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第111話 クリーニング店の杞憂③
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目玉商品と言われて、エドモンドさんの眉毛がピクピクッと動く。
「──目玉商品?それはなんだ?」
「ハンバーグというものになります。肉をひき肉という細かい状態にして、ねって肉汁を閉じ込める為に表面をじっくりと焼いて、あとは蒸し焼きにした料理ですね。」
エドモンドさんはゴクリとツバを飲み込むと、前のめりになって目をキラキラさせる。
「なんだ、そりゃあ。聞いてるだけでうまそうだな。それに肉を細かくしてねるだって?
そんな料理は聞いたこともないぞ。」
「俺たちの国では家庭料理です。大人も子どもも大好きな、主婦の味方ですよ。」
この世界の肉は切って焼くものばかりだ。
ハンバーグは珍しいだろうな。
「皆さん自給自足で、朝から晩まで働いている方ばかりです。料理をする時間を短縮出来れば、かなり有り難いのではと。」
「それは確かにそうだな。」
「なので、その為に肉の加工工場を作って、人を雇おうと思っています。朝のうちに仕込んで、ハンバーグを積んで出発し、昼から販売開始という予定ですね。ハンバーグは焼くだけで、美味しい焼き方の説明は、木札に書かれたものを用意するつもりです。」
そう言うと、エドモンドさんの思っていたものとは違ったらしく、少し難色を示して眉間にシワを寄せる。
「出来合いじゃなくて、焼く工程はお客がするのか?途中まで他人が作ったものを使うのか。それは受け入れられるだろうか……。」
「見慣れないので最初は抵抗があるのかも知れませんが、その楽さと美味しさを知れば、必ず受け入れられると思いますよ。
なので、平民の住むところで構いませんので、どこかよい土地を紹介していただけませんでしょうか?馬車がたくさん乗り付けられる場所がいいんですが。」
「分かった、探しておこう。そのハンバーグとやらは、うちの目玉商品にもなりそうだ。
一定数量仕入れさせて欲しい。」
「分かりました。それと、俺もメッペンさんたちと契約書を結ぶことになったのですが、契約書を契約魔法で書いていただける業者さんを、紹介していただきたいのですが。」
「ああ、それならもう作ってあるぞ。
数字の部分を書き足せば出来る。」
そう言って机の上の小引き出しから、作成済みの契約書を出して見せてくる。
「本当ですか?」
「ジョージの分の金額交渉がまだだったからな。たぶんいることになるだろうと思った。
それで、何割にしたんだ?」
さすがだなあ、エドモンドさん。
「1割です。これから生活魔法使いを大量に雇うことになるでしょうし、メッペンさんたちの取り分を出来るだけ残してあげたくて。
俺の供出するものから考えても、多くて2割がいいとこだと思いますし。」
「ジョージならそう言うと思ってたよ。」
エドモンドさんはそう言うと、契約書に1と数字を書き込んだ。
「うちも利益を出す必要があるから、4割以上はまからないが、新しく雇用を創出出来る産業は応援したいと思っている。教育済みの人員を差し出すんだ、普通なら6割は取るところだが、まあ、応援価格だな。」
と言って笑った。
俺もつられて笑う。
「商品の単価を決めて貰えるか?すぐにでも始められるよう、価格表を準備したい。それと預かりの期間だな。どの程度で客に戻せるものなのかを知りたい。なにせ全国で引き受けるんだ。今の人数のままじゃ、うちの準備が出来ても、あちらさんが厳しいだろう。」
「あ、価格表は受け取って来ました。
それと、簡単なものであれば、今開発して貰っている魔道具で自動的にキレイに出来ますので、生活魔法の込められた魔石を大量に購入するだろうと思っています。
それと、こちら、お預かりしていたお祖母様の鞄です。ありがとうございました。」
俺はエドモンドさんから預かっていた、お祖母様の大切な鞄を返却した。
「……驚いたな!まるで新品じゃないか。」
「ここまでキレイにするには技術がいるそうです。様子を撮影して編集しておきましたので、これを店頭で流せたらと思っています。
ご覧いただけますか?」
「見てみよう。」
俺は馬車の上で編集しておいた、メッペンさんの作業風景を、記録用魔道具の再生ボタンを押して、エドモンドさんに見せた。
「……うん、いいな。クリーニングがどんな仕事で、技術のいる仕事なのかが伝わる。
投影機を用意させて、店頭で流させよう。
記録を貰っても?」
────────────────────
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「──目玉商品?それはなんだ?」
「ハンバーグというものになります。肉をひき肉という細かい状態にして、ねって肉汁を閉じ込める為に表面をじっくりと焼いて、あとは蒸し焼きにした料理ですね。」
エドモンドさんはゴクリとツバを飲み込むと、前のめりになって目をキラキラさせる。
「なんだ、そりゃあ。聞いてるだけでうまそうだな。それに肉を細かくしてねるだって?
