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第67話 アボカドディップのブルスケッタと、いぶりがっこのクリームチーズチーズ乗せオリーブオイルがけ②

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 ハイボールを作るなら、年数のあるウイスキーより、ノンエイジのほうが合うんだよなあ。たまに熟成されたウイスキーでも、ハイボールを楽しむこともあるけど、熟成されたウイスキーは、ストレートで飲んだほうが美味いが、寝かせていないウイスキーは、気軽に飲めるハイボールにしたほうが美味いと思う。量が飲めないから、ストレートじゃ、あんまり飲まないけどな。

 サニーさんの家のグラスを借りてハイボールを作り、サニーさんに差し出す。
 一口飲んだサニーさんは、
「……!
 美味しいです。わたくしワインより、こちらの方が飲みやすいと感じます。」
 と、グラスの中を見つめながら言った。

 アボカドディップのブルスケッタを一口で食べると、すぐにグビリとハイボールを流し込んだ。
「とてもお酒にあいますね……!
 こちらも食べてみます。」
 いぶりがっこのクリームチーズチーズ乗せオリーブオイルがけを食べて目を丸くする。

「……これは……はじめて食べる食感です。
 植物……?なんでしょうか。
 どちらも発酵食品のような味がしますね。
 噛んだ時のポリポリとした食感も、とても気持ちがいいものですし、ねっとりとしたチーズが味を引き立てていて……。
 ──これは癖になりそうです。」
 頬を紅潮させてそう言うサニーさんに、俺はニッコリと微笑んだ。

 俺もいぶりがっこは大好きなんだよな。気がつくと一本食っちまうくらいには。
 国をあげて守るべき、すばらしい日本の食文化だと思う。
 俺は好きな食材を5つ上げるとすると、その1つに必ずいぶりがっこが入ってくる。
 それくらい、いぶりがっこが大好きだ。

 ちなみにホカロンやホッカイロと同じで、いぶりがっこは登録商標で、本来はいぶり漬けというらしいが。
「これは野菜を燻煙乾燥した漬物というものになります。主に大根という野菜を使うことが多く、こちらもそうですね。俺の故郷の食材なんです。俺も大好きなんですよ。」

 サニーさんは俺の作ったおつまみを見つめながら、
「……わたくしも、このような料理を作れるようになれば、イヴリンは喜んでくれるでしょうか……。
 わたくしはイヴリンの夫として、まだまだ足りないのかも知れません。」
 と声を落とした。

「料理もいいとは思いますが……。
 それよりも、体を使った家事が大変なんだと思いますよ。
 特に今の時期や、これからお子さんが生まれたら、もっと大変だと思います。
 2~3時間おきの授乳期間は、特にほとんど寝られませんし。寝られないというのは本当に辛いものですから。」

 サニーさんはうつむいて、何やら考え込んでいるようだった。
「イヴリンは、文句1つ言わない女性です。それは分かっていました。
 ですが、わたくしは、言われないと分からない、野暮な男です。
 侯爵家にいた時は従者がおりましたので、家事など1つもしたことがありません。
 だから余計に何をしたらいいのかが分からない。……お母様には、それが分かっていたのでしょうね。」

「おそらくは……。
 今までも色々と、お母様からアドバイスがあったかと思いますが、それをきちんと心にとめていらっしゃいましたか?
 あんまり他人がよそのご家庭に口出すことではないと思いましたが、お母様のお気持ちが、サニーさんに届いていないような気が、俺にはしました。」

「そうですね……。
 そうだと思います。
 ──わたくしの家は、代々、強い水魔法使いを排出する家系なのですが、その為、男も女も関係なく、水魔法の使える子どもが跡取りとなるのです。
 お母様はこの国で最も強い水魔法の使い手で、わたくしも生まれた時から水魔法が使えるのです。」

 サニーさんは魔法使いだったのか。
「お父様は侯爵ですが、入婿なのです。
 ですが、わたくしは今の仕事をやりたいと幼き頃より思っておりました。
 ですから、イヴリンにお母様が近付いているのを知った時、わたくしを家に連れ戻す為に、彼女を通じてわたくしを丸め込むつもりなのだと感じました。」

 ニュートンジョン侯爵夫人本人ではないから、もちろんそういう気持ちもあるのかも知れないし、そこは分からないが……。
「それだけではないと、俺は思いますよ。
 ニュートンジョン侯爵夫人は、本当に奥様であるイヴリンさんを、心配なさっているように見受けられます。」

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