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第74話 イエティの正体②

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 ウサギみたいとはいえ、二足歩行で立っているんだから、スプーンを使って食べられると思うんだが、俺のことが怖いんだろうな。
「カイア、この子たちに見本を見せてやってくれないか?食べても大丈夫だぞ?って。」
 俺は差し出したマグカップを、ふうふうしてからカイアに渡した。

 カイアは絨毯の上に乗って、俺の渡したマグカップを、同じようにふうふうしてから一口飲んだ。ピョルッ!ピョルッ!と喜んで、お餅をスプーンで取り出して、嬉しそうに噛み締めている。それを見たオムツウサギたちが、顔を見合わせたあと、泣きそうな表情で一番前にいる子の顔を見る。

 一番前にいた子が、意を決して前に歩み出て、カイアの前に立った。
 カイアは食べかけのスープをその子に手渡した。オムツウサギの子が、そっとスープをすする。
「──!」
「食べられそうか?」

 急いで飲み込むようにお餅を食べるオムツウサギの子ども。そしてマグカップを持って慌てて兄弟たちの元へと戻ろうとする。
「ああ、ゆっくり噛まないと駄目だ。
 小さく切ってはあるけど、お餅は喉に詰まりやすいからな。」

 カイアが、こっちにおいで!とでも言うように、ピョルッ!ピョルッと鳴きながら、両方の枝を振って子どもたちにアピールする。
「ちゃんとおかわりも、お前の兄弟たちの分もあるから、ゆっくり食べなさい。」

 俺は新しいマグカップに、ワカメとお餅の中華スープを入れた。
 一番大きい子がコックリとうなずき、そろそろとオムツウサギの子どもたちがこちらに近寄ってくる。全員が絨毯の上に乗り、その暖かさに驚いていた。
 かわいらしいな、と、ふふっと笑う。

「渡してやってくれ、カイア。」
 俺が直接渡すより、カイアが渡したほうが安心だろう。なんか、会話が出来ているような気がしないでもないしな。
 俺から受け取ったマグカップを、カイアが子どもたちに1つずつ渡していく。

 カイアにも渡してやったら、こうするんだよ、と教えるかのように、ピョルッ!と言いながら、ふうふうして見せる。
 オムツウサギの子どもたちも、真似してマグカップをふうふうしている。
 なんて愛らしいんだろうか。

 みんな絨毯に座って、仲良く中華スープを飲みだした。美味しそうにお餅を噛んでいる顔は、カイアも含めて全員そっくりだった。
「おかわりいるか?」
 ようやく安心してくれたのだろうか。今度は直接俺の前に来て、並んでマグカップを差し出してくれた。カイアも並んでいる。

 カイアは朝ごはんを食べたんだけどな。
 お腹が刺激されちゃったかな?
 俺は順番に中華スープをついでやった。
 何度か並んで中華スープを貰い、ようやくお腹いっぱいになったらしく、オムツウサギの子どもたちは眠たそうにしていた。

「この子たちのお父さんお母さんが戻ってくる前に、洞窟を出ないとな。洞窟の中じゃ襲われたらひとたまりもないからな。」
 俺は子どもたちが乗っていたので絨毯をその場に残して、カイアを抱き上げて、オムツウサギの子どもたちにバイバイをした。

 だが洞窟の外に出た途端、先程とは様子が違っているのに気が付いた。2体の魔物が洞窟のすぐ近くで対峙していたのだ。どちらもウサギの耳のついた、額に赤い宝石を持つ巨大な魔物だったが、片方はその全身に黒いモヤがかかっていた。大人は別にオムツを履いていなかったが、見た目はとても似ていた。

 俺は思わずビクッとして、カイアを抱いたまま、一度洞窟の中に身を隠し、外の様子を伺った。カイアが心配そうに俺の顔を見上げてくる。
 モヤのかかっていないほうの巨体のウサギを、モヤのかかっているほうのウサギが、どうやら襲っているようだった。

 モヤのかかっていないウサギ──白ウサギは、モヤのかかっているウサギ──黒ウサギがこれ以上洞窟に近付かないように進路を塞いでいた。
 だが、抵抗虚しく、強大な力によって、白ウサギは黒ウサギに倒されてしまった。

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