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第96話 瘴気にとらわれた理由③
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カイアは目の前にいる、可愛らしい樹木の妖精さんの姿に、パアアアアッと目を輝かせて見つめていたかと思うと、そっと妖精さんたちに近付こうと歩み寄ったのだが。
「チチッ!チチィ!」
樹木の妖精たちは一斉に駆け出すと、カイアのまわりをぐるりと取り囲むようにして、ピッと背筋を伸ばしてカイアを見上げた。
「ピョッ!?ピョル!?」
カイアがその様子に驚いて、俺に助けを求めてくるように目線を向けた。
「なんてことだ……。本当にドライアド様だとは。こいつらが平伏しとる。」
「これってそういうことなんですか?」
驚いてカイアと妖精たちの様子を見ているアンデオールさんにそうたずねた。
「ああ。死んだのはこいつらをまとめていた子たちだったんだが、その子たちにもよく同じことをしていたよ。」
「……そうだったんですね。
カイア、だいじょうぶだ、この子たちはお前のお仲間みたいなものだから、そういう風にしてくれているらしいぞ。」
俺の言葉に少しだけ安心したような表情を見せたものの、仲良くしようというよりは、従いますって感じのポーズだからか、カイアはやっぱり少し戸惑った様子だった。
妖精さんたちはとっても可愛らしいから、カイアとしてはお友だちになりたかったんだろうからな。すっかり気に入ってたみたいだし。まあこれが精霊と妖精の関係性だと言われれば仕方がないんだが。
「カイアは瘴気を払う力を持っています。ですが俺はこの子を自分の子どもとして育てているので、俺としては危険な目には合わせたくないとも思っています。なので、少し離れたところからガードしながら、瘴気を払えるか試してみようと思っているのです。」
俺がアンデオールさんにそう告げると、やはり期待に満ちた表情をしたあとで、少し悲しげな表情を浮かべた。
必ず助けられるわけじゃないと知って、がっかりしちまったんだろうな。だが俺としてはカイアを危険な目に合わせてまで、妖精を助けるつもりはなかった。何よりもカイアの安全が第一優先だ。これは譲らない。
「そうか……。それでなんとかなってくれたらいいが。申し訳ないが、ドライアド様にお願いしてもいいだろうか?」
「はい、必ずや……とまでは言えませんが、出来ることなら助けたいです。その、瘴気にとらわれたという、妖精の子どものところまで案内してはいただけませんでしょうか?」
「分かった、ついて来てくれ。」
アンデオールさんはさっき入って来た、室内に通じる方の納屋のドアに、内側から鍵をかけると、外に通じるドアの鍵をあけた。
「こっちだ。」
アンデオールさんは、外に通じるドアにも鍵をかけて、妖精たちをついて来させないようにしたもんだから、アンデオールさんを守るつもりでいる妖精たちが、中で焦って、チチィ!チチィ!と鳴いているのが聞こえる。
「すまない、お前たちをこれ以上危険な目には合わせられんのだ。」
俺にとってカイアの安全が何よりも最優先なように、アンデオールさんにとっては妖精たちの安全が最優先なのだろう。
妖精たちの悲しげな鳴き声に後ろ髪をひかれながら、アンデオールさんについて森の中を進んでゆくと、やがて木々が開けたところに出て、アンデオールさんがこの先だ、と言った。アンデオールさんを見てうなずく。
俺は魔法陣を印刷した清められた紙を取り出し、いつでも唱えられるようにした。
「瘴気に取り憑かれた妖精さんが現れたら、まずはお父さんが魔法陣で妖精さんが逃げないように動きを封じるから、カイアはそこにいて瘴気をはらえるか試してみてくれ。」
俺がそう言うと、カイアは俺を見ながら体を倒してコックリとうなずいた。
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「チチッ!チチィ!」
樹木の妖精たちは一斉に駆け出すと、カイアのまわりをぐるりと取り囲むようにして、ピッと背筋を伸ばしてカイアを見上げた。
「ピョッ!?ピョル!?」
カイアがその様子に驚いて、俺に助けを求めてくるように目線を向けた。
「なんてことだ……。本当にドライアド様だとは。こいつらが平伏しとる。」
「これってそういうことなんですか?」
驚いてカイアと妖精たちの様子を見ているアンデオールさんにそうたずねた。
「ああ。死んだのはこいつらをまとめていた子たちだったんだが、その子たちにもよく同じことをしていたよ。」
「……そうだったんですね。
カイア、だいじょうぶだ、この子たちはお前のお仲間みたいなものだから、そういう風にしてくれているらしいぞ。」
俺の言葉に少しだけ安心したような表情を見せたものの、仲良くしようというよりは、従いますって感じのポーズだからか、カイアはやっぱり少し戸惑った様子だった。
妖精さんたちはとっても可愛らしいから、カイアとしてはお友だちになりたかったんだろうからな。すっかり気に入ってたみたいだし。まあこれが精霊と妖精の関係性だと言われれば仕方がないんだが。
「カイアは瘴気を払う力を持っています。ですが俺はこの子を自分の子どもとして育てているので、俺としては危険な目には合わせたくないとも思っています。なので、少し離れたところからガードしながら、瘴気を払えるか試してみようと思っているのです。」
俺がアンデオールさんにそう告げると、やはり期待に満ちた表情をしたあとで、少し悲しげな表情を浮かべた。
必ず助けられるわけじゃないと知って、がっかりしちまったんだろうな。だが俺としてはカイアを危険な目に合わせてまで、妖精を助けるつもりはなかった。何よりもカイアの安全が第一優先だ。これは譲らない。
「そうか……。それでなんとかなってくれたらいいが。申し訳ないが、ドライアド様にお願いしてもいいだろうか?」
「はい、必ずや……とまでは言えませんが、出来ることなら助けたいです。その、瘴気にとらわれたという、妖精の子どものところまで案内してはいただけませんでしょうか?」
「分かった、ついて来てくれ。」
アンデオールさんはさっき入って来た、室内に通じる方の納屋のドアに、内側から鍵をかけると、外に通じるドアの鍵をあけた。
「こっちだ。」
アンデオールさんは、外に通じるドアにも鍵をかけて、妖精たちをついて来させないようにしたもんだから、アンデオールさんを守るつもりでいる妖精たちが、中で焦って、チチィ!チチィ!と鳴いているのが聞こえる。
「すまない、お前たちをこれ以上危険な目には合わせられんのだ。」
俺にとってカイアの安全が何よりも最優先なように、アンデオールさんにとっては妖精たちの安全が最優先なのだろう。
妖精たちの悲しげな鳴き声に後ろ髪をひかれながら、アンデオールさんについて森の中を進んでゆくと、やがて木々が開けたところに出て、アンデオールさんがこの先だ、と言った。アンデオールさんを見てうなずく。
俺は魔法陣を印刷した清められた紙を取り出し、いつでも唱えられるようにした。
「瘴気に取り憑かれた妖精さんが現れたら、まずはお父さんが魔法陣で妖精さんが逃げないように動きを封じるから、カイアはそこにいて瘴気をはらえるか試してみてくれ。」
俺がそう言うと、カイアは俺を見ながら体を倒してコックリとうなずいた。
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