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第92話 初めての野菜収穫③
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俺は折りたたみ式輸送コンテナをマジックバッグの中にしまうと、
「じゃあ、急いで村に届けてくるから、すまないが2人を見ていて貰ってもいいか?」
と円璃花に尋ねた。
「構わないわ。行ってらっしゃい。」
「行って来る。」
俺は再びラグナス村長の村を尋ね、大量の野菜をラグナス村長に手渡した。俺の世界の野菜なので、こちらの世界にはないものもある。特にこちらの世界のトマトは元々塩気のある味で、なおかつホオズキの外側の袋みたいな見た目だからな。
なのでどんな野菜でどんな料理が合うかを簡単にメモしたものも一緒に手渡した。カイアが育てたということは内緒にしておいた。
俺はその足で王立図書館に立ち寄った。精霊について調べる為だ。王立図書館では冒険者登録証があれば、持ち出しは不可だが自由に閲覧することが出来る。
職員に尋ねて、精霊の役割や、どんなことが出来るのか、この世界にはどんな精霊がいて、どの程度人間に力を貸すものであるのかについて書いてある本が読みたいと言ったのだが、精霊は神秘なものであるらしく、閲覧自由な本の中には、あまり存在しないと言われてしまった。
「詳しいものがあるとすれば、王家所有の蔵書のみになると思いますよ。我々では閲覧することの出来ないものになります。」
とのことだった。そもそも魔塔という研究機関のある魔法と比べると、研究している人の数が少ないらしい。それでもいくつかはあったので、それを借りて読むことにした。
精霊というものは、日本の八百万の神のように、ありとあらゆる色んな精霊がいるらしかった。また、中にはトレントのように悪霊になってしまう精霊もいる。
魔物は元が瘴気にやられた動物や人間であるのに対し、精霊はもとから精霊という聖なる存在で、悪霊になっても、討伐対象ではあるが、魔物とは一応扱いが異なるらしい。
カーバンクルのように子をなして繁殖する精霊もいるが、繁殖方法は交尾ではなく、互いの聖なる力を混ぜ合わせて子どもを作るとされているらしい。
親株が一代限りの子株を作るドライアドはかなり珍しく、単体生殖ではなく分裂にあたる為、基本親株と同じ存在であるとのこと。
本来一代限りの分裂の筈が、カイアは親株になれると、コボルトの集落のドライアドが言っていたが、この本から見てもそれはかなり珍しいことのようだ。
力の弱い精霊は一代限りで、人の守護をするが、コボルトの集落のドライアドの子株のように、場所や集団、果ては国家を守護した場合は、強い力でそれを助けることもある。
また弱い精霊は人に見える姿を取れないことも多く、守護されていることに気が付かない人も多いのだとか。樹木の精霊王であるドライアドのカイアは、もとからかなり強い存在であるということになるわけだ。
カーバンクルのアエラキもだが。
ちなみに聖女が手に入れる聖獣についても調べようとしたが、なんの本もなかった。
カイアの兄弟株がどのくらい世界に散っているのかは分からないが、常時姿を見せられる点においても、植物の成長操作の点においても、やはり珍しいほうであると言えるだろう。雨を降らせるくらいであれば、他にも水の精霊や山の精霊など、使える精霊がいると書いてあったから、知られてもそこまで問題がなさそうだが、植物の成長操作は国家を揺るがすレベルの能力だ。
……仮に他国に対して植物を成長させないように力を使った場合、戦わずして戦争に勝つことすら可能になるだろう。
塩。水。食料。これらは人が生きていくにおいて欠かせないものだ。兵糧攻めをすることの出来る精霊なのだ、植物の中の精霊王である、ドライアドという種族は。
そんなことにカイアを加担させるわけにはいかない。他のドライアドの子株たちは、ひっそりと森に散らばっているというから、人に気が付かれずに大きくなるまで成長するのかも知れないが、カイアは俺を守護しているわけだからな。
万が一俺を人質に取られるようなことでもあれば……。無理やり協力させられてしまうこともあるかも知れない。この国の王家は信頼に足る人物たちだが、どこから情報が漏れるとも分からない。もしもそうなった場合、俺にはカイアを守りきれる力がない。
カイアがコボルトの集落のドライアドのように、せめて自分で自分を守れるくらいの力を手に入れるまでは、黙っておいたほうがいいかも知れないな。
