こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

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第110話 生活魔法使いの高度な技術②

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 トレーラーハウスは基本的に一般住宅と同じ作りなので、電気、ガス、水道など生活に欠かせないインフラを引き込むことが可能ではあるが、すぐに移動できるように、ガスはプロパンガスのみとなる。
 まあ、生活魔法を使うクリーニング店には使わないから関係ないが。

「はあ……、こんなもの、いつの間に……。」
「まったく気付かなかったぞ?」
 まあ、能力でついさっき出したしな。
 馬車で引っ張れるような重さのものじゃないから置きっぱなしにしても盗まれないし、家を出すんだと作業場には向かないので、トレーラーハウスを出すことにしたのだ。

 トレーラーハウスはほとんどの地域で車両扱いになるので、現代では固定資産税がかからない。だから税金対策や、建築費用が不要かつ快適なことから、安い住居や被災地の仮設住宅にも使われだしている。ただしかなりの重量があるので、地盤を考慮する必要がある。さっき地面を確認したのはその為だ。

 一般的な住宅を建てる場合、地盤工事をしてから家を建てるのだが、トレーラーハウスはそのような工事はせず、ただデン、と地面の上に設置するだけになるので、農地だったり地盤が柔らかいところには設置することが出来ない。農地がないとメッペンさんに聞いた時に、ふと思いついたのだ。

「どうぞ、中へ。」
 俺はメッペンさんとエムスラントさんをトレーラーハウスの中へ案内した。
「明かりはここを押して下さい。」
 パチッ。
「あ、明るい……!まるで外みたいだ!」
「広いぞ……!作業しやすいな!」
 メッペンさんとエムスラントさんは、トレーラーハウスの中を見渡して嬉しそうだ。

 この世界の明かりは、殆どが油を使用している。もちろん魔道具によるランプや明かりもあって、王宮の中やパーティクル公爵家のような貴族の家は、当然魔道具を使用していてめちゃくちゃ明るいのだ。だが、糸から汚れを取り除くような細かい作業をするのに、手元の明かりが心許ないのはちょっとな。

 俺はトレーラーハウス内で生活する為に必要な電力を確保すべく、太陽光発電とリチウムイオン蓄電池を搭載しているタイプのトレーラーハウスを出したのだ。
 トイレだけは排水がないので、自動食器乾燥機能付き洗浄機にもついている、自浄作用機能の部分をあとから取り付けてみた。

 商用電源の確保が難しい場所での設置も視野に入れ、太陽光発電とリチウムイオン蓄電池で、自給自足の電力確保をしてくれるスグレモノ。ただ現代っぽ過ぎて目立つので、こういうひと目につかない森の中じゃないと置けないけどな。問題が1つあるとしたら、故障した時に俺が修理出来ないって点だが。

 交流出力を一般的な電力会社からの供給方式に合わせた単相3線式で、分電盤の入り口へ供給していて、いつでも一般の電気に切り替えて使えるタイプのものだが、まあ、ここでは無用の代物だな。
 蓄電容量の確保と、大電流の充放電を可能としているが、明かりにしか使わないし。

 リチウムイオン蓄電池を採用し、従来の鉛タイプバッテリー設置による、重量や設置スペース確保の問題点も解決し、中を広々と使うことが出来るのも魅力だ。
「ここに、今開発している自動判別洗浄機を置く予定です。簡単なものは魔道具で、生活魔法使いの知識と経験が必要な難しいものをお2人にお願いしたいと思っています。」

「そ、そんなものまで!?」
「なんで俺たちにそこまでしてくれるんだ?
 ……俺たちの仕事を奪った罪滅ぼしのつもりなのか?それにしたって、ここまでのことをしてくれるなんて、いったい……。」
「うーん……。単に俺が欲しかったんですよね、クリーニング店が。
 俺の地元には普通にあったので。」

「そ、そうか……。」
「まあ、新しい事業を提供出来たらと思ったのも事実ですが、あまり気負わないで欲しいです。これは施しなんかじゃなく、先行投資ですから。俺もちゃんと儲けさせて貰いますから安心して下さい。」
 そう言われて、2人がギョッとする。

「そ、そうだよ兄貴、ルピラス商会に渡す金の配分は決まってるけど、ジョージさんの条件をまだ聞いてないぜ……!?」
「い、いくらなんだ、それは。」
「そうですね、じゃあ1割下さい。」
「1割!?それっぽっちでいいのか!?」
 メッペンさんは叫び、エムスラントさんは言葉も出ないようだった。

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