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第116話 ジャガイモのグラタンと、クルミと干しぶどうのキャロットラペ④
しおりを挟むコボルトは天候やら何やらで、作る料理が決まっているというからな。それ以外の日にしか作れないんだろう。後でレシピを書いた紙を渡しますね、と言っておいた。
アエラキはキャロットラペがいたくお気に入りで──やっぱり見た目がオムツウサギだからだろうか──いつもモリモリと食べる。
だからどちらかと言うと、この味付けはカイアの為だ。カイアは素材そのままの人参の味がちょっぴり苦手だ。カレーに入っていれば食べられるので、まったく駄目というほどじゃあないが。サラダに生の人参を刻んで入れたものはあまり食べない。だからうちではそういう風には人参は出さない。
そのうち人参も作ろうかな。市販の人参は確かに俺からしても、あまりそのままを美味しいとは思わないが、本当に素材のままで美味い人参は確かに存在するからな。
うん、そうしよう。人参作りはそんなに難しくないしな。人参掘りも楽しそうだ。
楽しくご飯を食べ終えて、みんながおしゃべりしながら洗い物や後片付けを手伝ってくれる中、俺はカイアのオシリフリフリダンスの練習に付き合うことにした。
枝のお手々を持って上げれば、なんとか立ち上がってオシリをフリフリ出来るようになってきた。だが、一人で立つのはやはり難しそうな気がする。ましてや踊るなんてのは。
「本番でも誰かが支えてくれないと、ちょっとこれ以上は厳しいかも知れないですね。」
俺の言葉にカイアがしょんぼりした。
「あら、じゃあ、そうする?」
アシュリーさんがあっけなく言う。
「え?いいんですか?」
「本番だとね、カイアちゃんの両サイドに、1番大きな年頃の子どもたちが並んで踊ることになっているのよ。ドライアド様を称える踊りをね。だからその子たちに、両サイドから手を持って、支えて貰って踊るのはどうかしら。それなら出来るんじゃない?」
「やってみるか?カイア。」
俺の言葉にカイアがコックリとうなずく。
「じゃあ、やってみましょうか。」
踊りを把握しているララさんも手伝ってくれることになり、カイアの両サイドでしゃがんだアシュリーさんとララさんに、広げた両の枝の手を持って貰って、カイアがぐっと根っこを伸ばして2本の根っこで立ち上がり、オシリをフリフリして見せる。
「いいわ!とっても上手だわ!そのまま、ゆーっくりと回転して、今度は後ろを向いて、そのままオシリをフリフリするのよ!」
アシュリーさんとララさんが、膝立ちのまま移動して、カイアの両の枝の手を持って、ゆっくりとカイアを回転させる。後ろを向いたカイアがオシリをフリフリして見せた。
パチパチパチパチ!!
円璃花が笑顔で拍手をしてくれる。
「とっても上手よ!カイアちゃん!」
「ああ、そうだな。ちゃんと出来たじゃないか、うまいぞ!カイア!」
最後にもう一回転して前を向くと、膝立ちしたままのアシュリーさんとララさんも、カイアと一緒になってオシリをフリフリした。
「これで一連の流れは終わりよ。当日は身長の近い子たちがやってくれるから、もっとうまくいくと思うわ。コボルトは小さくてもそれなりに力があるから、カイアちゃんを支えるくらいは、子どもたちでも余裕だしね。」
「そうですか。それなら安心です。良かったなカイア。これで本番もバッチリだぞ。」
カイアはアシュリーさんとララさんが手を離した途端、ダーッと俺の方に駆けてきて、俺の足に抱きついて顔を隠した。
上手に出来たのが嬉しかったのと、みんなに褒められ過ぎて恥ずかしくなっちまったらしい。カイアは照れ屋さんだからな。
俺はそっとカイアを抱き上げて、胸で顔を隠してやりながら、背中を撫でたのだった。
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