俺は本を返却し、職員にお礼を言って王立図書館をあとにした。
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「じゃあ、急いで村に届けてくるから、すまないが2人を見ていて貰ってもいいか?」
と円璃花に尋ねた。
「構わないわ。行ってらっしゃい。」
「行って来る。」
俺は再びラグナス村長の村を尋ね、大量の野菜をラグナス村長に手渡した。俺の世界の野菜なので、こちらの世界にはないものもある。特にこちらの世界のトマトは元々塩気のある味で、なおかつホオズキの外側の袋みたいな見た目だからな。
なのでどんな野菜でどんな料理が合うかを簡単にメモしたものも一緒に手渡した。カイアが育てたということは内緒にしておいた。
俺はその足で王立図書館に立ち寄った。精霊について調べる為だ。王立図書館では冒険者登録証があれば、持ち出しは不可だが自由に閲覧することが出来る。
職員に尋ねて、精霊の役割や、どんなことが出来るのか、この世界にはどんな精霊がいて、どの程度人間に力を貸すものであるのかについて書いてある本が読みたいと言ったのだが、精霊は神秘なものであるらしく、閲覧自由な本の中には、あまり存在しないと言われてしまった。
「詳しいものがあるとすれば、王家所有の蔵書のみになると思いますよ。我々では閲覧することの出来ないものになります。」
とのことだった。そもそも魔塔という研究機関のある魔法と比べると、研究している人の数が少ないらしい。それでもいくつかはあったので、それを借りて読むことにした。
精霊というものは、日本の八百万の神のように、ありとあらゆる色んな精霊がいるらしかった。また、中にはトレントのように悪霊になってしまう精霊もいる。
魔物は元が瘴気にやられた動物や人間であるのに対し、精霊はもとから精霊という聖なる存在で、悪霊になっても、討伐対象ではあるが、魔物とは一応扱いが異なるらしい。
カーバンクルのように子をなして繁殖する精霊もいるが、繁殖方法は交尾ではなく、互いの聖なる力を混ぜ合わせて子どもを作るとされているらしい。
親株が一代限りの子株を作るドライアドはかなり珍しく、単体生殖ではなく分裂にあたる為、基本親株と同じ存在であるとのこと。
本来一代限りの分裂の筈が、カイアは親株になれると、コボルトの集落のドライアドが言っていたが、この本から見てもそれはかなり珍しいことのようだ。
力の弱い精霊は一代限りで、人の守護をするが、コボルトの集落のドライアドの子株のように、場所や集団、果ては国家を守護した場合は、強い力でそれを助けることもある。
また弱い精霊は人に見える姿を取れないことも多く、守護されていることに気が付かない人も多いのだとか。樹木の精霊王であるドライアドのカイアは、もとからかなり強い存在であるということになるわけだ。
カーバンクルのアエラキもだが。
ちなみに聖女が手に入れる聖獣についても調べようとしたが、なんの本もなかった。
カイアの兄弟株がどのくらい世界に散っているのかは分からないが、常時姿を見せられる点においても、植物の成長操作の点においても、やはり珍しいほうであると言えるだろう。雨を降らせるくらいであれば、他にも水の精霊や山の精霊など、使える精霊がいると書いてあったから、知られてもそこまで問題がなさそうだが、植物の成長操作は国家を揺るがすレベルの能力だ。
……仮に他国に対して植物を成長させないように力を使った場合、戦わずして戦争に勝つことすら可能になるだろう。
塩。水。食料。これらは人が生きていくにおいて欠かせないものだ。兵糧攻めをすることの出来る精霊なのだ、植物の中の精霊王である、ドライアドという種族は。
そんなことにカイアを加担させるわけにはいかない。他のドライアドの子株たちは、ひっそりと森に散らばっているというから、人に気が付かれずに大きくなるまで成長するのかも知れないが、カイアは俺を守護しているわけだからな。
万が一俺を人質に取られるようなことでもあれば……。無理やり協力させられてしまうこともあるかも知れない。この国の王家は信頼に足る人物たちだが、どこから情報が漏れるとも分からない。もしもそうなった場合、俺にはカイアを守りきれる力がない。
カイアがコボルトの集落のドライアドのように、せめて自分で自分を守れるくらいの力を手に入れるまでは、黙っておいたほうがいいかも知れないな。
俺は本を返却し、職員にお礼を言って王立図書館をあとにした。
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