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第73話 謎の洞窟③
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「たくさん売れるといいな。
少しでも助けになるといいんだが。
──おいしいか?カイア。」
カイアは俺が小さく切ってやったレアステーキを、嬉しそうに食べていた。
レモンの皮は少し小さい子には苦いかなと思っていたが、ハーブソルトとしてほんの少し使っているだけだから、気にならないようだった。
山に登るのは明日の朝だから、今日はもうすることがない。もっとたくさんレモンのハーブソルトを作るのを手伝おうと思ったのだが、お客様にそこまでさせられませんと断られたので、部屋に戻って来たのだ。
俺は絵本を出してカイアに読んでやった。
かわいらしいクマが、ひたすらホットケーキの作り方を教えてくれる内容の絵本で、俺は子どもの頃、この絵本が大好きだった。俺のホットケーキの作り方は、いまだにこの絵本を参考にしている。料理の手順本としても優れた絵本だと思う。
フライパンを一度水濡れふきんで冷ましたり、ひっくり返すタイミングの、プツプツが出来た生地の状態が、本当にリアルに描いてあって、とても分かりやすいのだ。
初めて読んだあと、ホットケーキを作ってみたいと母にねだって作り、1人で上手に作れたことが嬉しかったのを覚えている。
カイアも興味を示したようで、家に帰ったら一緒にホットケーキを作ってみようかなあと思っている。
ホットケーキを1人でひっくり返すのは難しいだろうから手伝うが、ホットケーキならカイアでも上手に作れるだろうからな。
思えば母に買って貰った絵本で好きだったものは、大体何かしらの、俺の知らない食べ物が出てくるものばかりだった。
ゾウがコンクリートミキサー車のような車で作るアイスクリーム。2匹のネズミが巨大な鍋で作るカステラ。
駄々をこねる子どもが保育園の代わりに連れて行かれる園の童話に出て来た、生の刻んだ苺と苺ジャムを混ぜたサンドイッチ。
どれも作って食べてみた。アイスクリームはシャーベットになったし、カステラはそもそも鍋で作れるものじゃないと分かったし、生の苺と苺ジャムのサンドイッチは母が作ってくれたが、どれも楽しかった。
自分でなにか新しいことが出来るようになる喜びを、俺の教えられる限り、たくさんカイアに与えてやりたい。
まだ早い時間だったが、明日は早めに帰れるように、早い時間に山に登るつもりでいたので、カイアを寝かしつけることにした。
「カイア、お父さんをトントンしてくれ。」
カイアが俺に言われて、ベッドに一緒に横になり、俺の体をトントンしてくれる。
普通は逆だと思うのだが、シングルマザーと暮らしていた時、俺がトントンしてやることで逆に寝てしまったことから、子どもたちに試しにトントンして貰ったら、トントンした側の方が先に寝ることを発見したのだ。
俺をトントンしながら、カイアがだんだん眠そうにウトウトしだし、スッと寝てしまった。俺も今日はこのまま休もう。
明日はカイアと雪遊びをして、イエティの様子を確認して、日が暮れる前に山を降りないとな。カイアの喜ぶ顔を想像しながら、俺もいつの間にか眠りについた。
翌朝、まだ日が昇ってすぐ位の時間だったが、ミーアさんが朝食を持って部屋をたずねてきてくれた。昨日のうちに頼んでおいたのだ。本来の宿の朝食の時間には少し早いそうなのだが、お礼だからと引き受けてくれたので、ありがたくカイアとともにいただく。
アラベラさんとジャスミンさんは、昼から夜の担当なので、まだ寝ているらしい。
朝食を食べ終わり、カイアに再びマジックバッグの中に入って貰うと、俺は朝食のトレイを食堂に返して、部屋の鍵をミーアさんに渡した。山を降りる時間が馬車に間に合えばそのまま今日は泊まらずに帰るが、遅くなるようなら予定通り今日の夜も泊まることを告げて、俺は雪山に向かった。
