、2階がコボルトの料理店、3階が従業員の更衣室と休憩所、それとネイルを施す場所と、アクセサリーの加工体験場にする予定だ。

 料理店が2階なのは、窓から覗かれずに、落ち着いて食事をして貰う為だ。
 コボルトの店ともなると、興味本位で覗いてくるような人も多いだろうからな。食器やお茶を売っているところを覗かれても、それは逆にありがたいが、食べているところをマジマジ覗かれるのは、ちょっとな。

 大工さんたちは差し入れに大喜びしてくれた。最近は警備の関係もあって、放火もおさまっているらしい。だが、まだまだ油断出来ないと、大工さんも警備兵の人たちも思っているようだった。俺もそこは同意見だ。
 帰りにルピラス商会に立ち寄る。エドモンドさんが笑顔で出迎えてくれた。

「出来てるぞ、看板。なかなかいい出来だ。
 ちゃんと王室御用達マークも彫ってある。
 最高級のケリニアという木を使っているからな、ひと目で高級店とわかる。それでいて親近感のある意匠だ。敷居が高過ぎるということもないと分かるだろう。これがあれば、かなり店の印象がよくなるだろうな。」

 エドモンドさんは嬉しそうにそう言って、布に包まれた木の看板を俺に手渡した。
「ありがとうございます。
 拝見させていただきますね。」
 布をまくると、俺がお願いしたイメージ以上の仕上がりになっているのが分かった。
 とても素晴らしい出来だった。

「よい職人さんをご紹介いただいて、ありがとうございます。本当に助かりました。」
「大したことじゃないさ。これは王宮側は表立って公言は出来ないが、国をあげての事業なんだからな。コボルトのイメージを、本来与えられる筈だったものにする為のな。俺たちに出来ることはいくらでもするさ。」
 と誇らしげに言ってくれる。

「内装はサニーが付き合いのある業者に色々と頼んでいる。一応店に入れる前に、出来を見て欲しいと頼まれているんだ。どこかで時間を取ってくれないか。まあ、サニーのことだからな、恐らく最終確認だけでいいとは思うが。依頼主の意に沿わないものだったら、作り直すことになるからな。」

「分かりました。別に今日でもいいですよ?
 まだ、メッペンさんたちとの待ち合わせまでに、だいぶ時間もありますし。」
 そういえば、サニーさんは現場にいなかったな。別の現場に行ってるのかな?
「なら、来れるかどうか聞いてみよう。」
 エドモンドさんがミーティアを飛ばす。

 すぐに返事が戻ってきて、
「ちょうど店に入れるテーブルと椅子の、木工加工職人のところにいるそうだ。
 こちらから来てくれるとありがたいそうだから、今からあちらに行こうか。俺も今日はメッペンさんたちの為に時間をあけてあるから、まだ時間があることだしな。」
 とエドモンドさんが言った。

「分かりました。さっそくいきましょう。」
 木工加工職人さんの工房は、城下町から離れたところにあるとのことで、ルピラス商会の馬車で向かうことになった。
 エドモンドさんが御者になり、俺がその隣に座る。それにしても、いい天気になって良かったな。まるでメッペンさんたちの新しい門出を祝ってくれているかのようだ。

 俺は頬にあたる心地よい風を感じながら、馬車に揺られていた。
「──ジョージさん!エドモンドさん!」
 工房の外に出て待っていた、リアル世界で最も有名な配管工似のサニーさんが、笑顔で手を振ってくれる。
「お久しぶりです、サニーさん。
 奥さまのおかげんはいかがですか?」
 俺は妊婦である奥さんの様子を聞いた。

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