228 / 432
第74話 イエティの正体②
しおりを挟む
ウサギみたいとはいえ、二足歩行で立っているんだから、スプーンを使って食べられると思うんだが、俺のことが怖いんだろうな。
「カイア、この子たちに見本を見せてやってくれないか?食べても大丈夫だぞ?って。」
俺は差し出したマグカップを、ふうふうしてからカイアに渡した。
カイアは絨毯の上に乗って、俺の渡したマグカップを、同じようにふうふうしてから一口飲んだ。ピョルッ!ピョルッ!と喜んで、お餅をスプーンで取り出して、嬉しそうに噛み締めている。それを見たオムツウサギたちが、顔を見合わせたあと、泣きそうな表情で一番前にいる子の顔を見る。
一番前にいた子が、意を決して前に歩み出て、カイアの前に立った。
カイアは食べかけのスープをその子に手渡した。オムツウサギの子が、そっとスープをすする。
「──!」
「食べられそうか?」
急いで飲み込むようにお餅を食べるオムツウサギの子ども。そしてマグカップを持って慌てて兄弟たちの元へと戻ろうとする。
「ああ、ゆっくり噛まないと駄目だ。
小さく切ってはあるけど、お餅は喉に詰まりやすいからな。」
カイアが、こっちにおいで!とでも言うように、ピョルッ!ピョルッと鳴きながら、両方の枝を振って子どもたちにアピールする。
「ちゃんとおかわりも、お前の兄弟たちの分もあるから、ゆっくり食べなさい。」
俺は新しいマグカップに、ワカメとお餅の中華スープを入れた。
一番大きい子がコックリとうなずき、そろそろとオムツウサギの子どもたちがこちらに近寄ってくる。全員が絨毯の上に乗り、その暖かさに驚いていた。
かわいらしいな、と、ふふっと笑う。
「渡してやってくれ、カイア。」
俺が直接渡すより、カイアが渡したほうが安心だろう。なんか、会話が出来ているような気がしないでもないしな。
俺から受け取ったマグカップを、カイアが子どもたちに1つずつ渡していく。
カイアにも渡してやったら、こうするんだよ、と教えるかのように、ピョルッ!と言いながら、ふうふうして見せる。
オムツウサギの子どもたちも、真似してマグカップをふうふうしている。
なんて愛らしいんだろうか。
みんな絨毯に座って、仲良く中華スープを飲みだした。美味しそうにお餅を噛んでいる顔は、カイアも含めて全員そっくりだった。
「おかわりいるか?」
ようやく安心してくれたのだろうか。今度は直接俺の前に来て、並んでマグカップを差し出してくれた。カイアも並んでいる。
カイアは朝ごはんを食べたんだけどな。
お腹が刺激されちゃったかな?
俺は順番に中華スープをついでやった。
何度か並んで中華スープを貰い、ようやくお腹いっぱいになったらしく、オムツウサギの子どもたちは眠たそうにしていた。
「この子たちのお父さんお母さんが戻ってくる前に、洞窟を出ないとな。洞窟の中じゃ襲われたらひとたまりもないからな。」
俺は子どもたちが乗っていたので絨毯をその場に残して、カイアを抱き上げて、オムツウサギの子どもたちにバイバイをした。
だが洞窟の外に出た途端、先程とは様子が違っているのに気が付いた。2体の魔物が洞窟のすぐ近くで対峙していたのだ。どちらもウサギの耳のついた、額に赤い宝石を持つ巨大な魔物だったが、片方はその全身に黒いモヤがかかっていた。大人は別にオムツを履いていなかったが、見た目はとても似ていた。
俺は思わずビクッとして、カイアを抱いたまま、一度洞窟の中に身を隠し、外の様子を伺った。カイアが心配そうに俺の顔を見上げてくる。
モヤのかかっていないほうの巨体のウサギを、モヤのかかっているほうのウサギが、どうやら襲っているようだった。
モヤのかかっていないウサギ──白ウサギは、モヤのかかっているウサギ──黒ウサギがこれ以上洞窟に近付かないように進路を塞いでいた。
だが、抵抗虚しく、強大な力によって、白ウサギは黒ウサギに倒されてしまった。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
