こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

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第118話 働く為に必要なこと①

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「おい、兄ちゃん、あんたも若いから分からねえかも知れねえが、技術を見れば一目瞭然だぜ。こいつらと俺たちの違いはよ。」
「ああ、そうだな。素人にだってわかるさ。
 俺たちを雇うからには、俺たちのやり方に従って貰おう。それなら雇われてやってもいいぜ?ただし部下は最低5人だ。」

「そうだな。俺たちが直接動くこたあねえ。
 指導してやるだけでじゅうぶんだ。」
 ワッツさんとエイダさんは、見た目だけは若い俺を見て、どうもナメているようだ。
「お2人の能力がそれに見合うと判断しましたら、そうさせていただきます。指導者は欲しいところでしたので、ありがたいです。」

 俺は冷静にそう返した。
「なんだと!?俺たちを専属で雇わせてやろうってのに、その態度はなんだ!」
「俺たちはこの道1本で食ってきてる職人だぞ?職人がいなきゃやっていかれねえくせして、お前の商売が失敗してもいいのか!?」

 ワッツさんはニヤニヤした顔で、いやらしく俺に脅しをかけてきた。
 まあ、それは事実だ。経営者だけでは仕事は出来ない。技術職も一般職も、従業員がいなくては、会社はなりたたないのだ。だが職人であっても雇われる限りは、能力だけでは働くことが出来ないのもまた事実だ。

「職人ギルドからは、この4人をご紹介します。募集は1人ずつということですから、この4人の中から選んでいただいても結構ですし、他の人を紹介することも可能です。」
「選ぶまでもないだろう。俺とワッツで決まりさ。なあ、ワッツ。」

「ああ、そうだな。こんなお坊ちゃんお嬢ちゃんじゃ、俺たちとは比べ物にならんよ。」
「まあ、それは技術だとか、色々拝見させていただいてから決めさせていただきたいですので、まずは皆さんの腕を見せていただけませんか?──準備をお願いします。」

 俺は職人ギルドの職人に声をかけた。
 事前に職人の腕を確認する為の場をもうけてくれることになっているのだ。工房と違って、技術を披露できる場がまだないからな。
「冒険者ギルドに協力をあおいであります。
 同じ魔物を用意して貰っていますので、皆さん移動をお願いします。」

 職人ギルドの職員さんの言葉で、俺たちはゾロゾロと冒険者ギルドに移動した。職人ギルドの職員さんだけが、冒険者ギルドに入って行くと、すぐに出て来て、準備してくれるそうです。裏に回りましょう。と言った。
 冒険者ギルドの裏手が解体作業場になっていて、扉を開けると、中は血の臭いがした。

「よう、待ってたぜ、ランディ、うちじゃなくてよそに行くんだってな。」
 冒険者ギルドの解体職人さんが、ランディさんに笑いながら話しかける。
「まだ、決まったわけじゃ……。これから雇い主さんの試験なんです。」
 ランディさんは頭をかいた。

「お前がいるならお前で決まりさ。誰かと比べるまでもねえ。それは俺たちが保証する。
 まあ、気楽に頑張れや。」
「はい。」
 ランディさんと話す解体職人さんの言葉にカチンときたのか、ワッツさんが解体職人さんにくってかかる。

「おい、聞き捨てならねえじゃねえか。
 誰が誰に負けるって?」
「あん?誰だお前。」
「こいつの対戦相手だ!!」
「ああ、そりゃあついてなかったな。
 まあ、また他を探せよ。」
「なんだと!?」

「まあまあ、お前の実力を見せて、黙らしてやりゃあいいじゃあねえか、ワッツ。
 お前の腕はあんなガキにゃあ負けねえよ、お前の実力は俺が保証する。」
 今にも殴りかかりそうなワッツさんを、エイダさんが苦笑いしながらいさめた。

「職人てのは血の気が多い奴が多いんだ。あんまり刺激すると、俺も次は止めねえぜ?」
 冒険者ギルドのいかつい解体職人さんが怖いのか、エイダさんはランディさんの方を向いて睨んだ。
「ぼ、僕は、そんなつもりは……。」
 おとなしいランディさんは困惑している。

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