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第118話 働く為に必要なこと④
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俺はおとなしい雰囲気のままながら、冷静に淡々と作業にあたるリンディさんを見て、問題ないと確信していた。
「わかりました。私たちは以上です。」
血まみれの姿のままで微笑んだ、ランディさんリンディさん兄妹は、実に堂々として頼もしく見えた。
「お2人はどうされますか?
死んでいれば出来るのであれば、一応腕を見たいので、俺が倒しましょうか?」
「あ、あんたが……?」
エイダさんが驚いた表情で俺を見る。
「一応、Aランクなんです、こう見えて。」
俺が冒険者ギルドの職員に頼むと、もう1頭のワイルドボアが、すぐさま闘技場に準備されることとなった。
俺は闘技場の上に上がると、マジックバッグからオリハルコン銃を取り出して、右膝をついた膝立ちの状態で構えた。
さすがにワンチャン逃げる可能性を考えると、今回は腹ばいで待ち構えるのは危険だ。
かといって安定はさせたい。出て来るところが分かっているし小さいのだから、立って構えるよりもいい。ワイルドボアが出て来てこちらに駆け寄ろうとした瞬間、──眉間に一発。ワイルドボアがグラリと倒れる。
確実に硬い眉間をぶち抜けるのが、オリハルコン弾のいいところだな。
「──さ、どうぞ。」
俺の腕前を見たワッツさんとエイダさんを始めとする、周囲で見ていた他の冒険者たちもあぜんとしていた。
ワッツさんが慌てて闘技場に上がり解体を開始し、続いてエイダさんが肉の形にする。
……うん。悪くはないんだが。言うほどじゃあないな。経験値のなさを考えても、ランディさんとリンディさんのほうがいいな。
俺は2人を雇うことにした。
「これからよろしくお願いします。ご両親にも就職の挨拶をしたいのですが……。」
未成年を預かるわけだしな。安心させてやりたい。だが2人は孤児なのだと言った。
今は冒険者用の宿で、その日暮らしをしているらしい。
「でしたら、工房の近くに従業員用の家を建てる予定なので、そちらに住みませんか?
お昼ごはんは工房から出ます。」
2人はそれを聞いて目を丸くした。
「い、家まで……?昼ごはん付きで……?
あの、その、家賃は……。」
「そうですね。福利厚生なので、月小金貨5枚を考えています。お風呂付きですよ。
家具も備え付けで用意されています。
それと給料は年俸で大金貨3枚ですね。」
その言葉にワッツさんとエイダさんが今度は目を丸くする。給料は腕を見て判断して決めると言ってあったから、2人の給料が予想外に高いと驚いたのだろう。
「お、お兄ちゃん、風呂付きの宿なんて、1日銀貨5枚だよ!?10日で元が取れちゃうよ!素泊まりでも銀貨2枚から3枚だよ?
ジョージさんの家を借りようよ!」
「食べ物を作る工房で働くのに、毎日お風呂に入らないわけにはいかないよな……。大金貨3枚も貰えるなら、毎年大金貨2枚は貯金が出来る。──家、借りさせて下さい!」
「わかりました。準備が出来たらご連絡しますね。これ、連絡用のミーティアとリーティアです。お2人にお渡ししておきます。」
「おい、ちょっと待て!なんでそいつらなんだ!生きたまま解体出来るってだけで、俺だってそこまで引けを取らないはずだぞ!」
「そうだ!それにそっちの妹なんて、俺と大差なかったじゃないか!なのになんで大金貨3枚の仕事につけるんだ!」
ワッツさんとエイダさんが吠えた。
「……職人は確かに頑固な方も多いです。
いないと仕事にならないのも事実です。ですが人に雇われる限り、雇用主が使いやすいというのも、人を雇うのに重要な部分です。
──あなた方は主張が多すぎる。
こちらのやり方にまったく従えない従業員は、代わりがきかないレベルじゃなければ雇いません。彼らは伸びしろがありますから、すぐに彼女もあなたを追い抜きますよ。」
「ワッツさんの虚偽申告については、職人ギルドからペナルティがあります。
それと、雇い主が使いにくい従業員であることも、登録しておきますので、今後は態度を改めない限りは、優先的に紹介はされないものと思って下さいね。」
職人ギルドの職員にそう言われ、ワッツさんとエイダさんはガックリと肩を落とした。
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「わかりました。私たちは以上です。」
血まみれの姿のままで微笑んだ、ランディさんリンディさん兄妹は、実に堂々として頼もしく見えた。
「お2人はどうされますか?
