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第67話 アボカドディップのブルスケッタと、いぶりがっこのクリームチーズチーズ乗せオリーブオイルがけ③
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「それは……、今日なんとなく、そう思いました。わたくしは今まで一度も、お母様とイヴリンが一緒にいるところに、立ち会ったことがなかったのです。
イヴリンは人の悪口を言わない女性ですから、彼女から、お母様は素晴らしい人だと、どれだけいわれても、わたくしは信じることが出来ませんでした。」
やはり、日頃奥さんがどんな生活をしているのかを知らなかったのか。
「ですが、2人の信頼し合っている姿を目の当たりにして、わたくしは愕然としました。
お母様はわたくしの前と違い、イヴリンにとても優しかった。
イヴリンは本当にお母様が好きで、お母様もそうなのだと感じました。」
「そうですね、俺もそう思います。」
「……侯爵家に戻るつもりはありません。
家を継ぐつもりも。
ですが、イヴリンの夫として、お母様に納得していただけるようになるには、わたくしはどうすればよいのでしょう。
わたくしはお母様が恐ろしい。だから直接聞くことが出来ません。」
「なぜそんなに、苦手なのですか?」
「……お母様はとても厳しい方です。わたくしは叱られるのがとても苦手です。
わたくしなりに頑張っていることを、すべて否定された気持ちになるのです。」
まあ、男はプライドの塊だからな。否定されるのも、好きじゃないし、それだけで話を聞かなくなる奴も多いが。
「侯爵家の跡取りとして考えていたのであれば、他の家庭よりも厳しくなるのは、仕方がないのでは?
それがあったからこそ、今サニーさんが仕事をするのにおいて、他の貴族や王族を相手にする際に、問題のない対応の仕方が分かるのだと思いますし……。」
「それはもちろんそうだと思います。
平民のようにはいかないでしょう。
ですがそれでも……。苦手なのです。
お母様に愛されたという実感が、わかないからかも知れませんね。
今日愕然としたのは、イヴリンが、わたくしがお母様から受けたことのない愛情を、独り占めしているように感じた、というのもあるのです。」
それはまた、難しい話だなあ。
「お母様は、イヴリンにも、生まれた子どもにも、きっと同じように愛情をそそぐのでしょう。ならばなぜわたくしは……、という思いが消えないのです。
一家の長としてお恥ずかしい話です。
こんな感情を持ってしまうなんて……。」
「──失礼ですが、サニーさんは今おいくつになられたのですか?」
「今年で21歳になります。」
なんと。まだ大学生くらいの年齢じゃないか。見た目じゃまったく分からなかったな。
現代ならまだまだ子どもの年齢だ。
母親にそういう複雑な気持ちを感じても、無理もないか。
「そうですね、確かに、子どもの生まれる大人の男性としては、恥ずかしい感情かも知れません。自分の中で折り合いをつけるしかないことでもあります。
ですが、俺には、サニーさん側にも、ニュートンジョン侯爵夫人側にも、誤解とすれ違いが生まれているようにも感じます。
一度、お母様とじっくりお話してみてはいかがでしょうか?」
「母と……、話を……ですか。」
「旅行なんてどうでしょうね?
親子水入らずで。環境が変われば、話もしやすいかも知れませんよ。
俺は母や祖母を、温泉旅行に連れて行ったことがあります。裸の付き合いもいいものですよ。」
「血の繋がった母親や祖母とはいえ、女性と風呂に入るのですか!?」
サニーさんが突然大声を上げる。
ああ、こちらにはそういう習慣がないのかな?
