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第104話 排水回収業者の殴り込み②

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 だがそれを説明しても、アエラキにはよく分からないことだろう。それなら単純に俺が許可しない人間の前に姿をあらわすと、カイアとキラプシアが危険な目に合うと伝えたほうが、分かりやすいだろうからな。
 俺としては本当は、早くエドモンドさんにも紹介したいんだが、エドモンドさんを危険な目に合わせない為には必要なことだ。

 もちろん本当に見られたらまずい人間もいるから、その時はマジックバッグに隠れて貰うつもりではいるが、万が一それが間に合わなかった時の為に、自分たちで身を隠す必要があるというのも、アエラキに覚えておいて貰いたいというのもある。オオカミに食べられた後じゃ、猟師さんと一緒にお腹を切って助け出してやれるとも限らないわけだしな。

「──あ!
 ……エドモンドさんに相談したいことが他にもあったのに、すっかり忘れてエドモンドさんを帰しちまった……。」
 エドモンドさんにアエラキを見られないように焦っていたから、それどころじゃなかったしな。お化け屋敷の件も相談しようと思っていたひとつではあるんだが。

「なに?どんなこと?」
 と円璃花が聞いてくる。
「さっきアシュリーさんから、ストライキをしている冒険者たちの生活について聞いただろう?代わりの仕事を作る為の相談がしたかったんだ。恐らくルピラス商会と商人ギルドの力が必要になるだろうからな。」

「へえ?クエストを拒絶している冒険者たちの為に、ジョージが新しい事業を始めるの?
 確かに冒険者許可証を復活させるより、ことは簡単かも知れないわね。」
 とアシュリーさんが言う。
「どんな仕事を始めるんですか?」
 とララさんが聞いてくる。

「移動商人なんかどうかなと思っているんです。この近くのラグナス村長の村もそうですが、この間クエストで行ったガスパー村も、村自体がとても小さくて近くに商店がひとつもなくて、自給自足をしているんですよね。
 だからわざわざ遠くまで行かないと手に入らない物も多いでしょう?そういう村まで移動商人が近くまで来てくれれば、買い物難民が救われるんじゃないかと思いまして。」

 日本でも、そういう買い物難民地域に向けて、移動販売をしている会社があるからな。
 「いいんじゃないかしら!確かに馬車道は割と安全だけど、そこに行くまでの道は安全とは言えないわ。うちの集落でだって、外でひとりで行動することは少ないもの。」
「そうですね。元冒険者たちが馬車を引くなら、いざ盗賊に襲われたとしても安全に移動出来ると思いますよ。」

 アシュリーさんとララさんが、ウンウンと笑顔で同調してくれる。
「ちなみに、盗賊を倒すには、冒険者ランクがどのくらいあればいいでしょうか?」
「街道に出る盗賊くらいなら、Eランクもあればじゅうぶんじゃないかしら。Dランクなら冒険者ひとりでもお釣りがくるわ。」

「……なるほど。それなら冒険者以外で稼ぎたい人たちも仕事がしやすいですね。まあ、冒険者の数が足らなくなる問題については、冒険者ギルドでなんとかしていただく必要がありますが、くだんの冒険者をその商会長に据えれば、反発している人たちも戻って来てくれるんじゃないかと思っているんです。」

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