死んでいれば出来るのであれば、一応腕を見たいので、俺が倒しましょうか?」
「あ、あんたが……?」
エイダさんが驚いた表情で俺を見る。
「一応、Aランクなんです、こう見えて。」
俺が冒険者ギルドの職員に頼むと、もう1頭のワイルドボアが、すぐさま闘技場に準備されることとなった。
俺は闘技場の上に上がると、マジックバッグからオリハルコン銃を取り出して、右膝をついた膝立ちの状態で構えた。
さすがにワンチャン逃げる可能性を考えると、今回は腹ばいで待ち構えるのは危険だ。
かといって安定はさせたい。出て来るところが分かっているし小さいのだから、立って構えるよりもいい。ワイルドボアが出て来てこちらに駆け寄ろうとした瞬間、──眉間に一発。ワイルドボアがグラリと倒れる。
確実に硬い眉間をぶち抜けるのが、オリハルコン弾のいいところだな。
「──さ、どうぞ。」
俺の腕前を見たワッツさんとエイダさんを始めとする、周囲で見ていた他の冒険者たちもあぜんとしていた。
ワッツさんが慌てて闘技場に上がり解体を開始し、続いてエイダさんが肉の形にする。
……うん。悪くはないんだが。言うほどじゃあないな。経験値のなさを考えても、ランディさんとリンディさんのほうがいいな。
俺は2人を雇うことにした。
「これからよろしくお願いします。ご両親にも就職の挨拶をしたいのですが……。」
未成年を預かるわけだしな。安心させてやりたい。だが2人は孤児なのだと言った。
今は冒険者用の宿で、その日暮らしをしているらしい。
「でしたら、工房の近くに従業員用の家を建てる予定なので、そちらに住みませんか?
お昼ごはんは工房から出ます。」
2人はそれを聞いて目を丸くした。
「い、家まで……?昼ごはん付きで……?
あの、その、家賃は……。」
「そうですね。福利厚生なので、月小金貨5枚を考えています。お風呂付きですよ。
家具も備え付けで用意されています。
それと給料は年俸で大金貨3枚ですね。」
その言葉にワッツさんとエイダさんが今度は目を丸くする。給料は腕を見て判断して決めると言ってあったから、2人の給料が予想外に高いと驚いたのだろう。
「お、お兄ちゃん、風呂付きの宿なんて、1日銀貨5枚だよ!?10日で元が取れちゃうよ!素泊まりでも銀貨2枚から3枚だよ?
ジョージさんの家を借りようよ!」
「食べ物を作る工房で働くのに、毎日お風呂に入らないわけにはいかないよな……。大金貨3枚も貰えるなら、毎年大金貨2枚は貯金が出来る。──家、借りさせて下さい!」
「わかりました。準備が出来たらご連絡しますね。これ、連絡用のミーティアとリーティアです。お2人にお渡ししておきます。」
「おい、ちょっと待て!なんでそいつらなんだ!生きたまま解体出来るってだけで、俺だってそこまで引けを取らないはずだぞ!」
「そうだ!それにそっちの妹なんて、俺と大差なかったじゃないか!なのになんで大金貨3枚の仕事につけるんだ!」
ワッツさんとエイダさんが吠えた。
「……職人は確かに頑固な方も多いです。
いないと仕事にならないのも事実です。ですが人に雇われる限り、雇用主が使いやすいというのも、人を雇うのに重要な部分です。
──あなた方は主張が多すぎる。
こちらのやり方にまったく従えない従業員は、代わりがきかないレベルじゃなければ雇いません。彼らは伸びしろがありますから、すぐに彼女もあなたを追い抜きますよ。」
「ワッツさんの虚偽申告については、職人ギルドからペナルティがあります。
それと、雇い主が使いにくい従業員であることも、登録しておきますので、今後は態度を改めない限りは、優先的に紹介はされないものと思って下さいね。」
職人ギルドの職員にそう言われ、ワッツさんとエイダさんはガックリと肩を落とした。
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