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第119話 瘴気の影響③
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「ガ……、ガアッ……!!」
「エイダさん、こらえて下さい!!
瘴気になんて飲み込まれたら駄目だ!!」
先程まで戦っていたランディさんが、エイダさんを心配する様子を見て、一足先に正気に戻ったワッツさんが目を見開く。
「お前……。」
「くっ……!!おさえきれない……!!」
手遅れだったのか、エイダさんは物凄い力で、ランディさんごと前に進み出す。
「もう1本いきます!ワッツさん!エイダさんをおさえていて下さい!!」
俺はワッツさんに頼んだ。
「わ、わかったぜ!!」
「エイダさん、負けないで下さい!」
「エイダ!しっかりしろ!!エイダ!!」
ランディさんもワッツさんも、エイダさんに声をかけながら、ラグビーのスクラムのようにエイダさんを押し戻そうとしている。
「エイダさん!戻ってきて下さい!!
みんな待ってます……!!」
俺は聖水を首筋にぶっかけて、それを首全体に塗り拡げるようにしながら再び念じた。
はがれろ!どっかいっちまえ!!
「ガアッ……!!あっ!ああっ!!」
叫び声とともに、エイダさんの首から、ドロリと黒いモヤがはがれて、サーッと空に飛んで行った。そこに教会から貰った聖水を両手に握りしめて、冒険者ギルドの職員さんが戻って来た。瘴気のはがれる様子を見て、状況が飲み込めずにキョトンとしている。
「お、俺は……、いったい……?」
「エイダ!良かった!
お前は瘴気に取りつかれていたんだ!」
涙目で笑顔になるワッツさんに、
「ワッツさんもですよ?」
と冒険者ギルドの職員さんが言う。
「──お、俺も?」
ワッツさんは自分では分からないらしく、本当か?とでも言いたげに、周囲の人たちの顔をキョロキョロと見渡すが、ワッツさんと目があった人たち全員がこっくりとうなずくのを見て、ようやく納得したらしい。
「なんで俺はまだ闘技場の上にいるんだ?
試験はもう終わったはずだろう?」
不思議そうにしているエイダさんに、
「覚えてないんですか!?」
ランディさんが驚いて目を丸くする。
「瘴気に取りつかれた人間は、その間の記憶がありません。瘴気に意識が乗っ取られているのだと考えられています。」
かわりに冒険者ギルドの職員さんが、ランディさんに説明してくれる。
「……ですが、瘴気にとりつかれてる人は、病気で弱っている人と、心が浅ましい人とも言われています。あなた方は健康ですから、あなた方の心に反応したのでしょうね。」
職人ギルドの職員さんが言う。
「……そうか。俺たちのせいか……。」
エイダさんはがっくりとうなだれている。
「──エイダ!ジョージさんと、こいつが助けてくれたんだぜ!!」
ワッツさんがそう言って、笑顔でランディさんを指さした。
「──あんたが?」
問いかけるエイダさんに、ランディさんがこっくりとうなずいた。
「そうか……。すまないな、迷惑をかけた。助けてくれてありがとう。」
素直にお礼を言うエイダさんに、ランディさんが目を丸くする。
「エイダさん、ワッツさん、──俺の妹に狼藉を働いたことは覚えていますか?」
そう尋ねられて、エイダさんはキョトンとしていたが、ワッツさんは、
「俺は……、なんとなく覚えているよ。
あんたの妹に酷いことを言った。
あんなの、酒の席で男同士でする話だ。
女に直接言っちまうなんて……。」
ワッツさんの様子に、
「俺も……、言ったということか……。」
とエイダさんが言った。
「言っただけじゃなく、エイダさんは無理やりリンディさんを連れて行こうとしたんですよ、乱暴目的でね。瘴気に取りつかれていたからだと分かりましたが、もともとそういう考えがない人ならしないんだとも思います。
瘴気にとりつかれる理由を聞く限りは。」
エイダさんは俺の言葉を聞いて、ハッとしたようにリンディさんを見た。
「そうだったのか……。瘴気に取りつかれていたからは言い訳にならねえな……。
確かに酔っ払うと、俺は普段からそういうところがあるよ。俺なんかに謝られたくもないだろうが、あんたに怖い思いをさせてしまった。──本当にすまなかった。」
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「エイダさん、こらえて下さい!!
