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第91話 食用花のイタリアンドレッシング⑤
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「ただいま戻りました。」
「おかえりなさい、ジョージ。」
馬車で村に戻り、再びガーリンさんの家を尋ねる。ガーリンさんたちは既に昼食を食べている真っ最中のようだった。
「いかがでしょうか?村長!」
「……ジョージのおかげだ。
村がこれから潤うぞ!」
ラグナス村長の声に、椅子から立ち上がっていたガーリンさんは、慌てて村長に駆け寄ろうとしてけつまずき、悲鳴を上げた。
「あなた、落ち着いてくださいな。」
マイヤーさんにクスクス笑われてしまう。
「前祝いにみんなでお祝いがしたいな。
最近ずっと悪い話題ばかりだったんだ。
みんなを楽しませてやりたい。」
ラグナス村長村長の言葉に、
「いいですね、せっかくですから、ジョージのこのドレッシングを使って、少ないですがサラダを作ってみんなで食べましょう。」
とガーリンさんが応じる。
「ああ。そうでした、今日はアエラキの紹介だけでなく、みなさんにおすそわけに来たんでした。
ラグナス村長の家をお借りしても?」
「もちろんだよ、ジョージ!」
「では、みなさんを集めてください。一緒に楽しみましょう。」
ラグナス村長が一軒一軒声をかけ、村人たちがラグナス村長の家の1階に集まった。この村で一番大きなラグナス村長の自宅は村の集会場もかねている。
「さあ、ジョージの作ってくれた食用花のドレッシングを使ったサラダだ。」
「唐揚げも作ってきましたよ。」
村のみんなが、わあっ!と声を上げる。
みんなワイワイモリモリと料理を食べだした。とても嬉しそうで俺も嬉しい。
「……あとはこれで雨がふってくれたらいいのだけれどね……。」
マイヤーさんがポツリと呟く。
「──ん?どうした?カイア。」
カイアが俺のズボンの裾をクイクイッと引っ張ってくる。
「なんだ?外に出たいのか?」
自分でドアノブがあけられないカイアが、ラグナス村長の家のドアの前に立ち俺を振り返って見上げている。
「外に何かあるのか?」
ドアをあけてやると、カイアが外に出て、村の畑の前で空を見上げた。みんなも、なんだなんだと家の中からそれを見ている。
「ピョルル!」
高々と掲げたカイアの両方の枝の手の先から光が溢れたかと思うと、それが空にまっすぐにのびて吸い込まれていった。
──ポツッ。ポツポツッ。シトシトシト。
「雨だ!」
「大変!洗濯物が!」
突如として雨が降り出し、奥さんたちがラグナス村長の家から飛び出して、慌てて外に干していた洗濯物をかき集めて我が家に放り込んでいく。
「ピョッ!ピョルルッ!」
その様子を見て、やってしまった!という表情で俺を見上げるカイア。
「──だいじょうぶよ、カイアちゃん、雨を降らせるなんてすごいわ!」
「そうよ!気にしないで!ありがとうね!」
戻ってきた奥さんたちから、口々にお礼を言われて、カイアはホッとしたような表情を浮かべた。
「これで畑も元気になるかしら。」
「ええ。これからは、雨が降らない時は自宅で苗まで育ててから、植えるようにしてみてください。やり方はお教えしますので。」
ラグナス村長の自宅に戻り、みんなの持ち寄ってくれた料理に舌鼓をうちながらそう答える。
「──あ、そうだ。よかったらこちらもどうぞ。食べきらないのでおすそわけです。」
俺はあいたテーブルの上にシートを出して広げる。みんなが注目した。
先日狩ってからマジックバッグに入れたままなのを忘れていた、ナインテイルを冒険者ギルドで解体して貰っていた俺は、その肉をどっさりと、シートの上に乗せた。
「こ、これを全部?」
みんな目がまんまるだ。
「当分はこれでだいじょうぶだ、本当にありがとう、ジョージ。」
俺は感極まったラグナス村長と、今日は特別ですからね、とマイヤーさんに言われたガーリンさんと共に、昼間っから酒を楽しんだのだった。
