こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

文字の大きさ
上 下
372 / 470

第113話 キャメロン・ディアス丼③

しおりを挟む
「──ずいぶん開始時間が早いんですね?」
 クリーニング店の早朝出しの時間は分かるんだが、勤め人までそんなに早いとは思っていなかったな。
「夜は魔物の危険があるからな。町の近くに住んでる奴らばかりじゃない。完全に暗くなる前に家に返す必要があるんだ。冬場は日が落ちるのが早いから、そこに合わせてる。」

「そうなんですね。そのぶん朝早くから働いているということですね。」
「日が昇っている間に、出来るだけ効率よく働かないといけないからな。」
 アメリカとかフィンランドみたいだなあ。
 アメリカは夜真っ暗になるから、フィンランドは家族の時間をしっかり取る為、だったか。徒歩移動の時間を考えたら、そのくらい帰りが早くないと、確かに冬場は暗くなる前に帰れないな。

「では、納得いただけたら契約書にサインをしてくれ。契約魔法を使用しているから、よく読んで欲しい。分割払いの契約書も、後日こちらで作らせて貰うが、それでいいか?」
 とエドモンドさんがメッペンさんにたずねながら、ルピラス商会用と俺用の、2枚の契約書をメッペンさんに手渡した。

 メッペンはああ、とうなずいて、契約書に目を通して、それぞれにサインをした。
 俺とルピラス商会のサインは既にしてあるので、エドモンドさんが針で指にちょっと傷を付けて、契約書に血判を押す。俺とメッペンさんも同じようにしたあとで、エドモンドさんが空中に契約書を放り投げると、契約書がボウッと青い炎に包まれて燃えて消えた。

「これで契約は成立だ。
 これから宜しく頼む。」
「こちらこそ。」
 こういう時に握手を交わさないのが、日本人としては不思議な感じだな。俺たちはメッペンさんたちに挨拶をして別れた。
 まずは少ない種類の受付から開始して、あとはメッペンさんの人手の確保が終わって、自動熱石押し機能付き洗浄機の数が揃って、分割払いの契約を交わしたら本格始動だ。

「うちの従業員の依頼分で、ようやくうちの人権費が確保出来た程度だからな。早く工房を増やして、種類を引き受けられるようにしないとな。うちとしては儲けが出ない。」
 とエドモンドさんが帰り道に言った。
 店舗数600に最低1人置いたとして、月20万で1億2千万。なるほど、4割でちょうど人件費分だけになるのか。

 帰りにヴァッシュさんの工房に立ち寄り、俺が自動熱石押し機能付き洗浄機を追加で14台と、エドモンドさんが店頭表示用の記録用魔道具を600台注文した。
 今ヴァッシュさんの工房では、魔道具の研究開発と、武器防具の作成のみをここでやっていて、町から離れた場所で魔道具の生産をする工房があるのだという。

 そこでルピラス商会からの注文を大量に受け付けているので、納期のない注文生産分であるそれらを後回しにして、記録用魔道具と自動熱石押し機能付き洗浄機の生産を先に回してくれることとなった。
 この世界では、店頭ですぐに買える魔道具は少ないらしい。基本は受注生産なのだそうだ。以前武器防具も、高いものは店頭には置いてなくて、受注生産だと言っていたな。

 平民が普通に購入するようなものじゃあないから、どうしてもそうなるのだろう。
 明かりをつける魔道具は存在するが、実際村の人たちは油を使用しているしな。
 分割払いの契約書は、ルピラス商会で後日作成しておいてくれるらしい。
 出来たら連絡すると言われて、エドモンドさんに送って貰って自宅へと帰った。

 いつものようにカイアが出迎えてくれて、みんなでご飯を食べて、カイアとキラプシアとお風呂に入った。
 アエラキはお尻フリフリダンスがすっかり気に入って、アシュリーさんたちと練習するうち仲良くなり、今日はアシュリーさんたちと入るのだそうだ。
 カイアを抱えて風呂にゆったりとつかる。

────────────────────

少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...