199 / 470
第66話 母の真意③
しおりを挟む
「あなたがおやりなさい、サニー。
仕事を他に持とうが持つまいが、家のことも子育ても、夫婦2人の仕事です。それが嫌なら従者を雇えるくらいに稼ぎなさい。」
ニュートンジョン侯爵夫人がピシャリとそう言って、サニーさんが慌てて2階へと駆け上がって行った。
「まったく。不釣り合いな嫁を貰ったせいだわ。夫の教育は最初が肝心なのよ?
優しくするばかりがよき妻、よき母ではないのです。甘やかしては駄目よ。
さあ、イヴリンは席に戻りなさい。
今日もわたくしが、あなたに我が家の味を教えてあげなくてはなりませんからね。
──エミリー。」
「はい、奥様。準備は出来ております。」
そう言うと、エミリーさんがマジックバッグから出した食材を使って、なんとエミリーさんだけでなく、ニュートンジョン侯爵夫人までもがキッチンに立ち、手際よく料理を始めたのだった。不釣り合いって、サニーさんがイヴリンさんに、ってことなのか。
貴族って、自分で料理をするものなのか?俺の疑問に気が付いたのか、席に戻って来たイヴリンさんが、ニッコリと微笑みながら、
「結婚してからというもの、お母様はずっとああなんです。私が妊娠してからは特に。突然いらっしゃった時は私も、ご子息を奪った女に一言、なにか言いたいのかと思って身構えたんですが、まったく違っていて……。」
なんでも、定期的にやってきては、従者と共に家事全部をやってくれたり、料理や裁縫や刺繍を教えてくれたり、洋服をくれたり、ケーキを持ってきてくれたり、話し相手になってくれたりしているのだそうな。
「私……、孤児だったので……。今まで母親と呼べる人がいなかったんです。
だから、本当に嬉しくて。」
と涙ぐんだ。本当に息子の嫁を可愛がってるんだな、ニュートンジョン侯爵夫人。
「私、初めてのことなので、妊娠中も出産後のことも、不安ばかりだったんですけど。
お母様は、サニーの離乳食もご自身で作られたそうで、任せておきなさいと言って下さって。本当に頼りにしてるんです。
昨日も突然やっていらして、私が1人なのを知ると、凄く心配して、こちらに泊まってくださったんですよ。侯爵夫人をお泊めできるような家じゃないのに……。」
なんとまあ。これは完全にサニーさんが悪いな。自分の母親が、奥さんにどんな風に接してくれているかも知らず、金輪際近付くなと言ったのか?ありえないぞ。
おまけに妊娠中の奥さんを1人家に残して連絡もせずに放置?それは怒るだろう。
知ってたら俺だって、連絡しなくていいのか、サニーさんに尋ねたことだろう。
日頃奥さんがどうやって生活しているのかを、気にかけていないんだろうか……。
仕事にかまけて家庭をかえりみない人だったとは。奥さんの様子を見る限りでは、ちゃんと奥さんを愛してはいるみだいだが。
気持ちばかりで、実際の行動が伴っていないことを、ニュートンジョン侯爵夫人は気にしているのだろう。
話している間にニュートンジョン侯爵夫人の料理が終わり、食卓にたくさんの料理が並んだ。サニーさんも2階から降りてきた。
出てきた料理も、妊婦さんに気を使ったものばかりだった。塩分控えめ、大きくなった子宮に腸が圧迫されて、便秘に悩まされる時期だから、食物繊維もたっぷり。
更には貝類とレバーと牛肉とほうれん草みたいな野菜とキノコ類がふんだんに使われている。鉄分も一品でも多く取りたいよな。
──こんな愛情のこもった料理を作ってくれる母親が、優しくないわけがないのだ。
確かに言葉は厳しめで、おっかない表情ではあるけれど、ただ、それだけだ。
サニーさんは、自分の母親に怯えるばかりで、きちんと話したことがないのだろうか?
