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第102話 コボルトからのお願い③

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 俺は大根おろしをそえたサバの塩焼き、だし巻き卵を手早く作り、エノキ、しめじ、シイタケ、舞茸、水菜、油揚げの味噌汁を作っている間に、常備菜の切り干し大根、牛肉のしぐれ煮、キュウリの浅漬けをテーブルに並べた。取皿を並べたり、朝炊いておいたご飯を盛り付けるのは、円璃花とカイアとアエラキが手伝ってくれた。

「いただきます。」
「美味しそう!うん!美味しい!」
 アシュリーさんはさっそく次々とフォークで料理を平らげてそう言った。
「ジョージは自宅じゃ毎回、ご飯のたびに、こんなにも種類を作るの?私たちのところではいつも1種類じゃない?」

 アシュリーさんが俺を見て聞いてくる。
「大人数の為の料理を、数種類を作るのは難しいので……。自宅では、メインのオカズと味噌汁と、あと何か副菜がひとつが基本ですよ。他のものは常備菜と言って、まとめて作り置きしたものを出しているだけなので、今作ったのは3つだけですね。」

「そうなのね!コボルトは色々出すことはお祝いの席くらいしかないの。メインの料理をひとつと、あと朝1日ぶん作ったスープと、朝にみんなで焼いたパンと、それだけよ。
 食べる料理が天気でも決まるから、数を作ることが出来ないの。逆にね。
 歓迎会では、みんなが色々と持ち寄ったでしょう?お祝いの時はあんな感じね。」
「確かに。どれも美味しかったですね。」

 雨の日に食べる料理があると言っていたものな。天候や様々なことに料理を決められてしまうのなら、作り置きを出すという習慣がないのもうなずける。だっていつそれが食べられるかも分からないからな。雨の日に食べる料理が決まっているということは、晴れた日に食べられる料理は食べられない。長雨が続こうものなら腐っちまうだろうからな。

「──そうだ、アシュリーさんにお伺いしたいことがあったのですが。」
「モグモグ、ふぁに?(なに?)」
「俺は自身でも冒険者をやってはいるのですが、それで生計を立てているわけではないので、冒険者が冒険者をやれなくなった場合、普段の生活がどのようになるのかを教えて欲しいのですが。」

 アシュリーさんは口の中の物をゴックンと飲み込むと、真面目な顔付きになった。
「……冒険者たちによるクエスト受注拒否の件ね。今、強制招集以外ではクエストが動いていないと聞いたわ。あれは私も気にしていたところなの。難しいところよね。私は行っても構わないんだけど、足並み揃えないと、他の冒険者たちから反発があるんだもの。」

 そうなのか。じゃあ、全員が全員、ストライキに賛成してるってわけでもないのかな。
「Dランク以下の冒険者たちは、冒険者以外の仕事が選べなくてなっている人たちがとても多いわ。他に選べるのなら、別に冒険者なんてやりたくないという人たちもいるでしょうね。危険な仕事だもの。」
 ふむ。確かに死と隣り合わせだからな。

「逆にCランク以上になってくると、冒険者しか出来なくて始め出した人たちも、冒険者で一攫千金を夢見るようになるわ。大きく稼げるようになるのはBランクから。引退して冒険者ギルドのギルドのギルド長という、安定した仕事につけるのもそこからよ。
 くだんの冒険者はBランク。これからってところで許可証を奪われたのだから、……当然納得はいかないでしょうね。」

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