そんな料理は聞いたこともないぞ。」
「俺たちの国では家庭料理です。大人も子どもも大好きな、主婦の味方ですよ。」
この世界の肉は切って焼くものばかりだ。
ハンバーグは珍しいだろうな。
「皆さん自給自足で、朝から晩まで働いている方ばかりです。料理をする時間を短縮出来れば、かなり有り難いのではと。」
「それは確かにそうだな。」
「なので、その為に肉の加工工場を作って、人を雇おうと思っています。朝のうちに仕込んで、ハンバーグを積んで出発し、昼から販売開始という予定ですね。ハンバーグは焼くだけで、美味しい焼き方の説明は、木札に書かれたものを用意するつもりです。」
そう言うと、エドモンドさんの思っていたものとは違ったらしく、少し難色を示して眉間にシワを寄せる。
「出来合いじゃなくて、焼く工程はお客がするのか?途中まで他人が作ったものを使うのか。それは受け入れられるだろうか……。」
「見慣れないので最初は抵抗があるのかも知れませんが、その楽さと美味しさを知れば、必ず受け入れられると思いますよ。
なので、平民の住むところで構いませんので、どこかよい土地を紹介していただけませんでしょうか?馬車がたくさん乗り付けられる場所がいいんですが。」
「分かった、探しておこう。そのハンバーグとやらは、うちの目玉商品にもなりそうだ。
一定数量仕入れさせて欲しい。」
「分かりました。それと、俺もメッペンさんたちと契約書を結ぶことになったのですが、契約書を契約魔法で書いていただける業者さんを、紹介していただきたいのですが。」
「ああ、それならもう作ってあるぞ。
数字の部分を書き足せば出来る。」
そう言って机の上の小引き出しから、作成済みの契約書を出して見せてくる。
「本当ですか?」
「ジョージの分の金額交渉がまだだったからな。たぶんいることになるだろうと思った。
それで、何割にしたんだ?」
さすがだなあ、エドモンドさん。
「1割です。これから生活魔法使いを大量に雇うことになるでしょうし、メッペンさんたちの取り分を出来るだけ残してあげたくて。
俺の供出するものから考えても、多くて2割がいいとこだと思いますし。」
「ジョージならそう言うと思ってたよ。」
エドモンドさんはそう言うと、契約書に1と数字を書き込んだ。
「うちも利益を出す必要があるから、4割以上はまからないが、新しく雇用を創出出来る産業は応援したいと思っている。教育済みの人員を差し出すんだ、普通なら6割は取るところだが、まあ、応援価格だな。」
と言って笑った。
俺もつられて笑う。
「商品の単価を決めて貰えるか?すぐにでも始められるよう、価格表を準備したい。それと預かりの期間だな。どの程度で客に戻せるものなのかを知りたい。なにせ全国で引き受けるんだ。今の人数のままじゃ、うちの準備が出来ても、あちらさんが厳しいだろう。」
「あ、価格表は受け取って来ました。
それと、簡単なものであれば、今開発して貰っている魔道具で自動的にキレイに出来ますので、生活魔法の込められた魔石を大量に購入するだろうと思っています。
それと、こちら、お預かりしていたお祖母様の鞄です。ありがとうございました。」
俺はエドモンドさんから預かっていた、お祖母様の大切な鞄を返却した。
「……驚いたな!まるで新品じゃないか。」
「ここまでキレイにするには技術がいるそうです。様子を撮影して編集しておきましたので、これを店頭で流せたらと思っています。
ご覧いただけますか?」
「見てみよう。」
俺は馬車の上で編集しておいた、メッペンさんの作業風景を、記録用魔道具の再生ボタンを押して、エドモンドさんに見せた。
「……うん、いいな。クリーニングがどんな仕事で、技術のいる仕事なのかが伝わる。
投影機を用意させて、店頭で流させよう。
記録を貰っても?」
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