こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

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第104話 排水回収業者の殴り込み④

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 そうエドモンドさんに言われて、排水回収業者さんたちが、ぐっと言葉に詰まる。
 自動食器乾燥機能付き洗浄機は、国内外にかなりの数が売れていると聞いているし、まだ作るのが追い付かずに、予約販売だけして出回っていないものもあるくらいだ。それらがすべて出回ったら、完全にこの人たちの仕事がなくなってしまうのかも知れないな。

「生活魔法使いが就職出来る先なんて、排水回収業者しかないんだぞ!この仕事がなくなったら、俺たちが生きる道はないんだ!」
 ──生活魔法?そんなのがあるのか。
 どんな魔法なんだろうな。排水回収業者にしかなれないと言うのなら、汚れをキレイにするしか出来ない魔法……ってことなのか?
 便利そうで不便だな。せっかくの魔法なのに、それしか出来ないんだとなると。

 汚れをキレイに……ねえ。
 ──ん?
 そういえば、この世界って、あれがないよな。少なくとも俺が見た限りは存在しなかった。なんでないんだろうな?普通はあると思うんだが。というか、排水回収業者なんてしてないで、それをすればいいのに。出来ない理由でも何かあるんだろうか?気になった俺はルピラス商会の前でわめいている男性に後ろから近付くと、肩をつついて声をかけた。

「あの……、すみません。」
「ん、なんだ、あんた。」
「ちょっと今近くで話を聞いていた者なのですが、排水回収業者でいらっしゃるんですよね?みなさんは生活魔法使いだとか。」
「ああ。そうだよ。」
「生活魔法使いが排水回収業者にしか就職出来ないって、なんでなんですか?」

「ああ?なんでって、汚れを落とすことしか出来ない魔法だからだろうが!他の魔法使いと違って、俺たちの魔法は戦いの役に立たないからな。かといってスキルがないから他の仕事につくことも出来やしない。鍛冶屋や魔道具工房はスキル持ちしか雇わないし、商人は商人の家の出か、下位貴族の子息や令嬢だけがつくことが出来る。貴族の家は限られた奴しか働けない。農業用地がなきゃ自給自足すら出来やしない。──つまり俺たちに出来る仕事は排水回収業者だけってこった。」

 なるほど。パソコンや簿記みたいな資格がないから、事務仕事につけない、電気や危険物の資格がないから、専門職にも当然つけない。店は大企業みたいなものか、貴族の家は官公庁。農業向きの土地がないから農家にもなれず、唯一つける仕事がそれだったと。
 ルピラス商会の倉庫の作業員は、なにか特別なスキルを持っているのかな?なかった場合、そういう人がつける数少ない職場ということになるのか。

 そんな環境ともなると仕事を失ったから他の仕事に再就職、ということが簡単に出来ないから、今の仕事にこだわっているんだな。
「……ちなみに生活魔法って、水の汚れしか落とせないんですか?」
「そんなわけあるか!ありとあらゆる汚れが落とせるさ!汚れだけはな!」
 と男性がほえたところで、エドモンドさんが俺に気が付いた。

「──ジョージ!?」
「なんだお前、ルピラス商会の奴か!」
「ジョージは客だ!」
「客なら口出ししてくんじゃねえよ!」
 客というか取り引き相手なのだが、エドモンドさんが俺の身の安全をおもんばかって、そう言ってくれたのだろう。俺こそが問題の中心である、自動食器乾燥機能付き洗浄機の権利者と知れたら、恐らくこの興奮状態じゃあ、どんなことになるか分からないからな。

「すみません……。ちょっとうといもので教えていただきたいのですが、生活魔法って、鞄や洗濯物の汚れも落とせるんですか?」
「当たり前だろ!」
「家のシミや、壁の油汚れなんかは?」
「落とせるに決まってんだろ!」
「なら、どうしてやらないんですか?
 ──クリーニング店を。」

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