こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

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第106話 裏庭のバーベキューパーティー⑤

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「私には……、ちょっと甘いかも?」
 一口飲んでララさんが言う。
 ララさんはお酒が飲める体質だったら、いけるクチかな?一緒に飲めるなら、もっといろんな酒を紹介したいところなんだがなあ。
「では、こちらはいかがですか?」
 俺はピエール・ゼロ ブラン・ド・ブランを、既に冷やしたイメージで出した。

 デュク・ドゥ・モンターニュと同様に、脱アルコール製法で作られているのだが、ブドウはシャルドネを使用し、そこにミュスカのブドウジュースを加えて辛口に仕上げているので、ブレンド感のある複雑な味わいが楽しめるのも特徴だ。
「──うん……!美味しいです!」
 ララさんは嬉しそうに微笑んだ。

「それは良かった。」
 俺たちはおおいに飲んで食べた。キラプシアもテーブルの上で、串からはずして皿に乗せて貰った野菜を美味しそうに食べている。
 カイアがアエラキの口についた汚れを拭ってやっているのを、大人たちで微笑ましく見つめた。カイアは世話好きだなあ。

 俺は焼いた串を護衛の兵士の人たちにおすそ分けし、ノンアルコールスパークリングワインも差し入れした。勤務中にお酒はちょっと……、と言われたので、お酒じゃないんですよと伝えると、たいそう驚かれた。お酒が駄目だという兵士の一人が一口飲んだ途端、本当に酒じゃないんだ……!と驚いた。

 顔を見合わせた兵士たちが、そのまま兵士長の顔を見ると、兵士長は、ウオッホン、と咳払いをしてから、食べてもいいだろう、と言った。みんな一斉に串とノンアルコールスパークリングワインに群がる。うまい、うまいと言って、楽しそうに食べている。お礼を言われて再びみんなのもとへと戻った。

 食事が終わり、みんなで後片付けをしたあとで、円璃花とアシュリーさんとララさんは一緒にお風呂に入ることになった。
「はい、これ、着替えのネグリジェです。」
「ネグリジェ?」
 俺の差し出した、3人お揃いのネグリジェを見て、アシュリーさんが首をかしげる。

「寝るとき専用の服ですね。円璃花の希望でお揃いにしてみました。」
 アシュリーさんとララさんには尻尾があるからな。上下に分かれたパジャマじゃなく、ネグリジェがいいだろうと思ったのだ。
「ああ、ヤナンね。」
「ヤナンは私たちコボルトが、夜寝る時に着る服のことなんです。」
 アシュリーさんの言葉を、ララさんが補足する。

「へえ!どんな服なの?」
 円璃花がコボルトの伝統に興味をしめす。
「ネグリジェと少し似てますね、こんな風に裾が広がっていなくて、ストンと真っ直ぐな服になります。季節で布の厚みと材質が異なりますが、デザインは家ごとに決まりがあって、男女ともに同じ服を着るんですよ。」
 とララさんが教えてくれた。

 その後女3人、キャッキャッと楽しそうに風呂に入り、ネグリジェに着替えて、円璃花の部屋へと案内されると、
「わあ……!大きなベッドね!」
 俺は普段使いのベッドを一度しまって、キングサイズのベッドを出してやっていた。どれだけ大きなベッドでも、2つ並べると、つなぎ目に寝る人の寝心地が悪いからな。

「譲次が用意してくれたのよ。アシュリーさんとララさんが泊まってくれるからって。」
「そうなの?ジョージ、ありがとう!」
「ありがとうございます、ジョージさん。」
「いえいえ、女同士、楽しんで下さいね。」
「──パジャマパーティーしましょ!」
 円璃花がそう言って、ドアを閉めた。
 それから夜遅くまで、3人の楽しげな話し声が聞こえて来たのだった。

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