瘴気になんて飲み込まれたら駄目だ!!」
先程まで戦っていたランディさんが、エイダさんを心配する様子を見て、一足先に正気に戻ったワッツさんが目を見開く。
「お前……。」
「くっ……!!おさえきれない……!!」
手遅れだったのか、エイダさんは物凄い力で、ランディさんごと前に進み出す。
「もう1本いきます!ワッツさん!エイダさんをおさえていて下さい!!」
俺はワッツさんに頼んだ。
「わ、わかったぜ!!」
「エイダさん、負けないで下さい!」
「エイダ!しっかりしろ!!エイダ!!」
ランディさんもワッツさんも、エイダさんに声をかけながら、ラグビーのスクラムのようにエイダさんを押し戻そうとしている。
「エイダさん!戻ってきて下さい!!
みんな待ってます……!!」
俺は聖水を首筋にぶっかけて、それを首全体に塗り拡げるようにしながら再び念じた。
はがれろ!どっかいっちまえ!!
「ガアッ……!!あっ!ああっ!!」
叫び声とともに、エイダさんの首から、ドロリと黒いモヤがはがれて、サーッと空に飛んで行った。そこに教会から貰った聖水を両手に握りしめて、冒険者ギルドの職員さんが戻って来た。瘴気のはがれる様子を見て、状況が飲み込めずにキョトンとしている。
「お、俺は……、いったい……?」
「エイダ!良かった!
お前は瘴気に取りつかれていたんだ!」
涙目で笑顔になるワッツさんに、
「ワッツさんもですよ?」
と冒険者ギルドの職員さんが言う。
「──お、俺も?」
ワッツさんは自分では分からないらしく、本当か?とでも言いたげに、周囲の人たちの顔をキョロキョロと見渡すが、ワッツさんと目があった人たち全員がこっくりとうなずくのを見て、ようやく納得したらしい。
「なんで俺はまだ闘技場の上にいるんだ?
試験はもう終わったはずだろう?」
不思議そうにしているエイダさんに、
「覚えてないんですか!?」
ランディさんが驚いて目を丸くする。
「瘴気に取りつかれた人間は、その間の記憶がありません。瘴気に意識が乗っ取られているのだと考えられています。」
かわりに冒険者ギルドの職員さんが、ランディさんに説明してくれる。
「……ですが、瘴気にとりつかれてる人は、病気で弱っている人と、心が浅ましい人とも言われています。あなた方は健康ですから、あなた方の心に反応したのでしょうね。」
職人ギルドの職員さんが言う。
「……そうか。俺たちのせいか……。」
エイダさんはがっくりとうなだれている。
「──エイダ!ジョージさんと、こいつが助けてくれたんだぜ!!」
ワッツさんがそう言って、笑顔でランディさんを指さした。
「──あんたが?」
問いかけるエイダさんに、ランディさんがこっくりとうなずいた。
「そうか……。すまないな、迷惑をかけた。助けてくれてありがとう。」
素直にお礼を言うエイダさんに、ランディさんが目を丸くする。
「エイダさん、ワッツさん、──俺の妹に狼藉を働いたことは覚えていますか?」
そう尋ねられて、エイダさんはキョトンとしていたが、ワッツさんは、
「俺は……、なんとなく覚えているよ。
あんたの妹に酷いことを言った。
あんなの、酒の席で男同士でする話だ。
女に直接言っちまうなんて……。」
ワッツさんの様子に、
「俺も……、言ったということか……。」
とエイダさんが言った。
「言っただけじゃなく、エイダさんは無理やりリンディさんを連れて行こうとしたんですよ、乱暴目的でね。瘴気に取りつかれていたからだと分かりましたが、もともとそういう考えがない人ならしないんだとも思います。
瘴気にとりつかれる理由を聞く限りは。」
エイダさんは俺の言葉を聞いて、ハッとしたようにリンディさんを見た。
「そうだったのか……。瘴気に取りつかれていたからは言い訳にならねえな……。
確かに酔っ払うと、俺は普段からそういうところがあるよ。俺なんかに謝られたくもないだろうが、あんたに怖い思いをさせてしまった。──本当にすまなかった。」
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