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第113話 キャメロン・ディアス丼③
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「──ずいぶん開始時間が早いんですね?」
クリーニング店の早朝出しの時間は分かるんだが、勤め人までそんなに早いとは思っていなかったな。
「夜は魔物の危険があるからな。町の近くに住んでる奴らばかりじゃない。完全に暗くなる前に家に返す必要があるんだ。冬場は日が落ちるのが早いから、そこに合わせてる。」
「そうなんですね。そのぶん朝早くから働いているということですね。」
「日が昇っている間に、出来るだけ効率よく働かないといけないからな。」
アメリカとかフィンランドみたいだなあ。
アメリカは夜真っ暗になるから、フィンランドは家族の時間をしっかり取る為、だったか。徒歩移動の時間を考えたら、そのくらい帰りが早くないと、確かに冬場は暗くなる前に帰れないな。
「では、納得いただけたら契約書にサインをしてくれ。契約魔法を使用しているから、よく読んで欲しい。分割払いの契約書も、後日こちらで作らせて貰うが、それでいいか?」
とエドモンドさんがメッペンさんにたずねながら、ルピラス商会用と俺用の、2枚の契約書をメッペンさんに手渡した。
メッペンはああ、とうなずいて、契約書に目を通して、それぞれにサインをした。
俺とルピラス商会のサインは既にしてあるので、エドモンドさんが針で指にちょっと傷を付けて、契約書に血判を押す。俺とメッペンさんも同じようにしたあとで、エドモンドさんが空中に契約書を放り投げると、契約書がボウッと青い炎に包まれて燃えて消えた。
「これで契約は成立だ。
これから宜しく頼む。」
「こちらこそ。」
こういう時に握手を交わさないのが、日本人としては不思議な感じだな。俺たちはメッペンさんたちに挨拶をして別れた。
まずは少ない種類の受付から開始して、あとはメッペンさんの人手の確保が終わって、自動熱石押し機能付き洗浄機の数が揃って、分割払いの契約を交わしたら本格始動だ。
「うちの従業員の依頼分で、ようやくうちの人権費が確保出来た程度だからな。早く工房を増やして、種類を引き受けられるようにしないとな。うちとしては儲けが出ない。」
とエドモンドさんが帰り道に言った。
店舗数600に最低1人置いたとして、月20万で1億2千万。なるほど、4割でちょうど人件費分だけになるのか。
帰りにヴァッシュさんの工房に立ち寄り、俺が自動熱石押し機能付き洗浄機を追加で14台と、エドモンドさんが店頭表示用の記録用魔道具を600台注文した。
今ヴァッシュさんの工房では、魔道具の研究開発と、武器防具の作成のみをここでやっていて、町から離れた場所で魔道具の生産をする工房があるのだという。
そこでルピラス商会からの注文を大量に受け付けているので、納期のない注文生産分であるそれらを後回しにして、記録用魔道具と自動熱石押し機能付き洗浄機の生産を先に回してくれることとなった。
この世界では、店頭ですぐに買える魔道具は少ないらしい。基本は受注生産なのだそうだ。以前武器防具も、高いものは店頭には置いてなくて、受注生産だと言っていたな。
平民が普通に購入するようなものじゃあないから、どうしてもそうなるのだろう。
明かりをつける魔道具は存在するが、実際村の人たちは油を使用しているしな。
分割払いの契約書は、ルピラス商会で後日作成しておいてくれるらしい。
出来たら連絡すると言われて、エドモンドさんに送って貰って自宅へと帰った。
いつものようにカイアが出迎えてくれて、みんなでご飯を食べて、カイアとキラプシアとお風呂に入った。
アエラキはお尻フリフリダンスがすっかり気に入って、アシュリーさんたちと練習するうち仲良くなり、今日はアシュリーさんたちと入るのだそうだ。
カイアを抱えて風呂にゆったりとつかる。
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クリーニング店の早朝出しの時間は分かるんだが、勤め人までそんなに早いとは思っていなかったな。
「夜は魔物の危険があるからな。町の近くに住んでる奴らばかりじゃない。完全に暗くなる前に家に返す必要があるんだ。冬場は日が落ちるのが早いから、そこに合わせてる。」
「そうなんですね。そのぶん朝早くから働いているということですね。」
「日が昇っている間に、出来るだけ効率よく働かないといけないからな。」
アメリカとかフィンランドみたいだなあ。
アメリカは夜真っ暗になるから、フィンランドは家族の時間をしっかり取る為、だったか。徒歩移動の時間を考えたら、そのくらい帰りが早くないと、確かに冬場は暗くなる前に帰れないな。
「では、納得いただけたら契約書にサインをしてくれ。契約魔法を使用しているから、よく読んで欲しい。分割払いの契約書も、後日こちらで作らせて貰うが、それでいいか?」
とエドモンドさんがメッペンさんにたずねながら、ルピラス商会用と俺用の、2枚の契約書をメッペンさんに手渡した。
メッペンはああ、とうなずいて、契約書に目を通して、それぞれにサインをした。
俺とルピラス商会のサインは既にしてあるので、エドモンドさんが針で指にちょっと傷を付けて、契約書に血判を押す。俺とメッペンさんも同じようにしたあとで、エドモンドさんが空中に契約書を放り投げると、契約書がボウッと青い炎に包まれて燃えて消えた。
「これで契約は成立だ。
これから宜しく頼む。」
「こちらこそ。」
こういう時に握手を交わさないのが、日本人としては不思議な感じだな。俺たちはメッペンさんたちに挨拶をして別れた。
まずは少ない種類の受付から開始して、あとはメッペンさんの人手の確保が終わって、自動熱石押し機能付き洗浄機の数が揃って、分割払いの契約を交わしたら本格始動だ。
「うちの従業員の依頼分で、ようやくうちの人権費が確保出来た程度だからな。早く工房を増やして、種類を引き受けられるようにしないとな。うちとしては儲けが出ない。」
とエドモンドさんが帰り道に言った。
店舗数600に最低1人置いたとして、月20万で1億2千万。なるほど、4割でちょうど人件費分だけになるのか。
帰りにヴァッシュさんの工房に立ち寄り、俺が自動熱石押し機能付き洗浄機を追加で14台と、エドモンドさんが店頭表示用の記録用魔道具を600台注文した。
今ヴァッシュさんの工房では、魔道具の研究開発と、武器防具の作成のみをここでやっていて、町から離れた場所で魔道具の生産をする工房があるのだという。
そこでルピラス商会からの注文を大量に受け付けているので、納期のない注文生産分であるそれらを後回しにして、記録用魔道具と自動熱石押し機能付き洗浄機の生産を先に回してくれることとなった。
この世界では、店頭ですぐに買える魔道具は少ないらしい。基本は受注生産なのだそうだ。以前武器防具も、高いものは店頭には置いてなくて、受注生産だと言っていたな。
平民が普通に購入するようなものじゃあないから、どうしてもそうなるのだろう。
明かりをつける魔道具は存在するが、実際村の人たちは油を使用しているしな。
分割払いの契約書は、ルピラス商会で後日作成しておいてくれるらしい。
出来たら連絡すると言われて、エドモンドさんに送って貰って自宅へと帰った。
いつものようにカイアが出迎えてくれて、みんなでご飯を食べて、カイアとキラプシアとお風呂に入った。
アエラキはお尻フリフリダンスがすっかり気に入って、アシュリーさんたちと練習するうち仲良くなり、今日はアシュリーさんたちと入るのだそうだ。
カイアを抱えて風呂にゆったりとつかる。
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