「カイア、この子たちに見本を見せてやってくれないか?食べても大丈夫だぞ?って。」
俺は差し出したマグカップを、ふうふうしてからカイアに渡した。
カイアは絨毯の上に乗って、俺の渡したマグカップを、同じようにふうふうしてから一口飲んだ。ピョルッ!ピョルッ!と喜んで、お餅をスプーンで取り出して、嬉しそうに噛み締めている。それを見たオムツウサギたちが、顔を見合わせたあと、泣きそうな表情で一番前にいる子の顔を見る。
一番前にいた子が、意を決して前に歩み出て、カイアの前に立った。
カイアは食べかけのスープをその子に手渡した。オムツウサギの子が、そっとスープをすする。
「──!」
「食べられそうか?」
急いで飲み込むようにお餅を食べるオムツウサギの子ども。そしてマグカップを持って慌てて兄弟たちの元へと戻ろうとする。
「ああ、ゆっくり噛まないと駄目だ。
小さく切ってはあるけど、お餅は喉に詰まりやすいからな。」
カイアが、こっちにおいで!とでも言うように、ピョルッ!ピョルッと鳴きながら、両方の枝を振って子どもたちにアピールする。
「ちゃんとおかわりも、お前の兄弟たちの分もあるから、ゆっくり食べなさい。」
俺は新しいマグカップに、ワカメとお餅の中華スープを入れた。
一番大きい子がコックリとうなずき、そろそろとオムツウサギの子どもたちがこちらに近寄ってくる。全員が絨毯の上に乗り、その暖かさに驚いていた。
かわいらしいな、と、ふふっと笑う。
「渡してやってくれ、カイア。」
俺が直接渡すより、カイアが渡したほうが安心だろう。なんか、会話が出来ているような気がしないでもないしな。
俺から受け取ったマグカップを、カイアが子どもたちに1つずつ渡していく。
カイアにも渡してやったら、こうするんだよ、と教えるかのように、ピョルッ!と言いながら、ふうふうして見せる。
オムツウサギの子どもたちも、真似してマグカップをふうふうしている。
なんて愛らしいんだろうか。
みんな絨毯に座って、仲良く中華スープを飲みだした。美味しそうにお餅を噛んでいる顔は、カイアも含めて全員そっくりだった。
「おかわりいるか?」
ようやく安心してくれたのだろうか。今度は直接俺の前に来て、並んでマグカップを差し出してくれた。カイアも並んでいる。
カイアは朝ごはんを食べたんだけどな。
お腹が刺激されちゃったかな?
俺は順番に中華スープをついでやった。
何度か並んで中華スープを貰い、ようやくお腹いっぱいになったらしく、オムツウサギの子どもたちは眠たそうにしていた。
「この子たちのお父さんお母さんが戻ってくる前に、洞窟を出ないとな。洞窟の中じゃ襲われたらひとたまりもないからな。」
俺は子どもたちが乗っていたので絨毯をその場に残して、カイアを抱き上げて、オムツウサギの子どもたちにバイバイをした。
だが洞窟の外に出た途端、先程とは様子が違っているのに気が付いた。2体の魔物が洞窟のすぐ近くで対峙していたのだ。どちらもウサギの耳のついた、額に赤い宝石を持つ巨大な魔物だったが、片方はその全身に黒いモヤがかかっていた。大人は別にオムツを履いていなかったが、見た目はとても似ていた。
俺は思わずビクッとして、カイアを抱いたまま、一度洞窟の中に身を隠し、外の様子を伺った。カイアが心配そうに俺の顔を見上げてくる。
モヤのかかっていないほうの巨体のウサギを、モヤのかかっているほうのウサギが、どうやら襲っているようだった。
モヤのかかっていないウサギ──白ウサギは、モヤのかかっているウサギ──黒ウサギがこれ以上洞窟に近付かないように進路を塞いでいた。
だが、抵抗虚しく、強大な力によって、白ウサギは黒ウサギに倒されてしまった。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
292
お気に入りに追加
1,864
あなたにおすすめの小説
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる