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第70話 生ハムとキュウリとピーマンと玉ねぎのレモン醤油マリネと、豚玉ニラモヤシ②

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「──イエティ?雪山の魔物じゃろう?
 この時期に活動してるなんてのは、聞いたことがないんじゃが……。」
 ヴァッシュさんが首をかしげる。
「パーティクル公爵領に、万年雪が一部降っている山があるそうで、そこに住んでいると言われました。変種が原種を襲っているらしく、様子がおかしいと。」

「魔物が魔物を襲ってるじゃと!?
 そいつは確かにおかしいわい……。
 まるで子どもの頃に、ワシの親父から聞いた、瘴気が蔓延した時かのようじゃ。」
 ヴァッシュさんが首をかしげる。
「それは、以前この国に、勇者様と聖女様が現れた頃のことですか?」

「ああ、瘴気に取り憑かれると、魔物は凶暴化し、普通の動物まで、放っておくと魔物になっちまう。人間もおかしくなるらしくてのう。そして仲間を襲い出すんじゃ。
 瘴気に取り憑かれた生き物は、みな一律に黒い靄がかかったような姿をしていたそうじゃ。そして本来よりも強くなる。」

 前回の勇者様と聖女様が現れた時は、コボルトたちがそうなって、聖女様に瘴気を払ってもらったんだっけか。
「もしも万が一同じ状況になっているんだとしたら、ことはお前さん一人の手には、負えんかもしれんぞ。」
 ヴァッシュさんが心配そうにそう言った。

「そうですね、もしも瘴気が原因であれば、聖女様の降臨を待つしかないのかも知れません。今回は様子見で、倒せるなら倒して欲しいとの依頼なので、無理はせず、瘴気が原因であると報告して、帰るだけにしますので、心配しないで下さい。」
「そうか……。ならいいんじゃが。」

 盾の代金の精算をお願いすると、ヴァッシュさんが若い職人を呼びに一度裏に引っ込んで、再び若い職人が受付に立った。
 そしてそろばんになにかついたような計算機を取り出すと、パチパチと計算を始め、内金を引いた盾の残金を、中白金貨1枚と、小白金貨7枚です、と告げる。

 家庭用自動食器乾燥機能付き洗浄機の開発代金を内金から引いて貰ったとはいえ、既に内金として中白金貨を10枚も支払っているのにこの金額だ。
 ……さすがオリハルコンの使用量が、オリハルコン銃とは比べ物にならないだけのことはある。素材だけでも相当するのだろう。

 まあ、魔法耐性も付与して貰ったし、普通の盾にはない、ライフルを入れられる覗き穴と、盾をそのまま立てて使うことの出来る、裾足なんてのも付けてもらったし、特注料金なんだろうな。
 こんなの注文するのは、俺ぐらいだろうから、既製品の型は使えないだろうしなあ。

 トレント討伐とルピラス商会で稼いでおいて良かった。普通のクエストだけじゃ、絶対に今年中に手に入らなかったぞ……。
 それどころか、盾の購入代金に所持金全部を持っていかれて、コボルトの店を開くためのお金がなくなってしまうところだ。

「そういやお前さん、あれからオリハルコン弾をまったく買いに来んが、あまりクエストを受けてないとは言っても、そろそろ必要なんじゃないのか?」
 ああ、一度作って貰ってからは、毎回能力で出しちまってたからなあ。
 工房に立ち寄る事があっても、弾を買うという発想がなかったのだ。

 ヴァッシュさんは俺が弾を自作できることも、日頃は弾を再利用していることも知っているが、普通素材となるオリハルコンを手に入れるのは難しいし、オリハルコン加工用の魔道具を購入してないからな。
 あんまり買わないのもおかしく思われるよな、今回は買って帰ろう。

「ああ、そうですね、オリハルコン弾を2ケースお願い出来ますか?」
「そう言うと思って作っておいた。ほれ、盾を買って貰ったことだし、金はいい。」
 そう言って、ヴァッシュさんはオリハルコン弾を8ケース分渡してくれた。
「──こんなにたくさん?」

「火、水、風、雷、土、聖、闇属性をそれぞれ付与した弾だ。それとコイツは、防御力低下の特殊弾じゃ。
 前回は火属性のみ買って行ったが、変種のSランクともなると、属性不明なことが大半じゃからな。万が一戦うとしたら、全属性が必要になるじゃろ。」

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