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少しでも助けになるといいんだが。
──おいしいか?カイア。」
カイアは俺が小さく切ってやったレアステーキを、嬉しそうに食べていた。
レモンの皮は少し小さい子には苦いかなと思っていたが、ハーブソルトとしてほんの少し使っているだけだから、気にならないようだった。
山に登るのは明日の朝だから、今日はもうすることがない。もっとたくさんレモンのハーブソルトを作るのを手伝おうと思ったのだが、お客様にそこまでさせられませんと断られたので、部屋に戻って来たのだ。
俺は絵本を出してカイアに読んでやった。
かわいらしいクマが、ひたすらホットケーキの作り方を教えてくれる内容の絵本で、俺は子どもの頃、この絵本が大好きだった。俺のホットケーキの作り方は、いまだにこの絵本を参考にしている。料理の手順本としても優れた絵本だと思う。
フライパンを一度水濡れふきんで冷ましたり、ひっくり返すタイミングの、プツプツが出来た生地の状態が、本当にリアルに描いてあって、とても分かりやすいのだ。
初めて読んだあと、ホットケーキを作ってみたいと母にねだって作り、1人で上手に作れたことが嬉しかったのを覚えている。
カイアも興味を示したようで、家に帰ったら一緒にホットケーキを作ってみようかなあと思っている。
ホットケーキを1人でひっくり返すのは難しいだろうから手伝うが、ホットケーキならカイアでも上手に作れるだろうからな。
思えば母に買って貰った絵本で好きだったものは、大体何かしらの、俺の知らない食べ物が出てくるものばかりだった。
ゾウがコンクリートミキサー車のような車で作るアイスクリーム。2匹のネズミが巨大な鍋で作るカステラ。
駄々をこねる子どもが保育園の代わりに連れて行かれる園の童話に出て来た、生の刻んだ苺と苺ジャムを混ぜたサンドイッチ。
どれも作って食べてみた。アイスクリームはシャーベットになったし、カステラはそもそも鍋で作れるものじゃないと分かったし、生の苺と苺ジャムのサンドイッチは母が作ってくれたが、どれも楽しかった。
自分でなにか新しいことが出来るようになる喜びを、俺の教えられる限り、たくさんカイアに与えてやりたい。
まだ早い時間だったが、明日は早めに帰れるように、早い時間に山に登るつもりでいたので、カイアを寝かしつけることにした。
「カイア、お父さんをトントンしてくれ。」
カイアが俺に言われて、ベッドに一緒に横になり、俺の体をトントンしてくれる。
普通は逆だと思うのだが、シングルマザーと暮らしていた時、俺がトントンしてやることで逆に寝てしまったことから、子どもたちに試しにトントンして貰ったら、トントンした側の方が先に寝ることを発見したのだ。
俺をトントンしながら、カイアがだんだん眠そうにウトウトしだし、スッと寝てしまった。俺も今日はこのまま休もう。
明日はカイアと雪遊びをして、イエティの様子を確認して、日が暮れる前に山を降りないとな。カイアの喜ぶ顔を想像しながら、俺もいつの間にか眠りについた。
翌朝、まだ日が昇ってすぐ位の時間だったが、ミーアさんが朝食を持って部屋をたずねてきてくれた。昨日のうちに頼んでおいたのだ。本来の宿の朝食の時間には少し早いそうなのだが、お礼だからと引き受けてくれたので、ありがたくカイアとともにいただく。
アラベラさんとジャスミンさんは、昼から夜の担当なので、まだ寝ているらしい。
朝食を食べ終わり、カイアに再びマジックバッグの中に入って貰うと、俺は朝食のトレイを食堂に返して、部屋の鍵をミーアさんに渡した。山を降りる時間が馬車に間に合えばそのまま今日は泊まらずに帰るが、遅くなるようなら予定通り今日の夜も泊まることを告げて、俺は雪山に向かった。
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