一度きちんと話し合う必要があるな、この親子は。と俺は思った。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
仕事を他に持とうが持つまいが、家のことも子育ても、夫婦2人の仕事です。それが嫌なら従者を雇えるくらいに稼ぎなさい。」
ニュートンジョン侯爵夫人がピシャリとそう言って、サニーさんが慌てて2階へと駆け上がって行った。
「まったく。不釣り合いな嫁を貰ったせいだわ。夫の教育は最初が肝心なのよ?
優しくするばかりがよき妻、よき母ではないのです。甘やかしては駄目よ。
さあ、イヴリンは席に戻りなさい。
今日もわたくしが、あなたに我が家の味を教えてあげなくてはなりませんからね。
──エミリー。」
「はい、奥様。準備は出来ております。」
そう言うと、エミリーさんがマジックバッグから出した食材を使って、なんとエミリーさんだけでなく、ニュートンジョン侯爵夫人までもがキッチンに立ち、手際よく料理を始めたのだった。不釣り合いって、サニーさんがイヴリンさんに、ってことなのか。
貴族って、自分で料理をするものなのか?俺の疑問に気が付いたのか、席に戻って来たイヴリンさんが、ニッコリと微笑みながら、
「結婚してからというもの、お母様はずっとああなんです。私が妊娠してからは特に。突然いらっしゃった時は私も、ご子息を奪った女に一言、なにか言いたいのかと思って身構えたんですが、まったく違っていて……。」
なんでも、定期的にやってきては、従者と共に家事全部をやってくれたり、料理や裁縫や刺繍を教えてくれたり、洋服をくれたり、ケーキを持ってきてくれたり、話し相手になってくれたりしているのだそうな。
「私……、孤児だったので……。今まで母親と呼べる人がいなかったんです。
だから、本当に嬉しくて。」
と涙ぐんだ。本当に息子の嫁を可愛がってるんだな、ニュートンジョン侯爵夫人。
「私、初めてのことなので、妊娠中も出産後のことも、不安ばかりだったんですけど。
お母様は、サニーの離乳食もご自身で作られたそうで、任せておきなさいと言って下さって。本当に頼りにしてるんです。
昨日も突然やっていらして、私が1人なのを知ると、凄く心配して、こちらに泊まってくださったんですよ。侯爵夫人をお泊めできるような家じゃないのに……。」
なんとまあ。これは完全にサニーさんが悪いな。自分の母親が、奥さんにどんな風に接してくれているかも知らず、金輪際近付くなと言ったのか?ありえないぞ。
おまけに妊娠中の奥さんを1人家に残して連絡もせずに放置?それは怒るだろう。
知ってたら俺だって、連絡しなくていいのか、サニーさんに尋ねたことだろう。
日頃奥さんがどうやって生活しているのかを、気にかけていないんだろうか……。
仕事にかまけて家庭をかえりみない人だったとは。奥さんの様子を見る限りでは、ちゃんと奥さんを愛してはいるみだいだが。
気持ちばかりで、実際の行動が伴っていないことを、ニュートンジョン侯爵夫人は気にしているのだろう。
話している間にニュートンジョン侯爵夫人の料理が終わり、食卓にたくさんの料理が並んだ。サニーさんも2階から降りてきた。
出てきた料理も、妊婦さんに気を使ったものばかりだった。塩分控えめ、大きくなった子宮に腸が圧迫されて、便秘に悩まされる時期だから、食物繊維もたっぷり。
更には貝類とレバーと牛肉とほうれん草みたいな野菜とキノコ類がふんだんに使われている。鉄分も一品でも多く取りたいよな。
──こんな愛情のこもった料理を作ってくれる母親が、優しくないわけがないのだ。
確かに言葉は厳しめで、おっかない表情ではあるけれど、ただ、それだけだ。
サニーさんは、自分の母親に怯えるばかりで、きちんと話したことがないのだろうか?
一度きちんと話し合う必要があるな、この親子は。と俺は思った。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
341
お気に入りに追加
1,851
あなたにおすすめの小説


誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる