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第73話 謎の洞窟②
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「加えているものが、そんなに長持ちしませんので……。
まあ、乾燥剤は入れる予定ですが。」
「──乾燥剤?」
「湿気を防ぐ為のものです。これです。」
と、俺は小さい乾燥剤をエドモンドさんに手渡した。
「これを入れておくと、瓶の中のものが湿気にやられるのを防いでくれるんですよ。」
「水分を防ぐだって?ひょっとして、こんなに小さいのに魔道具なのか?これは。」
エドモンドさんが驚いたように、手のひらの上の乾燥剤を見つめる。
「いえ、これ自体が水分を吸収する性質のあるものなんですよ。」
「こんなもの初めて見るぞ……。
これも売る予定なのか?」
「ええ、既に登録申請を済ませています。
アラベラさんたちには、俺から仕入れる形にしていただく予定なので。」
「こいつを中に入れるとなると、食材だけの価値で値段をつけられんな……。こいつ目当てに買う客も現れそうな代物だ。」
「確かにこんな便利なもの、一度取り出したからって、そのまま捨ててしまう気にはなれませんね。私も取っておいて使い回すと思いますよ。他のものにも使えますし。」
とアラベラさんが言う。
確かに俺も子どもの時に初めて乾燥剤を見た時、もったいなくて捨てれなかったなあ。
「乾燥剤を入れないほうがいいですか?
湿気を吸ってしまうと、長持ちしなくなってしまうのですが……。」
俺は眉を下げた。
「そもそも消費量を考えても、毎日こいつを使って貰わないと、使い切れない。
だが、毎日はさすがに飽きるだろう?
下味というなら、それを使う為の下味の付け方をしらなくちゃならないわけだしな。
知らないと手を出さないだろう。」
確かにそれはそうだ。いっつも余らせてしまうんだよな、ハーブソルト。使い切るために献立を考えることになったりするんだ。
「じゃあ、売れませんかね……。」
俺もアラベラさんもジャスミンさんもガッカリして、お互い顔を見合わせる。
「いや。まずは平民向けの料理店をやっているところにおろしてみよう。
そこで味を知って貰って、店でも販売できるようにしたら、店の売上にもなるし、料理方法の説明も料理店側がやってくれる。
自宅で少し豪華な料理に挑戦してみたい女性は多いだろうからな。」
エドモンドさんは腕組みして考え込むようにしながらそう言った。
「それくらい、このレモンってやつの味は衝撃的だ。肉に合う。合いすぎるくらいだ。
今までなんでこんなものが、この世に存在しなかったのかとすら思うよ。
平民にとって少し高くても、日常に特別感をもたせることで売れるだろう。
貴族も買うかも知れないな。」
アラベラさんとジャスミンさんが、パアアアッと顔を輝かせながらお互いを見つめる。
「料理店用の大瓶と、家庭販売用の小瓶を用意してくれ。大瓶用には、その乾燥剤ってのを入れよう。小瓶には使い切って貰う前提で入れない。そうすれば値段を平民向けにおさえることが出来るだろう。」
「わかりました。すぐに準備します。」
アラベラさんがコックリとうなずく。
「見本にいくつかいただいても?」
「はい、もちろんです。」
「では、俺は先に商談に移らせてもらうよ。
値段はこちらが決めさせて貰うが、売れる値段にするから任せておいてくれ。
契約書が出来たら支店から連絡をさせるから、改めてお会いしよう。」
そう言うと、エドモンドさんは俺たちに挨拶をして宿を出て行った。
さすがやりての商人だなあ。エドモンドさんに任せて正解だったな。
アラベラさんは追加で瓶を買って来ますと行って宿を出て行った。俺とジャスミンさんでアラベラさんの帰りを待ちつつ、レモンのハーブソルトを大量に作った。
俺は夕食を部屋でとった。その日の夜の宿の夕食は、レモンのハーブソルトを使った肉料理だった。しっかり宿でも食堂でも、食べてみて貰って味を広めるつもりらしい。
エドモンドさんが値段を決めるまで、瓶の販売は出来ないが、いずれはこの店でも売り出す予定だと言う。
