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第111話 クリーニング店の杞憂④
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「はい。」
俺は記録用魔道具の中から、データが保存されている水晶を取り出して手渡した。
「記録用魔道具を持ってきてくれ。」
エドモンドさんが室内にいた部下にそう言うと、部下の人が俺のとはタイプが異なる記録用魔道具を持って戻ってきた。
「こいつに記録をうつしてくれ。」
保存データを取り出して、別の記録用魔道具にうつしている。
データを保存しているのは、中に入っている水晶の部分だ。魔法と相性がいいので、ここに映像を保存するらしい。
俺の記録用魔道具から取り出した水晶を、別の記録用魔道具の中に入れ、それを読み取って別の水晶に保存するらしい。
これをたくさん繰り返せば、別の記録用魔道具や投影機で、俺の作成した映像を、見たり流したり出来るのだそうだ。
仕組みはなんとなく聞いたが、なんだか不思議だよな。異世界のメモリーカードだと思えばいいのかな。
「それにしても、記録に文字が入っているなんて初めて見たぞ。これもジョージのアイデアなんだろう?ひどく斬新だ」
「はい、そうですね。」
「特許を申請しないのか?」
「別にこれで儲けようとは思っていないですし、真似してくれて構わないので。」
「そうか。まあ、これを売るわけじゃないなら、ジョージがいいならかまわんが。」
現代だって自分でやるものだし、業者に頼んでまでやる人は一部だからな。
「それで、預かりの期間はどのくらいだ?
1ヶ月くらいか?」
「鞄やシミが凄いものや、数がどの程度かにもよると思うのと、どのレベルの生活魔法使いが何人集まるかにもよりますので、最初はそれでもいいと思います。」
「そういえば、ハウスクリーニングもあったか。そちらは店舗でも受付可能だが、基本はうちが営業や納品のついでに打診することになるだろうな。そっちは見積もりだな。」
「そうですね。普通の服は朝出して夕方受取れるように、自動洗浄機でキレイにするつもりでいるんですが。どうでしょうか?」
「──朝出して、夕方引き取れるだと!?」
エドモンドさんが半分腰を浮かせて椅子から立ち上がる。
「はい。出勤前の時間に合わせて引き取れるようにして欲しいのですが……。従業員の方をそのように雇うことは可能でしょうか?」
「昼休憩を長く取れば可能だが、強制は出来ないからな……。そういう契約をし直さなくちゃならない。それか、早く出勤させて早く帰らせるだけなら、契約書を書き換えなくとも可能だが、それ以降の時間に立たせる代わりの従業員が必要だ。──だが、そもそもそんな短時間で返却出来るのか?」
「はい。自動洗浄機があれば可能かと。」
「まずは従業員全員に打診をして、回答を待ってから、排水回収業者たちと契約書を交わした方が良さそうだな。
人材確保の都合がある。
自動洗浄機が完成したら、まずは効果を確認させて貰えないか?」
「明日工房に見に行く予定ですが、その時に一緒にいらっしゃいますか?」
「ああ、そうさせて貰おう。もしも本当にそんなことが可能なら、一人暮らしの小金持ちがこぞって押し寄せることだろうな。
だが、洗濯女たちが、今度は押しかけてくるかも知れん。仕事がなくなったと。」
「そんな仕事があるんですね。」
「週1回回収して、洗濯して届けるだけだから、大した稼ぎにはならんがな。」
「その人たちを、ハンバーグ工房で雇いたいですね。週1回以上働きたいならですけど。
小銭稼ぎ程度のつもりなら……。」
「そんなわけないだろう。仕事がないからやってるのさ。だいたいが夫をなくした女性が自給自足のかたわらやっている。週一回、袋いっぱいの洗濯物を、取りに行って、洗って届けて、それで銀貨2枚だ。それこそ飛びつくだろうさ。むしろ感謝されるだろうな。」
週1回2千円の稼ぎってことか。以前テレビで見た、空き缶を拾って売る仕事が、確か週1回3千円の買い取りだったな……。
この世界、本当にお金を稼ぐ手段がないんだなあ……。こうやって仕事を増やせていかれればいいなと思うけど、思ったよりお客さんが少ないってことなんじゃないか?
