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第69話 キャンベル商人ギルド長②

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 そうすれば、文句を言うのはコショウを独り占めしている国だけってことか。
 まあ、それが独自に改良開発されたブランド野菜とかなら、勝手に利用料も払わずに他の国が育てて販売するのを取り締まれないのはどうかと思うが、別の国で開発したものを売るのは、その国の自由だもんな。

「このコショウは明らかに市場に出回っているものとは異なります。
 それよりも非常に良質です。
 我々の国で独自に開発したと言って、それに異論を唱える国はいないでしょう。
 コショウの販売は、国をあげての事業にする必要があると、我々は考えます。
 一度王室に打診を致しますので、回答をお待ちいただけませんでしょうか?」

「は、はあ……。」
 どうしよう、やめたくなってきた。別にサニーさんが買いやすくする為だけだしな。
「あの……、やっぱり販売はとりやめてもよろしいでしょうか?そこまで大きな話になるのでしたら、本意ではないので……。」
 だがそれを認めない空気を、キャンベル商人ギルド長は持っていた。

「──出来ません。私がもう、ジョージさんがコショウを大量にお持ちであることを知ってしまいましたので。
 個人で大量にお持ちであるのに、商人ギルドを通さないとなりますと、闇市で大量に売りさばくつもりと疑われかねません。
 そうなれば、どちらにしろ戦争です。」

 能力で出さなきゃこの世に存在しないんです、とは言えなかった。
 持ち込む前に、この世界の政治情勢を調べておくべきだったな……。ここまで大事になってしまうとは思わなかった。
 ちょっと変わったものを、やたらと販売する人、くらいに思われて終わりだと思っていたが、この世界に存在しないものとするものじゃ、こうまで反応が違うとは。

 すぐに登録して売れないとなると、サニーさんに追加でコショウを渡さないとだな。
 国をあげての事業として、王家に打診ともなると、果たしてどのくらいで販売にこぎつけられるものなのかが分からないしな。
「こちらの固形コンソメスープの素というのは、すぐに登録にうつらせていただきます。2日後にお越しください。こちら預り証になります。お持ち下さい。」

 俺はキャンベル商人ギルド長から、アサリの水煮缶、無調整豆乳、固形コンソメスープの素の3つの預り証を手渡された。
「それと、以前ご登録いただきました、ネジ山のあるクギと、プラスドライバーの、特許使用料金のご精算がまだのようでしたので、そちらも精算させて下さい。」

 ああ……。そういえば以前登録したなあ。ヴァッシュさんに言われて。それで初めて商人ギルドに商品を登録したんだっけ。
 普段ほとんどの商品をルピラス商会を通じて販売しているから忘れていたが、ネジ山のあるクギはルピラス商会が俺から仕入れてないから、商人ギルドで作成する権利のみを販売して貰っているのだ。

「まず、ネジ山のあるクギ1本の特許使用料が銀貨1枚になりまして……。」
「銀貨1枚?」
 クギ1本が千円てことか?ネジ山をつけたってだけで?しかも現物じゃなく、その形のクギを作る特許使用料だぞ?
「相場がわからないので、こちらで価格をつけてよいとのことでしたが……。
 安すぎましたか?」

 高すぎますよ!
 普通ネジ山のあるクギなんて、せいぜい150個入で600円くらいのものだ。
 つまり1本4円。
 鉄の皿頭なら1000個で2000円だ。
 ステンレスのものでも1本20円程度。
 確かに1本一万円以上する、特殊なお高いクギやネジも、存在するにはするんだが。

 まあ、あまり安くしすぎても転売が起きると、ルピラス商会副長のエドモンドさんに言われたしな。そのうち流通量が増えて、作る人がたくさん出てきたら、自然と値段も下がるのだろう。
「いえ、問題ありません。」
「こちらが大量に利用依頼が出されておりまして、その数が15万本ですね。」
 ?????

「ええと、もう一度よろしいでしょうか?」
「15万本ですね。」
 ……クギだけで、1億5千万ってことか?
「そんなに流行っているんですか?
 そのクギは。」
「いえ、現時点では、一部の工房が、大量に利用依頼を出しているのみですね。」
 ヴァッシュさんの工房だ。

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