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第94話 冒険者ギルドの緊急招集④
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カイアは表情に出やすいから、言葉はわかならくても大抵の場合は、言いたいことが分かるんだが、今回はさすがに何を言っているのか分からない。
「すまないカイア、分からない……。
ごめんな、お父さん、カイアの言葉が分かってあげられなくて……。」
俺がそう言うと、カイアはしょんぼりとしてうつむいてしまった。いつかカイアとアエラキが人の言葉を話せるようになるまでは、時々こうしたことがおこるんだろうなあ。
すると今度はアエラキが、急に風魔法を使って空中に浮かび上がったかと思うと、カイアと俺の周囲をクルクルと飛び始めた。
そうして俺の方をじっと見てくる。
「なんだ?今度はアエラキまで、いったいどうしたっていうんだ?」
するとカイアがアエラキに枝の手をかざして、カイアもアエラキも幻想的な金色の光に包まれる。……待てよ?この光景どこかで見たような気がするぞ?
「……ひょっとして、アエラキのお父さんを助けた時のことを再現してるのか?」
「ピョッ!ピョル!!」
カイアが嬉しそうに枝の手をフリフリしてニコーッと笑う。
「助けた?カイアちゃんが、アエラキちゃんのお父さんを?どういうこと?」
円璃花が不思議そうに聞いてくる。
「それがな……。アエラキもカーバンクルっていう精霊なんだが、以前アエラキのお父さんも、瘴気につかまって操られちまったことがあってな。それをカイアが瘴気を払って助けたのさ。カイアはドライアドって精霊の子株なんだが、その兄弟の子株いわく、精霊は瘴気を払う力を持つことがあるらしい。」
「つまりカイアちゃんは、私の代わりに自分が行くと言っているんじゃない?アエラキちゃんのお父さんを助けた時みたく、譲次の為に妖精の瘴気をはらおうってことでしょ?
だってカイアちゃんは譲次の守護精霊なんですものね。譲次が妖精を助けたいのなら、なんとか手伝ってあげたいのよね?」
円璃花の言葉に、カイアがコクコクとうなずく。首がないから体ごと倒す感じで。
「──駄目だ駄目だ、カイアにそんな危ないことはやらせられない。アエラキのお父さんの時だって、凶暴になって大変だったんだ。アエラキはお父さんに攻撃されて死にかけたんだぞ?またそんなことにでもなったらどうするんだ。カイアを連れて行く気はない。」
俺がそう言うと、カイアはしょんぼりしてしまった。
「私、まだ瘴気にかかった魔物やら生き物やらを解放したことはないけど、それって相手に近付かないと駄目なものなの?」
「それは分からない。ただ相手に触れたところは見たことがないが、カイアはいつも対象物に近いところで魔法を使っていたからな。近くないと駄目かも知れない。」
「そうなの。案外不便なのね。」
「……いや、待てよ……。」
「どうしたの?」
「カイアがこの間雨を降らせたことがあったんだが、それは空に手をかざしただけだったな……。雲に手が届くはずもないしな……。」
俺はラグナス村長の村での出来事を思い出していた。あの時は空に枝を向けただけだ。
「それなら、安全なところからでも出来るのかも知れなくない?一度試してみたらどうかしら。それで駄目なら討伐する。それならカイアちゃんも危なくないでしょう?
譲次は妖精さんたちを助けたい、カイアちゃんはそんな譲次を助けたい。だったら試さずに討伐する手はないんじゃないかしら。」
「ううん……。」
俺は腕組みをしながらうなった。しばらく思案した結果、
「──カイア、お父さんと一緒に、遠くから妖精さんたちの瘴気を払えるか、試してくれるか?決して無理をしたら駄目だぞ?」
俺がそう言うと、カイアは嬉しそうにピョルッ!ピョルッ!と枝を振ったのだった。
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「すまないカイア、分からない……。
ごめんな、お父さん、カイアの言葉が分かってあげられなくて……。」
俺がそう言うと、カイアはしょんぼりとしてうつむいてしまった。いつかカイアとアエラキが人の言葉を話せるようになるまでは、時々こうしたことがおこるんだろうなあ。
すると今度はアエラキが、急に風魔法を使って空中に浮かび上がったかと思うと、カイアと俺の周囲をクルクルと飛び始めた。
そうして俺の方をじっと見てくる。
「なんだ?今度はアエラキまで、いったいどうしたっていうんだ?」
するとカイアがアエラキに枝の手をかざして、カイアもアエラキも幻想的な金色の光に包まれる。……待てよ?この光景どこかで見たような気がするぞ?
「……ひょっとして、アエラキのお父さんを助けた時のことを再現してるのか?」
「ピョッ!ピョル!!」
カイアが嬉しそうに枝の手をフリフリしてニコーッと笑う。
「助けた?カイアちゃんが、アエラキちゃんのお父さんを?どういうこと?」
円璃花が不思議そうに聞いてくる。
「それがな……。アエラキもカーバンクルっていう精霊なんだが、以前アエラキのお父さんも、瘴気につかまって操られちまったことがあってな。それをカイアが瘴気を払って助けたのさ。カイアはドライアドって精霊の子株なんだが、その兄弟の子株いわく、精霊は瘴気を払う力を持つことがあるらしい。」
「つまりカイアちゃんは、私の代わりに自分が行くと言っているんじゃない?アエラキちゃんのお父さんを助けた時みたく、譲次の為に妖精の瘴気をはらおうってことでしょ?
だってカイアちゃんは譲次の守護精霊なんですものね。譲次が妖精を助けたいのなら、なんとか手伝ってあげたいのよね?」
円璃花の言葉に、カイアがコクコクとうなずく。首がないから体ごと倒す感じで。
「──駄目だ駄目だ、カイアにそんな危ないことはやらせられない。アエラキのお父さんの時だって、凶暴になって大変だったんだ。アエラキはお父さんに攻撃されて死にかけたんだぞ?またそんなことにでもなったらどうするんだ。カイアを連れて行く気はない。」
俺がそう言うと、カイアはしょんぼりしてしまった。
「私、まだ瘴気にかかった魔物やら生き物やらを解放したことはないけど、それって相手に近付かないと駄目なものなの?」
「それは分からない。ただ相手に触れたところは見たことがないが、カイアはいつも対象物に近いところで魔法を使っていたからな。近くないと駄目かも知れない。」
「そうなの。案外不便なのね。」
「……いや、待てよ……。」
「どうしたの?」
「カイアがこの間雨を降らせたことがあったんだが、それは空に手をかざしただけだったな……。雲に手が届くはずもないしな……。」
俺はラグナス村長の村での出来事を思い出していた。あの時は空に枝を向けただけだ。
「それなら、安全なところからでも出来るのかも知れなくない?一度試してみたらどうかしら。それで駄目なら討伐する。それならカイアちゃんも危なくないでしょう?
譲次は妖精さんたちを助けたい、カイアちゃんはそんな譲次を助けたい。だったら試さずに討伐する手はないんじゃないかしら。」
「ううん……。」
俺は腕組みをしながらうなった。しばらく思案した結果、
「──カイア、お父さんと一緒に、遠くから妖精さんたちの瘴気を払えるか、試してくれるか?決して無理をしたら駄目だぞ?」
俺がそう言うと、カイアは嬉しそうにピョルッ!ピョルッ!と枝を振ったのだった。
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