こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

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第112話 一目惚れって信じるか?①

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「すみません、店頭の従業員はルピラス商会にお願いすることになるのに、営業時間をお伝えしていなくて申し訳ありません。」
「いや、構わない。ジョージの店なんだ、何か特別なことをしてもおかしくないのに、普通と同じに考えて、先に募集をかけちまったこちらの落ち度だ。事前に相談すべきだったな、こちらこそ申し訳ない。」

「排水回収業者さんたちに、早く仕事を始めさせてあげる為ですか?」
「ああ、まあな。あちらさんも、切羽詰まっているようだったからな。」
「そうですよね。俺もそれで契約書の確認に来たんですが、読み書き算術のことが頭にありませんでした。普通ならこんなに早く人数を集められなかったのに、助かりました。」

 お互い相手が喜ぶと思って行動して、すれ違ってしまったのだ。俺とエドモンドさんは思わず顔を見合わせて笑った。
「ですが、そんな金額で頼める人たちがいるのなら、あんまり需要がないかも知れませんね……。平民の収入がそんなに少ないのであれば、1枚ごとにいくら、のクリーニングを頼む人は少ないかも知れません。もっと市場調査をすべきでした。」

「いや。恐らく客層が違うから問題ない。
 俺たちルピラス商会が乗っかったんだぜ?
 そこは安心してくれよ。」
 エドモンドさんがそう言って、自信満々にニヤリとする、
「そう言っていただけると……。
 ちなみにどう違うんですか?」

「洗濯女を使うのは、主に冒険者たちだ。
 ひとつの拠点にとどまる際に、自分たちで洗濯をしなくちゃならないからな。
 銀貨2枚なら頼んじまおうってわけだ。
 だが、クリーニング店に来る客は、王宮勤め、貴族の屋敷勤め、商会勤めの人間になると思う。なんなら貴族は頼んでくるかも知れないな。なんせ仕上がりの状態がいい。」

「ある程度収入のある人たちを想定していましたが、そのくらいしか、現金を持っている人たちがいないんですね。」
「そこはそうだな。毎月決まった金額の現金を得ている人間は少ない。基本は自給自足で少し余ったものを売って現金を得るんだ。」
 やはりそうなのか。

「だが、毎月現金収入を得ている人間は、自分で洗濯して、職場でパリッとした制服を着ないといけない。それをやってくれる店があるなら、恐らく毎日でも使うだろう。少なくともうちの従業員たちは、独身は全員が使いたいと言ってるぜ。──俺も含めてな。」
 独身なんだな、エドモンドさん。

 結婚しても指輪をする習慣というものがこの世界にないらしく、独身なのかそうでないのかが、パッと見では分からない。
 平民だからなのかとも思っていたが、パーティクル公爵とセレス様も、どちらも指輪はしていなかったからな。俺はそういうことを聞くのがはばかられるので、エドモンドさんにも特に聞かなかった。

「貴族の服を洗濯する奴らの服を、他の従業員が洗ってくれることはない。ぜんぶ自分でやるのさ。洗濯女は水洗いするだけだから、汚れが取り切れない。熱石押しもかけない。
 ──だから頼まない。シミ抜きしてくれるだけでも、かなり有り難いだろう。」

「──熱石押しってなんですか?」
「知らないのか?熱した石を布に包んで、洋服の上に布を置き、上からなでつけることで服のシワを伸ばしてパリッとさせるのさ。
 勤め人は全員これを制服に対してやらなくちゃならないのさ。俺は私服だが、やはり見た目は大事だからな、自分でやってる。」

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