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まあ、乾燥剤は入れる予定ですが。」
「──乾燥剤?」
「湿気を防ぐ為のものです。これです。」
と、俺は小さい乾燥剤をエドモンドさんに手渡した。
「これを入れておくと、瓶の中のものが湿気にやられるのを防いでくれるんですよ。」
「水分を防ぐだって?ひょっとして、こんなに小さいのに魔道具なのか?これは。」
エドモンドさんが驚いたように、手のひらの上の乾燥剤を見つめる。
「いえ、これ自体が水分を吸収する性質のあるものなんですよ。」
「こんなもの初めて見るぞ……。
これも売る予定なのか?」
「ええ、既に登録申請を済ませています。
アラベラさんたちには、俺から仕入れる形にしていただく予定なので。」
「こいつを中に入れるとなると、食材だけの価値で値段をつけられんな……。こいつ目当てに買う客も現れそうな代物だ。」
「確かにこんな便利なもの、一度取り出したからって、そのまま捨ててしまう気にはなれませんね。私も取っておいて使い回すと思いますよ。他のものにも使えますし。」
とアラベラさんが言う。
確かに俺も子どもの時に初めて乾燥剤を見た時、もったいなくて捨てれなかったなあ。
「乾燥剤を入れないほうがいいですか?
湿気を吸ってしまうと、長持ちしなくなってしまうのですが……。」
俺は眉を下げた。
「そもそも消費量を考えても、毎日こいつを使って貰わないと、使い切れない。
だが、毎日はさすがに飽きるだろう?
下味というなら、それを使う為の下味の付け方をしらなくちゃならないわけだしな。
知らないと手を出さないだろう。」
確かにそれはそうだ。いっつも余らせてしまうんだよな、ハーブソルト。使い切るために献立を考えることになったりするんだ。
「じゃあ、売れませんかね……。」
俺もアラベラさんもジャスミンさんもガッカリして、お互い顔を見合わせる。
「いや。まずは平民向けの料理店をやっているところにおろしてみよう。
そこで味を知って貰って、店でも販売できるようにしたら、店の売上にもなるし、料理方法の説明も料理店側がやってくれる。
自宅で少し豪華な料理に挑戦してみたい女性は多いだろうからな。」
エドモンドさんは腕組みして考え込むようにしながらそう言った。
「それくらい、このレモンってやつの味は衝撃的だ。肉に合う。合いすぎるくらいだ。
今までなんでこんなものが、この世に存在しなかったのかとすら思うよ。
平民にとって少し高くても、日常に特別感をもたせることで売れるだろう。
貴族も買うかも知れないな。」
アラベラさんとジャスミンさんが、パアアアッと顔を輝かせながらお互いを見つめる。
「料理店用の大瓶と、家庭販売用の小瓶を用意してくれ。大瓶用には、その乾燥剤ってのを入れよう。小瓶には使い切って貰う前提で入れない。そうすれば値段を平民向けにおさえることが出来るだろう。」
「わかりました。すぐに準備します。」
アラベラさんがコックリとうなずく。
「見本にいくつかいただいても?」
「はい、もちろんです。」
「では、俺は先に商談に移らせてもらうよ。
値段はこちらが決めさせて貰うが、売れる値段にするから任せておいてくれ。
契約書が出来たら支店から連絡をさせるから、改めてお会いしよう。」
そう言うと、エドモンドさんは俺たちに挨拶をして宿を出て行った。
さすがやりての商人だなあ。エドモンドさんに任せて正解だったな。
アラベラさんは追加で瓶を買って来ますと行って宿を出て行った。俺とジャスミンさんでアラベラさんの帰りを待ちつつ、レモンのハーブソルトを大量に作った。
俺は夕食を部屋でとった。その日の夜の宿の夕食は、レモンのハーブソルトを使った肉料理だった。しっかり宿でも食堂でも、食べてみて貰って味を広めるつもりらしい。
エドモンドさんが値段を決めるまで、瓶の販売は出来ないが、いずれはこの店でも売り出す予定だと言う。
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