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俺は記録用魔道具の中から、データが保存されている水晶を取り出して手渡した。
「記録用魔道具を持ってきてくれ。」
エドモンドさんが室内にいた部下にそう言うと、部下の人が俺のとはタイプが異なる記録用魔道具を持って戻ってきた。
「こいつに記録をうつしてくれ。」
保存データを取り出して、別の記録用魔道具にうつしている。
データを保存しているのは、中に入っている水晶の部分だ。魔法と相性がいいので、ここに映像を保存するらしい。
俺の記録用魔道具から取り出した水晶を、別の記録用魔道具の中に入れ、それを読み取って別の水晶に保存するらしい。
これをたくさん繰り返せば、別の記録用魔道具や投影機で、俺の作成した映像を、見たり流したり出来るのだそうだ。
仕組みはなんとなく聞いたが、なんだか不思議だよな。異世界のメモリーカードだと思えばいいのかな。
「それにしても、記録に文字が入っているなんて初めて見たぞ。これもジョージのアイデアなんだろう?ひどく斬新だ」
「はい、そうですね。」
「特許を申請しないのか?」
「別にこれで儲けようとは思っていないですし、真似してくれて構わないので。」
「そうか。まあ、これを売るわけじゃないなら、ジョージがいいならかまわんが。」
現代だって自分でやるものだし、業者に頼んでまでやる人は一部だからな。
「それで、預かりの期間はどのくらいだ?
1ヶ月くらいか?」
「鞄やシミが凄いものや、数がどの程度かにもよると思うのと、どのレベルの生活魔法使いが何人集まるかにもよりますので、最初はそれでもいいと思います。」
「そういえば、ハウスクリーニングもあったか。そちらは店舗でも受付可能だが、基本はうちが営業や納品のついでに打診することになるだろうな。そっちは見積もりだな。」
「そうですね。普通の服は朝出して夕方受取れるように、自動洗浄機でキレイにするつもりでいるんですが。どうでしょうか?」
「──朝出して、夕方引き取れるだと!?」
エドモンドさんが半分腰を浮かせて椅子から立ち上がる。
「はい。出勤前の時間に合わせて引き取れるようにして欲しいのですが……。従業員の方をそのように雇うことは可能でしょうか?」
「昼休憩を長く取れば可能だが、強制は出来ないからな……。そういう契約をし直さなくちゃならない。それか、早く出勤させて早く帰らせるだけなら、契約書を書き換えなくとも可能だが、それ以降の時間に立たせる代わりの従業員が必要だ。──だが、そもそもそんな短時間で返却出来るのか?」
「はい。自動洗浄機があれば可能かと。」
「まずは従業員全員に打診をして、回答を待ってから、排水回収業者たちと契約書を交わした方が良さそうだな。
人材確保の都合がある。
自動洗浄機が完成したら、まずは効果を確認させて貰えないか?」
「明日工房に見に行く予定ですが、その時に一緒にいらっしゃいますか?」
「ああ、そうさせて貰おう。もしも本当にそんなことが可能なら、一人暮らしの小金持ちがこぞって押し寄せることだろうな。
だが、洗濯女たちが、今度は押しかけてくるかも知れん。仕事がなくなったと。」
「そんな仕事があるんですね。」
「週1回回収して、洗濯して届けるだけだから、大した稼ぎにはならんがな。」
「その人たちを、ハンバーグ工房で雇いたいですね。週1回以上働きたいならですけど。
小銭稼ぎ程度のつもりなら……。」
「そんなわけないだろう。仕事がないからやってるのさ。だいたいが夫をなくした女性が自給自足のかたわらやっている。週一回、袋いっぱいの洗濯物を、取りに行って、洗って届けて、それで銀貨2枚だ。それこそ飛びつくだろうさ。むしろ感謝されるだろうな。」
週1回2千円の稼ぎってことか。以前テレビで見た、空き缶を拾って売る仕事が、確か週1回3千円の買い取りだったな……。
この世界、本当にお金を稼ぐ手段がないんだなあ……。こうやって仕事を増やせていかれればいいなと思うけど、思ったよりお客さんが少ないってことなんじゃないか?
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