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第73話 謎の洞窟④
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イエティが住むところは山頂近くの雪のあるところなので、まだまだだいぶ先だ。
俺の家の近くの山と違ってちょっと険しい坂道なので、今回は雪のあるところまで1人で登る予定だ。早く帰ることを目的にしているし、安全とは言い切れないからな。
黙々と山を登ると、雪が広がるところに出た。山頂まではまだまだ先だが、なだらかな広いスペースで、これならカイアと安全に雪遊びが出来そうだった。俺はカイアをマジックバッグから出してやると、俺のお手製の防寒具を着せてやった。
「似合うぞ、凄くかわいいな、カイア。」
カイアの胴体は太い幹なので、子ども向けの既製品の服は、どうしてもサイズが合わない。だから大人向けの防寒具の裾と袖を短くつめて、胴体に余裕のある感じの、地面を引きずらない程度の長さの服を作ってやった。
手には幼児用の親指だけある手袋をつけてやり、足にはお風呂の時のビニール袋を履かせて、その上から更に靴下を履かせた。
足の数が多いし、合う形の靴がどうしてもないからな。帽子はサイズが合うものがないので、耳あてをつけてやる。
パッと見、雪だるまのような姿だ。
「動きづらくないか?苦しくないか?」
カイアに尋ねるが、首を横に振らないので大丈夫ということなのだろう。
「ほら、カイア、雪だぞ~?初めて見るだろう?今日はこれで一緒に遊ぼうな。」
カイアはこわごわと雪の上に足を下ろす。靴下だからそんなに長くは遊ばせてやれないが、それでもきっと楽しいだろう。
俺はカイアに雪うさぎの作り方と、雪だるまの作り方を教えてやった。
「ウサギさん上手にできたな。」
俺のマネをして雪うさぎを作るカイア。
近くに落ちていた葉っぱと木の実で、目と耳を作ってやる。初めてにしてはなかなかに上手だった。親子雪うさぎが並んでいる。
続いて雪だるまを作る。カイアは楽しそうに雪玉をコロコロ転がしている。
カイアが作れる雪玉の大きさに合わせて、俺が雪だるまの下半身を作り、その上にカイアの作った雪玉を頭として乗せてやる。
「カイアにそっくりだな。」
カイアと同じ耳あてと、枝を胴体に刺して手を作り、同じ手袋を付けてやる。
カイアがしょんぼりしたような表情で、俺と雪だるまを交互に見てきた。
俺がそれしかつけてやらないから、雪だるまが寒そうに見えたのかな?
「雪だるまさんは寒くないんだぞ。
これはカイアとおそろいにする為につけてあげただけだから、雪だるまさんは心配しなくても大丈夫なんだ。」
そう言うと、ようやく納得したようでニッコリした。優しいなあ、カイアは。
その時、カイアがなにかに気が付いたかのようにあたりを見回しだした。
「どうしたんだ?カイア。」
カイアは突然ノソノソと、目的を持っているかのように、まっすぐ1つの方向を目指して歩き出した。
俺は不思議に思いながらその後をついていくと、目の前にぽっかりと洞窟が口をあけているのが見えた。
「中に入りたいのか?でも、何がいるかわからないから、危ないから駄目だぞ?」
そう言ったが、もの凄くしょんぼりした表情で俺を見上げてくる。
そして、なかなかその場から動こうとはしなかった。カイアにしては珍しいな、どうしたんだろうか。
「じゃあ、とりあえずお父さんが先に中に入って、危なくないかを確認してみるから、それで大丈夫だったらカイアも入っていいぞ。それでいいか?」
そう言うと、コックリとうなずいた。
「ここで待ってるんだぞ、怖いことがあったらすぐお父さんを呼ぶんだぞ?」
俺は電池式のLEDランタンを出し、電池を入れると、それを手に下げて前を照らしながら、カイアを洞窟の入り口に残し、恐る恐る洞窟の中に進んで行った。
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俺の家の近くの山と違ってちょっと険しい坂道なので、今回は雪のあるところまで1人で登る予定だ。早く帰ることを目的にしているし、安全とは言い切れないからな。
黙々と山を登ると、雪が広がるところに出た。山頂まではまだまだ先だが、なだらかな広いスペースで、これならカイアと安全に雪遊びが出来そうだった。俺はカイアをマジックバッグから出してやると、俺のお手製の防寒具を着せてやった。
「似合うぞ、凄くかわいいな、カイア。」
カイアの胴体は太い幹なので、子ども向けの既製品の服は、どうしてもサイズが合わない。だから大人向けの防寒具の裾と袖を短くつめて、胴体に余裕のある感じの、地面を引きずらない程度の長さの服を作ってやった。
手には幼児用の親指だけある手袋をつけてやり、足にはお風呂の時のビニール袋を履かせて、その上から更に靴下を履かせた。
足の数が多いし、合う形の靴がどうしてもないからな。帽子はサイズが合うものがないので、耳あてをつけてやる。
パッと見、雪だるまのような姿だ。
「動きづらくないか?苦しくないか?」
カイアに尋ねるが、首を横に振らないので大丈夫ということなのだろう。
「ほら、カイア、雪だぞ~?初めて見るだろう?今日はこれで一緒に遊ぼうな。」
カイアはこわごわと雪の上に足を下ろす。靴下だからそんなに長くは遊ばせてやれないが、それでもきっと楽しいだろう。
俺はカイアに雪うさぎの作り方と、雪だるまの作り方を教えてやった。
「ウサギさん上手にできたな。」
俺のマネをして雪うさぎを作るカイア。
近くに落ちていた葉っぱと木の実で、目と耳を作ってやる。初めてにしてはなかなかに上手だった。親子雪うさぎが並んでいる。
続いて雪だるまを作る。カイアは楽しそうに雪玉をコロコロ転がしている。
カイアが作れる雪玉の大きさに合わせて、俺が雪だるまの下半身を作り、その上にカイアの作った雪玉を頭として乗せてやる。
「カイアにそっくりだな。」
カイアと同じ耳あてと、枝を胴体に刺して手を作り、同じ手袋を付けてやる。
カイアがしょんぼりしたような表情で、俺と雪だるまを交互に見てきた。
俺がそれしかつけてやらないから、雪だるまが寒そうに見えたのかな?
「雪だるまさんは寒くないんだぞ。
これはカイアとおそろいにする為につけてあげただけだから、雪だるまさんは心配しなくても大丈夫なんだ。」
そう言うと、ようやく納得したようでニッコリした。優しいなあ、カイアは。
その時、カイアがなにかに気が付いたかのようにあたりを見回しだした。
「どうしたんだ?カイア。」
カイアは突然ノソノソと、目的を持っているかのように、まっすぐ1つの方向を目指して歩き出した。
俺は不思議に思いながらその後をついていくと、目の前にぽっかりと洞窟が口をあけているのが見えた。
「中に入りたいのか?でも、何がいるかわからないから、危ないから駄目だぞ?」
そう言ったが、もの凄くしょんぼりした表情で俺を見上げてくる。
そして、なかなかその場から動こうとはしなかった。カイアにしては珍しいな、どうしたんだろうか。
「じゃあ、とりあえずお父さんが先に中に入って、危なくないかを確認してみるから、それで大丈夫だったらカイアも入っていいぞ。それでいいか?」
そう言うと、コックリとうなずいた。
「ここで待ってるんだぞ、怖いことがあったらすぐお父さんを呼ぶんだぞ?」
俺は電池式のLEDランタンを出し、電池を入れると、それを手に下げて前を照らしながら、カイアを洞窟の入り口に残し、恐る恐る洞窟の中に進んで行った。
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