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第71話 レモンのハーブソルトとレモネード④

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 レモンの皮は多少白い部分が入っても問題はない。湿気に弱いので、乾燥剤を一緒に入れておくとよい。
「保存がきくので、長期輸送にも向いてますし、これを売ってみてはいかがですか?
 なんでしたら、俺がお世話になっている商会に口をききますし。」

「これは……なんでしょうか?」
「レモンです。ご存知ないですか?」
「はい。」
 ないのか、レモン。
「もし売るつもりでしたら、俺がおろさせていただきますよ。」

「皮を使うとなると、この……水分のある果実の部分はどうしたら?」
「料理に使うといいですよ、肉にも魚にも合いますし。飲んでも美味しいですしね。
 試しに飲んでみますか?」
 俺はレモン汁を大さじ2、はちみつを大さじ1入れ、水を150ミリリットル加えてよく混ぜたものをジャスミンさんに手渡した。

「レモネードという飲み物です。
 温かいお湯に溶かして飲んでも、違った味わいでまた美味しいですよ。」
「……美味しい!」
「わ、私は温かいほうをいただいてみようかしら。」
 アラベラさんが目を輝かす。

「どうぞ。」
 俺はお湯を沸かして貰い、陶器の器に同じようにレモン汁と蜂蜜を入れてよく混ぜたものを手渡した。
「ああ……。美味しいねえ……。」
 ホッとしたような表情を浮かべるアラベラさん。

「これ、店で出してみてもいいんじゃないかしら。きっと喜ばれるわ。女性のお客様も食堂に増えるかも知れないわね。」
「本当にこのレシピを……、使わせていただいてもよろしいのでしょうか?」
 アラベラさんが不安そうに聞いてくる。

「はい、構いませんよ。
 何なら今から、一緒に商人ギルドに登録しに行きましょうか?」
「ジャスミン……。
 ちょっと宿を任せてもいいかい?」
「ミーアもいるし、大丈夫よ、安心して任せておいて!」

「食堂は任せておいてください。」
 猫の獣人、ミーアさんも、力強くこっくりとうなずいた。ニャとか言わないんだな。
「じゃあ、行ってくるよ!」
 俺はアラベラさんと共に、キシンの街の商人ギルドへと向かうことになった。

 商人ギルドで、乾燥剤と、レモンと、レモンのハーブソルトの現物を渡し、レモネードとホットレモネードは、その場で作ってみせて飲んでもらい、商品登録を行う。
 その際に、販売利用許可・許可者に、アラベラさんとジャスミンさんを登録することで、2人は自由に作って売ることが出来るのだ。

 職人ギルドには俺だけが登録される。あくまでも開発者は俺になるからだ。
 ついでに、乾燥剤と、レモンと、レモンハーブソルトを取り扱いできないかという打診の手紙を、ルピラス商会のエドモンド副長宛に送って貰うことにした。

 ルピラス商会の場合、新しい商品が登録されると、全部のリストを定期的に送ることになっているので、いずれは連絡が行くとのことだったが、売れるかどうかの判断は早い方がいいからな。

「登録には時間がかかりますから、今のうちにたくさん作っておきましょう。
 俺も手伝いますので。」
 俺は預り証を受け取って、帰る道すがらアラベラさんに言った。

「なぜ……、ここまでしてくださるのでしょうか?娘とは馬車で初めて会ったとお伺いしました。それなのに……。」
 アラベラさんはまだ困惑しているようだった。まあ、無理もないか。

「たまたま出くわしただけですが、なにか力になれることがあれば手助けしたい。
 ただ、それだけです。
 さっきの馬車のお客さんたちも、きっと同じ理由で手助けしたんだと思いますよ。」

 アラベラさんは、ポツリと。
「私も昔、娘を連れて実家に出戻って来たんです。結婚しても幸せになれるとは限らないのに、娘を同じ目に合わせてしまいました。
 娘の夫は、私が見つけてきたんです。」
 と泣きそうになっていた。

「それなら、ジャスミンさんが今欲しい助けが、最も分かるのはお母さんだと思います。
 2人で一緒に頑張ったらいいと思います。
 俺も出来ることは協力しますので。」
 アラベラさんが落ち着くまで、一緒に街を散策してから、2人で宿に戻った。

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