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「おかえりなさい、ジョージ。」
馬車で村に戻り、再びガーリンさんの家を尋ねる。ガーリンさんたちは既に昼食を食べている真っ最中のようだった。
「いかがでしょうか?村長!」
「……ジョージのおかげだ。
村がこれから潤うぞ!」
ラグナス村長の声に、椅子から立ち上がっていたガーリンさんは、慌てて村長に駆け寄ろうとしてけつまずき、悲鳴を上げた。
「あなた、落ち着いてくださいな。」
マイヤーさんにクスクス笑われてしまう。
「前祝いにみんなでお祝いがしたいな。
最近ずっと悪い話題ばかりだったんだ。
みんなを楽しませてやりたい。」
ラグナス村長村長の言葉に、
「いいですね、せっかくですから、ジョージのこのドレッシングを使って、少ないですがサラダを作ってみんなで食べましょう。」
とガーリンさんが応じる。
「ああ。そうでした、今日はアエラキの紹介だけでなく、みなさんにおすそわけに来たんでした。
ラグナス村長の家をお借りしても?」
「もちろんだよ、ジョージ!」
「では、みなさんを集めてください。一緒に楽しみましょう。」
ラグナス村長が一軒一軒声をかけ、村人たちがラグナス村長の家の1階に集まった。この村で一番大きなラグナス村長の自宅は村の集会場もかねている。
「さあ、ジョージの作ってくれた食用花のドレッシングを使ったサラダだ。」
「唐揚げも作ってきましたよ。」
村のみんなが、わあっ!と声を上げる。
みんなワイワイモリモリと料理を食べだした。とても嬉しそうで俺も嬉しい。
「……あとはこれで雨がふってくれたらいいのだけれどね……。」
マイヤーさんがポツリと呟く。
「──ん?どうした?カイア。」
カイアが俺のズボンの裾をクイクイッと引っ張ってくる。
「なんだ?外に出たいのか?」
自分でドアノブがあけられないカイアが、ラグナス村長の家のドアの前に立ち俺を振り返って見上げている。
「外に何かあるのか?」
ドアをあけてやると、カイアが外に出て、村の畑の前で空を見上げた。みんなも、なんだなんだと家の中からそれを見ている。
「ピョルル!」
高々と掲げたカイアの両方の枝の手の先から光が溢れたかと思うと、それが空にまっすぐにのびて吸い込まれていった。
──ポツッ。ポツポツッ。シトシトシト。
「雨だ!」
「大変!洗濯物が!」
突如として雨が降り出し、奥さんたちがラグナス村長の家から飛び出して、慌てて外に干していた洗濯物をかき集めて我が家に放り込んでいく。
「ピョッ!ピョルルッ!」
その様子を見て、やってしまった!という表情で俺を見上げるカイア。
「──だいじょうぶよ、カイアちゃん、雨を降らせるなんてすごいわ!」
「そうよ!気にしないで!ありがとうね!」
戻ってきた奥さんたちから、口々にお礼を言われて、カイアはホッとしたような表情を浮かべた。
「これで畑も元気になるかしら。」
「ええ。これからは、雨が降らない時は自宅で苗まで育ててから、植えるようにしてみてください。やり方はお教えしますので。」
ラグナス村長の自宅に戻り、みんなの持ち寄ってくれた料理に舌鼓をうちながらそう答える。
「──あ、そうだ。よかったらこちらもどうぞ。食べきらないのでおすそわけです。」
俺はあいたテーブルの上にシートを出して広げる。みんなが注目した。
先日狩ってからマジックバッグに入れたままなのを忘れていた、ナインテイルを冒険者ギルドで解体して貰っていた俺は、その肉をどっさりと、シートの上に乗せた。
「こ、これを全部?」
みんな目がまんまるだ。
「当分はこれでだいじょうぶだ、本当にありがとう、ジョージ。」
俺は感極まったラグナス村長と、今日は特別ですからね、とマイヤーさんに言われたガーリンさんと共に、昼間っから酒を楽しんだのだった。
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