「もちろん、裸の付き合いと言っても、専用の服は着た状態で、ですけどね。
風呂に入りながら、リラックスした状態だと、話もしやすいものですよ。」
「そんな場所がもしあるのであれば、考えてみたいと思います……。」
「そういえば、パーティクル公爵家には、温泉のわく別荘があるということでしたよね、先日パーティクル公爵よりそちらにご招待いただきましたが、お伺いする際に、お母様をお呼びするのは難しいでしょうか。」
「家族を招くのは珍しいことではありませんので、パーティクル公爵がお母様を呼んでくだされば、お伺い出来るかと思いますが、こちらからお願い出来るようなことではありませんので……。」
「ふむ……。ちょっと考えてみます。」
俺は思案をめぐらした。
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イヴリンは人の悪口を言わない女性ですから、彼女から、お母様は素晴らしい人だと、どれだけいわれても、わたくしは信じることが出来ませんでした。」
やはり、日頃奥さんがどんな生活をしているのかを知らなかったのか。
「ですが、2人の信頼し合っている姿を目の当たりにして、わたくしは愕然としました。
お母様はわたくしの前と違い、イヴリンにとても優しかった。
イヴリンは本当にお母様が好きで、お母様もそうなのだと感じました。」
「そうですね、俺もそう思います。」
「……侯爵家に戻るつもりはありません。
家を継ぐつもりも。
ですが、イヴリンの夫として、お母様に納得していただけるようになるには、わたくしはどうすればよいのでしょう。
わたくしはお母様が恐ろしい。だから直接聞くことが出来ません。」
「なぜそんなに、苦手なのですか?」
「……お母様はとても厳しい方です。わたくしは叱られるのがとても苦手です。
わたくしなりに頑張っていることを、すべて否定された気持ちになるのです。」
まあ、男はプライドの塊だからな。否定されるのも、好きじゃないし、それだけで話を聞かなくなる奴も多いが。
「侯爵家の跡取りとして考えていたのであれば、他の家庭よりも厳しくなるのは、仕方がないのでは?
それがあったからこそ、今サニーさんが仕事をするのにおいて、他の貴族や王族を相手にする際に、問題のない対応の仕方が分かるのだと思いますし……。」
「それはもちろんそうだと思います。
平民のようにはいかないでしょう。
ですがそれでも……。苦手なのです。
お母様に愛されたという実感が、わかないからかも知れませんね。
今日愕然としたのは、イヴリンが、わたくしがお母様から受けたことのない愛情を、独り占めしているように感じた、というのもあるのです。」
それはまた、難しい話だなあ。
「お母様は、イヴリンにも、生まれた子どもにも、きっと同じように愛情をそそぐのでしょう。ならばなぜわたくしは……、という思いが消えないのです。
一家の長としてお恥ずかしい話です。
こんな感情を持ってしまうなんて……。」
「──失礼ですが、サニーさんは今おいくつになられたのですか?」
「今年で21歳になります。」
なんと。まだ大学生くらいの年齢じゃないか。見た目じゃまったく分からなかったな。
現代ならまだまだ子どもの年齢だ。
母親にそういう複雑な気持ちを感じても、無理もないか。
「そうですね、確かに、子どもの生まれる大人の男性としては、恥ずかしい感情かも知れません。自分の中で折り合いをつけるしかないことでもあります。
ですが、俺には、サニーさん側にも、ニュートンジョン侯爵夫人側にも、誤解とすれ違いが生まれているようにも感じます。
一度、お母様とじっくりお話してみてはいかがでしょうか?」
「母と……、話を……ですか。」
「旅行なんてどうでしょうね?
親子水入らずで。環境が変われば、話もしやすいかも知れませんよ。
俺は母や祖母を、温泉旅行に連れて行ったことがあります。裸の付き合いもいいものですよ。」
「血の繋がった母親や祖母とはいえ、女性と風呂に入るのですか!?」
サニーさんが突然大声を上げる。
ああ、こちらにはそういう習慣がないのかな?
「もちろん、裸の付き合いと言っても、専用の服は着た状態で、ですけどね。
風呂に入りながら、リラックスした状態だと、話もしやすいものですよ。」
「そんな場所がもしあるのであれば、考えてみたいと思います……。」
「そういえば、パーティクル公爵家には、温泉のわく別荘があるということでしたよね、先日パーティクル公爵よりそちらにご招待いただきましたが、お伺いする際に、お母様をお呼びするのは難しいでしょうか。」
「家族を招くのは珍しいことではありませんので、パーティクル公爵がお母様を呼んでくだされば、お伺い出来るかと思いますが、こちらからお願い出来るようなことではありませんので……。」
「ふむ……。ちょっと考えてみます。」
俺は思案をめぐらした。
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