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第111話 クリーニング店の杞憂②

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 平民の為の学校がないというのは、パーティクル公爵家で食事をした際に教えて貰っていたし、仕事について初めて、必要であれば読み書き計算を教わるものだと聞いてはいたが、どうしても義務教育を受けて育った身としては、現代じゃパートやアルバイトが回してるクリーニング店の受付の仕事に、人を集めるのが大変だって発想に至れなかった。

 ルピラス商会が名乗りをあげてくれなかったら、店舗が1つだったとしても、受付をやれる人を探すのは無理だったかも知れないなあ。メッペンさんたちは当然出来るだろうけど、社長自ら店舗に立つ小さな店から細細始めることになっただろう。

 それがいきなりこんな大手商会と組んで大規模に始められるのだから、メッペンさんたちが驚くのも、よく考えたら無理ないか。
 俺も個人商店をイメージしていたから、集客の為の店を俺が用意しようと思っていたんだが、ルピラス商会が乗っかってくれたおかげで、ライバル店の心配が一気に減った。

 商人には基本商人の子しかなれない、職人はスキルがないと雇われない、貴族につかえられるのは一部の人、だっけか。
 仕事の募集がそもそも少ない中で、ルピラス商会という、国1番の商会による募集だものな、大手商社に入れるようなものか。

「それじゃ、地域雇用にかなり貢献したってことなんですね。」
「まあ、各店舗それぞれ1人ないし2人ではあるがな。それでも約600店舗に千人単位の新規雇用だ。貢献はしてるな。」
「そんなに店があるんですか?」
 店舗数が600だなんて、本当に大手なんだな、ルピラス商会。

「この国すべてを網羅しているからな。
 なんだジョージ、俺たちの商売が、この近辺だけだと思ってたのか?」
「てっきりこの近くの倉庫から、すべてを全国的に配送しているのだとばかり……。」
 ジャスミンさんの住んでいる町に、支店があるのはこの間聞いて知っていたが。

「平民街とはいえ、王宮に近い倉庫には、貴重な商品だけを置いてるんだ。安全性が高いし、そもそも治安がいいからな。
 だからジョージの商品は、いつもこの近くの倉庫にばかり入れて貰っているのさ。珍しい商品ばかりだからな。」

 なるほど。
「倉庫だけでも100箇所以上あるし、それぞれの倉庫で交代で常時200人程度の作業員と、警備兵が働いているよ。うち全体でだいたい3万人くらいいるかな。
 平民がつとめられる仕事は少ない。もっと色んな仕事が増やせればいいんだが。」

「俺の移動販売も全国規模を考えているんですが、商品の仕入れはルピラス商会を通じてと考えているんです。その場合、仕入れ量に応じて、もっと人が雇えたりしますか?」
「考えられることではあるが……、ジョージは値段設定をどう考えているんだ?」

「馬車が直接来てくれることを考えると、人件費の問題がありますから、定価販売になると思います。値引きは難しいですね。
 冷蔵庫付き冷蔵庫の存在があっても、殆どの食材が日持ちしないものばかりです。廃棄の可能性を考えると……。」

「1つの馬車で1箇所の村だけというわけにはいかないだろうな。数を積むことを考えると、そうなるだろうな。」
「はい。」
「残った食材があったら、うちの直営の食堂で7がけで引き取るというのはどうだ?
 そんなに種類は仕入れないだろう?」

「よろしいんですか?」
 7がけとは、つまり3割引きのことだ。夕方のスーパーで3割引きや、夜に半額になるようなものだ。
「ジョージにはかなり世話になっているからな。独占販売のおかけでかなりうちも儲かっている。構わないさ。」

 7がけなら損はないし、すべて引き受けてくれるのであれば食材のロスもない。
 有り難い話だな。
「ありがとうございます。ぜひよろしくお願いします。俺としては、目玉商品として、焼くだけの肉料理を提供したいと思っているので、それが特に足が速いので助かります。」

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