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第79話 ジョスラン侍従長の祖父目線②
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喫茶店でコーヒーを単体で頼むと高いが、食事とセットにするとお安くなるようなものか。悪くないな。
料理は誰でも食べられる値段にするつもりだし、それなら平民にも愉しんで貰える。
「上級貴族はどうせ直接店舗には来ませんからね。問題は下級貴族が安く飲めるオンバ茶を目当てに店を占拠して、平民や王宮職員たちが入りづらくならないかということが心配です。」
とエドモンドさんが言った。
「確かに……。お金をたくさん落とすわけではないのに、我が物顔で店を占拠してなかなか出ていかないと、王宮職員たちからも聞いたことがあるわ。ジョージが買おうとしていた土地付き店舗の以前の店は、それで売上が悪くなったところに家賃を引き上げられて潰れてしまったのだと聞いているわ。」
「それでは、時間制にして、完全入れ替え制度にしたほうがいいでしょうね。
事前予約を受け付けて、特に昼時はこのあたりで働いている方たちを優先したいと思っています。それを可能にするにはどうしたらいいでしょうか?」
なにせ電話がないのだ、この世界。
うーん、という表情で、セレス様とパトリシア王女がうなる。
「発言をよろしいでしょうか?」
とジョスラン侍従長が片手を上げた。
「あら、めずらしいわね、どうぞ?」
セレス様が笑顔で言った。
「王宮職員を始めとする、このあたりで働く従業員の予約を、昼時は優先すると言っていただけるのであれば、王宮はわたくしを通じて。このあたりの店舗の従業員には商人ギルドを通じて。ひと月に一人1枚、優先券を配るというのはどうでしょうか?」
「優先券?」
パトリシア王女が不思議そうに首をかしげる。
「貴族街で働く従業員は、商人ギルドを通じて店舗が従業員の申請をし、身分の保証がないと働くことができません。王宮もまたしかりです。そこを利用するのです。」
「えーと、つまり、どういうこと?」
セレス様が困惑したように言う。
「商人ギルドに登録している人間は、商人ギルドから配布される身分証を持っています。大半の店は商人ギルドを通じて、身分証に働いている店舗の給与が移行されるのです。」
「ええと……。すみません、移行のやり方がよく分からないので教えていただきたいのですが、それは身分証を直接本人が商人ギルドに持参しなくても可能なのでしょうか?」
俺はジョスラン侍従長に尋ねた。銀行振込のような制度があるということか?
「いいえ、直接窓口にくる必要があります。月に一度、給与の受け取りの為に商人ギルドにやってきて、身分証に給与を移行して貰うのです。戦争当時ですが、その際に、国が支給する配給引換証などを、身分証に付与した時代もありました。」
ええと……。つまり、マイナンバーカードと、電子マネー決済カードが、一緒になってるようなもんか?そこにクーポンを添付出来る……。ペイ決済みたいな感じかな?
「もちろん現金で給与手渡しの店舗もありますが、大半はこちらを使っておりますね。」
「そこで俺たちの店の予約優先権を身分証を通じて配布する……ってことですか?
うちだけそんな好優遇をしていただいてもよろしいのでしょうか……。」
他の店舗からの反発がないだろうか?
「国も一律給与の支払い方法を切り替えるよう指導をすすめておりますが、まだまだ完全に浸透していないのが現状です。
ジョージ様の店は王室御用達。また土地建物売買にあたり、パトリシア様の保証がある状態です。国が介入することに違和感はないでしょう。」
「そうね、それでジョージの店が人気が出れば、王宮職員には福利厚生の一環になるし、商人ギルドを通じて給与の受け渡しをしていない店舗は、従業員からそれを求められることになって、自然と登録が増えるという寸法ね。国としても願ったりかなったりだわ。」
お互いウィンウィンというわけか。
「もちろん予約には直接店舗に事前に来てもらう必要がありますし、優先券を確認、承認する為の魔道具も必要となります。
そちらは王宮より配給いたします。
また、配給と同様に本人しか使えないものですので、転売も出来ません。」
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料理は誰でも食べられる値段にするつもりだし、それなら平民にも愉しんで貰える。
「上級貴族はどうせ直接店舗には来ませんからね。問題は下級貴族が安く飲めるオンバ茶を目当てに店を占拠して、平民や王宮職員たちが入りづらくならないかということが心配です。」
とエドモンドさんが言った。
「確かに……。お金をたくさん落とすわけではないのに、我が物顔で店を占拠してなかなか出ていかないと、王宮職員たちからも聞いたことがあるわ。ジョージが買おうとしていた土地付き店舗の以前の店は、それで売上が悪くなったところに家賃を引き上げられて潰れてしまったのだと聞いているわ。」
「それでは、時間制にして、完全入れ替え制度にしたほうがいいでしょうね。
事前予約を受け付けて、特に昼時はこのあたりで働いている方たちを優先したいと思っています。それを可能にするにはどうしたらいいでしょうか?」
なにせ電話がないのだ、この世界。
うーん、という表情で、セレス様とパトリシア王女がうなる。
「発言をよろしいでしょうか?」
とジョスラン侍従長が片手を上げた。
「あら、めずらしいわね、どうぞ?」
セレス様が笑顔で言った。
「王宮職員を始めとする、このあたりで働く従業員の予約を、昼時は優先すると言っていただけるのであれば、王宮はわたくしを通じて。このあたりの店舗の従業員には商人ギルドを通じて。ひと月に一人1枚、優先券を配るというのはどうでしょうか?」
「優先券?」
パトリシア王女が不思議そうに首をかしげる。
「貴族街で働く従業員は、商人ギルドを通じて店舗が従業員の申請をし、身分の保証がないと働くことができません。王宮もまたしかりです。そこを利用するのです。」
「えーと、つまり、どういうこと?」
セレス様が困惑したように言う。
「商人ギルドに登録している人間は、商人ギルドから配布される身分証を持っています。大半の店は商人ギルドを通じて、身分証に働いている店舗の給与が移行されるのです。」
「ええと……。すみません、移行のやり方がよく分からないので教えていただきたいのですが、それは身分証を直接本人が商人ギルドに持参しなくても可能なのでしょうか?」
俺はジョスラン侍従長に尋ねた。銀行振込のような制度があるということか?
「いいえ、直接窓口にくる必要があります。月に一度、給与の受け取りの為に商人ギルドにやってきて、身分証に給与を移行して貰うのです。戦争当時ですが、その際に、国が支給する配給引換証などを、身分証に付与した時代もありました。」
ええと……。つまり、マイナンバーカードと、電子マネー決済カードが、一緒になってるようなもんか?そこにクーポンを添付出来る……。ペイ決済みたいな感じかな?
「もちろん現金で給与手渡しの店舗もありますが、大半はこちらを使っておりますね。」
「そこで俺たちの店の予約優先権を身分証を通じて配布する……ってことですか?
うちだけそんな好優遇をしていただいてもよろしいのでしょうか……。」
他の店舗からの反発がないだろうか?
「国も一律給与の支払い方法を切り替えるよう指導をすすめておりますが、まだまだ完全に浸透していないのが現状です。
ジョージ様の店は王室御用達。また土地建物売買にあたり、パトリシア様の保証がある状態です。国が介入することに違和感はないでしょう。」
「そうね、それでジョージの店が人気が出れば、王宮職員には福利厚生の一環になるし、商人ギルドを通じて給与の受け渡しをしていない店舗は、従業員からそれを求められることになって、自然と登録が増えるという寸法ね。国としても願ったりかなったりだわ。」
お互いウィンウィンというわけか。
「もちろん予約には直接店舗に事前に来てもらう必要がありますし、優先券を確認、承認する為の魔道具も必要となります。
そちらは王宮より配給いたします。
また、配給と同様に本人しか使えないものですので、転売も出来ません。」
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